見出し画像

CIID Week 25: Tangible User Interface - Week1 Reflection

こんにちは。今週からは、CIIDで一番人気とされているTUI(Tangible User Interface)のコースを実施しています。3週間のコースとなっており、多くの課題をグループでこなしながら進めていくタイプのコースになります。3週間のコースを一つの記事でまとめると、とてつもなく長くなりそうなので、1週ずつに分けて書いていきたいと思います。

Wireless Technology to be Focused

TUIの第一週で主に学んだ電気部品は、Simple RadioとWifiモジュールです。これらのモジュールを用いることで、近距離のオブジェクトや同じネットワーク上にあるオブジェクトを繋ぐことができます。そのネットワークを通して相互間のインタラクションを可能にしているわけです。

Simple Radio

スクリーンショット 2020-09-12 10.19.18

数メートル間隔にあるオブジェクト同士を繋ぐことで、メッセージの送受信を可能にします。上の写真のように、Transimtter(左)とReciever(右)の2つの部品に分かれており、一方向のコミュニケーションしかできません。こちらは後述する一つ目のプロジェクトで使われている部品です。

Wifi using Cloud Server

基本的な機能は、Simple Radioと同じなのですが、Pubnubと呼ばれるクラウドサーバーを用いているので、同じネットワークにあるオブジェクト同士であれば、離れていてもインタラクションを起こすことができます。また一方向のコミュニケーションだけではなく、複数のチャンネルを用いることで、双方向のコミュニケーションを実現することも可能です。こちらは後述する二つ目のプロジェクトで使われている部品です。

このモジュールには、多くのプロジェクト例やフレームワークがネット上に挙げられているため参照できることが多く、作業が進めやすいです。

■ Project Reference

■ Framework: Cloud Server

Design For Meaningfulness

TUIの第1週は、単純に上の電気部品を用いて何かを組み立てるだけではなく、「意味のあるデザイン」を作り込むことが求められていました。そこで紹介されたのが、”Design For Meaningfulness”という考え方です。

テクノロジーの進展に伴い、多くのサービスやプロダクトがデザインされることによって、人間の生活は便利になってきました。あらゆるものがセンサーで検知されるようになり、スマートオブジェクトやスクリーンベースのインタラクションが増加の一途を辿っていることは確かです。今回のコースで最初に講師陣が疑問を呈したのは、そのテクノロジーの使われ方で、テクノロジーを利用して本当に(人間にとって)意味のあるものがデザインされているのか、という点です。

スクリーンショット 2020-09-09 7.52.12

悪い例として、”Smart Water Bottle”を挙げます。このプロダクトの機能はシンプルで、ユーザーがどの程度水を口にしたかに応じて、ユーザーに水分補給を促すようになっています。熱中症の予防や健康的な生活を目指す分には、便利なプロダクトだと考えられますが、一方でその目的を果たすには、下のようにいかなるテクノロジーも使っていないプロダクトも存在します。

スクリーンショット 2020-09-09 7.55.24

要するに単純にテクノロジーを適用して、スマート化・スクリーン化しただけでは、あまり意味のないプロダクトがデザインされることになり、そうした傾向が今世の中に表れているということに疑問を呈していました。

Framing Meaningfulness

「意味のあるデザイン」の定義は無数にあると思うのですが、今回のコースでは、以下の3つの分類が紹介されました。

■ People to People
人間と人間の関係を強化したり、新たな関係性を紡ぐことができるプロダクトです。単純に新たな出会いの機会を作るだけではなく、本来体験できない他人の感覚やアイデンティティを理解することができるようなデザインを指しているようです。

上のプロダクトはFiboと呼ばれるスマートブレスレットで、父親やまだ妊娠したことのない女性が装着することで、リアルタイムで赤ちゃんがお腹を蹴っていることの感覚を体感できる機能を持っています。本来体感することのできないお腹の中にいる赤ちゃんの動きを感じることができる、という点で意味のある関係性を作り出しています。

■ People to Self
本来関わることのなかった(興味のなかった)物語や職業などと、ユーザーを繋ぐことにより、ユーザーが新たな趣味を見つけることを促したり、自己探求を可能にするデザインです。

上のプロダクトは「エレクトロニクス金継ぎ」と言われるもので、「金継ぎ」という日本の伝統的な技巧を、素人でも簡単に楽しめるようにするプロダクトです。金継ぎされている部分を人間が触ることで、様々な音を楽しむことができます。「だから何だ」感もありますが、デザイナーの意図は、スクリーンベースのインタラクションから抜け出し、日常生活に存在するオブジェクトと有意義に関わる方法を見つけることにあったようです。

■ People to Time
人間に経過する時間を体感させつつ、立ち止まったり、自己の振り返りを促すデザインになります。

上のプロダクトは、休憩室のコーヒーマシンに隣接する形で設置されており、コーヒーマシンを利用する人間に深呼吸することを促すことで、ゆったりとした生活を送るように促しています。シンプルなテクノロジーですが、人間の行動を変容させるには有意義なデザインとされています。

Moments of Significance

“Design For Meaningfulness”を考えるにあたって、”Moments of Significance”を考えることが重要とされています。ビジネスで言えば、プロダクトが使われる場面を考えることに近いですが、ここではより「デザインによって人間の認知や世界観が変わる瞬間」に近いです。先述したいくつかの例のように、プロダクトを通して新たな感覚を得ることが、単純な利便性の追求を超えたデザインに繋がるとされています。そのようなデザインの考え方では、テクノロジーは手段やインスピレーションに過ぎず、”Technology is a catalyst”のように表現されることが多いようです。

そんな”Moments of Significance”を追求している、いくつかのプロダクト例を紹介します。

■ The Cold Feet Wedding Bouquet

スクリーンショット 2020-09-10 7.20.43

結婚式の際に新郎・新婦が緊張するのは当然のことで、結婚式を挙げたことのある方なら、その緊張を隠そうとした経験があるのではないでしょうか。このデザインは、新婦の緊張度合いを感知してそれをブーケの色で表現する(白: 緊張、青: 落ち着いている)ことで、周囲の人間に享受させるために作られました。

■ Ladies & Men’s Room Mixup

スクリーンショット 2020-09-10 7.20.48

トイレに関するデザインで、人がトイレを行き来する度に男女の標識が入れ替わ流ことで、男性が女性トイレに入ったり、女性が男性トイレに入ったりすることを促すものです。ここで重要なのは、「普段行くことのない場所に行くことで普段会うことのない人とのコミュニケーションを促している」ということで、新たな気づきを人間に促している点です。ただ個人的には、迷惑でしかないなとも思います。”Provocation”に近いような気もします。

■ Plant Orchestra

スクリーンショット 2020-09-10 7.21.10

「植物と人間をどのように関連づけるか」という問いに基づいて、デザインされた作品です。植物を触ることで発せられる様々な音を楽しむことができます。重要なのは、この作品を通して「人間が新たに植物を身の回りに置くことの重要性に気づく」ことにあります。一方でどの程度効果があるのかは不明で、個人的には多くの疑問符が残るデザインではあります。

Object Oriented Ontology

“Design For Meaningfulness”を考える際に有意義な概念として、”Object Oriented Ontology”と呼ばれるものがあります。端的に表現すれば、単純にテクノロジーを活用して有意義なオブジェクト(スマートデバイスなど)をデザインするのではなく、オブジェクト本来の役割や存在意義に即してデザインしようという考え方です。オブジェクト中心主義とも表現されます。

現代のテクノロジーの度が過ぎた適用例として、個人的にはAsimoを例として挙げてみます。(Asimoは優れたプロダクトであり、その優位性を否定するものではありません)

AsimoはHONDAが開発した次世代の人型ロボットで有名になっており、最先端のテクノロジーを搭載し、日常生活の様々な側面を支えることができるというのが一般的な理解かと思います。Asimoではなくても、Sci-fiの世界でロボットが人間の家族の一部になる、生活の一部になるというのは理解に易いかと思います。ただロボットが人間の家族に成り代わる、というのは現時点では為されておらず、違和感を感じる人が多いことも事実です。”Object Oriented Ontology”は、ロボットというオブジェクトが本来持つ役割や存在意義を考えた時に、ロボットが人間が話しかけたり、家族になったりすること自体がおかしいということを意味しています。

何かをデザインする時に新規・既存のオブジェクトに、スクリーンを設けたり、ボイスオーバー機能を設けたりすることは便利になることがある一方で、時として不自然なインタラクションを生み出してしまっている可能性があることを示唆しています。”Object Oriented Ontology”は、人間中心ではなく、オブジェクト中心で考えた時にどんなデザインが考えられるか、という疑問を呈していることに他なりません。

上の例は、オブジェクト中心主義に則ってデザインされたトースターです。本来トースターは人に所有され、人に利用されるために存在していると考えられがちですが、このトースターは周囲にあるトースターと比較して、自分が使われていないことが分かると、自分が不要であると判断し、別のユーザーの元に行けるようにシグナルを発することができます。ユーザーからすると、トースターの利用方法を見直すきっかけになり、良いインタラクションデザインの例とされています。

Project1: Moments of Significance

このコースの最初のプロジェクトは、個人で実施され、テーマは先述したオブジェクト中心主義に則って以下のようなものになりました。

画像14

【Project Theme】
Create a low-fidelity thing-to-thing prototype that explores moments of significance within a household using simple radio

要するにオブジェクト間の関係性をデザインして、その結果として人間に”Moments of Significance”を気づかせることが求められていました。自分のコンセプトは「積読」というものからインスピレーションを得ており、与えられたテーマに対する解釈は以下の通りです。

■ Thing-to-thing Prototype:
カメラ(自分のお気に入りのオブジェクト)と本の会話をデザインする

■ Moments of Significance:
何か他の物事に集中してしまい、積読してしまっていることで、本を購入した当初の目的や意思を忘れていることに気づかせる

自分の場合は、写真撮影や映像制作にハマっていることもあり、購入した本そっちのけで、カメラを触る時間が増えてしまっているのですが、本来「本」というオブジェクトが存在する理由(なぜ自分がその本を買ったのか)を、カメラが本の気持ちを代弁する形で人間に知らせるというデザインになっています。そうして、本に触れる時間を増やすという目論見です。

■ Mechanics:

今回の課題では、Simple Radioと呼ばれる近接されたオブジェクト同士で無線通信できる仕組みを用いました。

1. Transmitter: 本が触られていないとカメラにシグナルを送信する
Arduino Unoを用いて、本に物理的な動きが見られないと、LEDが10秒間隔で点灯し、30秒後にはカメラ側(Receiver側)にメッセージを送るようになっています。メッセージの内容は、「Take care of your book」です。

また本を触るとTilt Sensorが反応し、経過した時間をリセットし、LEDを消灯させる仕組みになっています。

2. Reciever: カメラがシグナルを受信し、本の気持ちをディスプレイに写す
カメラに備え付けられたReceiverがメッセージを受信し、Crystal Displayに表示されるようになっています。

Project2: Networked TUI prototype that explores people-to-people connection

今週最後の一日を使って、3人グループでプロジェクトが実施されました。テーマは、以下の通りです。

【Project Theme】
Create a networked TUI prototype that explores people-to-people connection using Wi-Fi

ここでいう”people-to-people connection”ですが、先述した通り「人間と人間の関係を強化したり、新たな関係性を紡ぐことができるプロダクト」を表していますが、自分のチームではこれを以下のように解釈しました。いわゆるDesign Principleと呼ばれるものです。

■ People-to-people
- RECONNECT
- MAINTAIN CLOSE PROXIMITY
- DEEPEN RELATIONSHIP

この解釈に基づいてブレインストーミングした結果が、下の写真ですが、最終的にはカップルが物理的に離れていても愛撫のような物理的な接触(Sense of Touch)を体験することができるウェアラブルデバイスを作成することにしました。

画像8

さらに自分のチームはこのデバイスを日常生活で使わせたいという目論見を持っており、そのためには使用する状況設定とデバイスの形状デザインが重要になるだろうと議論していました。ただ単純にウェアラブルを作るだけでは、WhatsappやMessengerと言った既存のスクリーンベースのプロダクトに代替されてしまうだろうと考えていたからです。

スクリーンショット 2020-09-12 12.50.14

インスピレーションを受けたのは、上の写真のようにカップルがよく足で愛情表現をしているという事実です。この足を通して行われる愛情表現をウェアラブルで表現できないか、というのがチームの目的となりました。

そこでデバイスを利用する状況を「オフィスで働いている時」にし、さらにデバイスの形状を靴下のようなフートウェアにすることで、普段カップルがしている愛撫や馴れ合いを表現することになりました。

A Pair of Foot Wearable that mimics a sense of gentle touch on one person’s feet, communicating a discrete message when the other partner gestures an action through feet remotely.

■ Functionality

今回のデバイスで実現したインタラクションは2つだけで、”Say Hello(挨拶)”と”Caress(愛撫)”のみです。時間的な制約が大きかったことと、表現出来る物理的な接触が多過ぎてもユーザーが混乱することになるだろうと考えていたからです。実際にこのデバイスが利用されている様子は、下記の動画で確認することができます。

今回のインタラクションはWifiを利用して実現されており、男性または女性側からアクションを起こすことで、相手がVibrating Motorの振動を通して、擬似的に足を介した愛情表現を感じられるようになっています。

【回路全体像】

画像14

【スイッチを押すことで男性(女性)側からシグナルを送信する】

画像10

【シグナルに応じて女性(男性)側が足に振動を感じ取ることができる】

画像11

【Copper Tapeを足で撫でることで相手にシグナルを送信する】

画像12

【複数のVibrating Motorを通して撫でられているような感覚を得られる】

画像13

今週の内容はここまでですが、デバイスを作成する裏では、Wifiがつながらない、Arduino Nanoがインターネットを受信しない、多量のコードのデバッグなどこれだけのインタラクションを実現するだけでも多くの時間と労力を割くことになりました。楽しい側面もある一方で、完全に機能していなくても、ビデオプロトタイピングのような形で表現できる以上、プロトタイピングプロセスでこの苦労がどこまで必要なのかは、少々疑問が残ります。

また来週以降も頑張っていこうと思います。

町田

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?