「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命-人は明日どう生きるのか」(森美術館)【1 min read】(2020/01/14更新、2020/01/13開始)

森美術館にて、2019年11月19日から2020年3月29日まで行われている「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命-人は明日どう生きるのか」についての感想を書く。

▼5つのセクション
1「都市の新たな可能性」
2「ネオ・メタボリズム建築へ」
3「ライフスタイルとデザインの革新」
4「身体の拡張と倫理」
5「変容する社会と人間」

■アートとは未来を現実世界に表出させる行為またはその作品

これらの掛け合わせによって、一つの未来を作ることができる。

・切り口1:法律、契約
・切り口2:アート、クラフト、サイエンス

そして、もっと法律は身近なものでいい。カルタのように、言葉遊びとして使ってもいいはずだ。

リーガルデザインも必要だが、リーガルアートがあってもいい。

アートというと、難しく感じるが、森美術館の「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命-人は明日どう生きるのか」へ行ってみて、もっと簡単なものだと思った。

アートは、「想像」であり「妄想」であり「未来」だ。

ビジネスとして成立しなくても、アートとして成立する場合がある。

ビジネスとアートは、結果でしかない。ビジネスとアートは等価だ。

結果的にどう発露するのかの差でしかない。

一過性のアート。一過性のビジネス。再現性のあるアート、再現性のあるビジネス。もちろん、一過性のビジネス、再現性のあるアートがあってもいいが、それはまた別の話だ。

人にとって実際的で、効果的でなくとも、その成果物、エンドプロダクトは価値がある。

現実に実現しなくても、つまり、現実に再現性のある形で実現しなくても、それは価値がある。

■アギ・ヘインズ「「変容」シリーズ」

アギ・ヘインズの「「変容」シリーズ」も印象に残った。

4番目のセクション「身体の拡張と倫理(Human Augmentation and Its Ethical Issues)」。

「テクノロジーは、ロボット工学とバイオ技術の二つの道筋から、身体能力の拡張に応用され始めています。」

「鼻にピンを埋め込まれた子ども」
「ハムスターのように頬が下がった子ども」

「私たちは遺伝子組み換えを許容できるとしても、本作のような身体の改変には抵抗があります。なぜでしょうか?」

「遺伝子組み換え」と「身体の改変」。

「外科技術で身体機能を強化した5人の新生児」

「よりよい大人に成長することを願って、親がわが子の身体を修正するという設定」

「本作は出生時に子どもの身体への介入が健康や身体能力の増強を目的に行われる未来を描き、親が子どもをデザインすることはどこまで許されるのかを問いかけています。」

以下を受け入れているにも関わらず、上記のような外科手術について、多かれ少なかれ心理的プレッシャーを感じるのはなぜだろうか。

・レーシックとコンタクト。
・ペースメーカー。

この作品は、まさに、ユヴァル・ノア・ハラリが『ホモ・デウス』で語っている未来の世界を具現化している。

■ラファエル・ロサノ=へメル&クシュシトフ・ウディチコ「ズーム・パビリオン」

ラファエル・ロサノ=へメル&クシュシトフ・ウディチコの「ズーム・パビリオン」は、自分自身が作品となる体験型のアート。面白かった。是非、体験して欲しい。

誰が、何の目的で、壁に映しだされる映像を観ているのかを想像すると、面白いだろう。

公権力なのか、それとも私人なのか。

■ヘレン・ノウルズ「スーパーデットハンターボットの裁判」(映像作品)

ヘレン・ノウルズの「スーパーデットハンターボットの裁判」という映像作品も考えさせられた。「債権回収」と「債務者への仕事のあっせん」という組み合わせ。

法令違反の行為を、AIに行わせるという設定。アルゴリズムそのものを被告人にしている。

長い映像作品だが、考えさせる内容。

この他にも2作品あり、全てを見るとしたら、長丁場になる。3人分の椅子があるので、じっくり見たい場合は、椅子に座ることをお勧めする。

■ハッセル・スタジオ+EOC「NASA 3Dプリンタ製住居コンペ案」(2018年)

この作品も面白かった。衣食住の住の側面。住に限らず、発想を飛躍させるためには、火星のことを考えるといいのだろう。なぜ火星なのか? 地球から離れた地のことを想定して発想するという一つの技術、テクニック。

ハッセル・スタジオは、オーストラリア、アデレード拠点。EOCは、ロンドン拠点。

火星のことを考えると、ヒトにとって根源的に必要なものが分かる。食料を含めたエネルギーだ。ヒトにとってのエネルギー、ヒトにとって重要なパートナーであるマシンやアルゴリズムにとってのエネルギー。主には、食料と電気だろう。

■手塚治虫『火の鳥 未来編』

「グラマツィオ・コーラー・アーキテクツ《飛行組立型建築》と手塚治虫の作品は撮影はできません。」

手塚治虫の火の鳥 未来編はもう一度、読んでおきたい。

■ディムート・シュトレーべ(Diemut Strebe)「シュガーベイブ(Sugababe)」

ディムート・シュトレーべ(Diemut Strebe)さんの「シュガーベイブ(Sugababe)」という作品は、ゴッホの左耳を「生きた状態(living state)」で再現。

「生前の耳の形は画像処理技術によって割り出され、3Dバイオプリンターでポリマー製の培養素材によって出力されています。」

DNAからmRNA、酵素、器官を生み出す。iPSの技術が具現化されたら、人々は真に何を望むのだろうか?

■終わりに

アートは、未来を描くことだ、未来の一部分を切り取ることだ、無数にある世界線の一つを可視化することだ。

古典的な西洋絵画は、写真や動画を夢見て描かれたのかもしれない。いわば、写真や動画の原点だ。

印象派の画家たちは、どんな未来を描いていたのだろうか。ゴッホは何を夢見ていたのか?

そう考えると、アートは、未来を見るための、顕微鏡であり、望遠鏡であり、眼鏡だ。

アートとは、未来を覗き込むための、一つのツールである。

以上



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