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監査の売上の実証テストをやるときに考えていること

新人の時は監査をやる時に少し上の先輩が何を考えて手続きを実施して、質問をする時に何をもとに良い悪いを考えているのかわかりませんでした。
そこで、その少し上の先輩となった今、何を考えて手続きをしているか書こうと思います。ちなみに、完全に個人的な考えなのでご覧になる際は懐疑心高めでお願いします。
もっと経験を積めば、見えてくる世界は変わると思いますが、今の私はこのように考えて手続きを行っています。
ケーススタディっぽく想像で書いているので、情報が不足しているところや議論が飛躍しておるところは各自で補ってください。

リスク評価


まず、会社の理解をする必要があります。理解した結果以下のような会社でした。

理解した内容
・上場企業である。
・営利企業である。
・製造業で製品を売っている。
・業界特有の複雑な売上計上プロセスはない。
・売上の計上は検収基準

そして、売上に実在性に誤謬リスクがあると認識しました。

手続きのアプローチ決定


売上にリスクがあると評価したあとは、具体的にどのようなアプローチを採用するか考える必要があります。ここでは統計的サンプリングでテストをすると決定します。統計的サンプリングの方が非統計的サンプリングよりも正確性と効率性の面で優れています。

内部統制の運用評価手続は行うこととします。上場企業のため、J-SOXで、内部統制を評価しているので、会社の内部監査人が抽出したテスト結果を利用することします。今回は誤謬リスクで、不正リスクではないため、経営者評価の結果を依拠しようと思います。その分ドキュメントの手間が発生しますが、経営者評価を依拠した方が楽です。

細かな理解


内部統制の運用評価を行い、統計的サンプリングで手続きを行うという方針は決定しましたが、これだけでは実際の手続きの実施まで落とし込めていません。
会社ごとに会計システム、売上計上システム、売上計上の業務フロー、売上の根拠となる資料が異なります。そのため、もう少し細かい理解が必要となります。
会社へのヒアリングや売上計上フローのウォークスルーを行い、会社の具体的な業務フローを理解していきます。ヒアリングの結果以下の理解を得られました。
なお、理解のコツは、単価、数量、計上日など、売上という要素を分解した時に、重要な要素がどこでどのように決まるかということを意識することだと考えています。

・売上の登録(具体的には単価と数量の登録)は売上計上システムを用いている。
・売上計上システムから会計システムへ月に1回、自動で集計され売上計上される。
・受注→出荷→納品→検収というフローである。事務の方が注文書の数量と売上検収書の日付で売上を登録して、その売上は日時で上長の承認を通して、登録完了となる。
・売上単価は、個々の得意先と契約書で合意され、売上計上システムに単価マスタとして登録されている。

システムの理解から、売上計上システムから出力される売上の明細(補助簿)を母集団としてテストを行う必要があります。
そしてある1件の売上のテストをする時は金額(単価と数量)と計上日の登録に誤謬リスクがあるので、単価、数量、計上日を証憑と突合します。単価は、契約書、数量は注文書、計上日は検収書で突合します。

そして具体的な実施時期は、期末の負荷分散のため、実施時期は以下のスケジュールで実施します。
4-6月分→8月
7-9月分→11月
10-12月→2月
1-2月→3月
3月→4月

ここまで考えて、やっと会社への依頼ができるようになります。継続監査の場合は、そこまで考えなくてもいいかもしれません。ただ、新規の監査だとこれ以上に考えることが多いとおもいます。そして実際の会社はもっと複雑です。
その他の会社担当者との調整や、やり取りは、監査というより、一般的な社会人としての能力が必要となります。最初はそこが不安ですが、なれればこんなもんかという感じでした。
ありがとうございました。

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