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#エッセイ 摘果りんごの酵素シロップ

 妻が摘果てきかりんごを使って、酵素シロップを作ってくれた。

 果物はたくさん実ってしまうと、養分がそれぞれにいきわたらず、味が落ちることがあるらしい。それを避けるために、いくつかの実を若いうちに摘み取る。その間引きする作業を摘果というそうだ。

 奈良のほうに出かけたときに、摘果りんごが売られていた。若いうちに摘み取っているため、大きさはゴルフボールほどだ。
 熟していない青い実には強い渋みや酸味があり、そのまま食べることはできない。ジャムやリンゴ酢などへの、加工用の果実になる。

 我が家では、妻が摘果りんごの酵素シロップを作ってくれた。酵素シロップには夏バテ防止、美肌効果、整腸作用などがあるそうだ。この身体にいい酵素シロップを自作し、水や炭酸で割って飲むのが、巷では微妙にはやっているらしい。

 りんごを皮ごと半分に切って、氷砂糖と一緒に瓶につけこむ。一ヶ月ほど経てば酵素シロップができあがり。
 のはずが……。

一ヶ月後の摘果りんご

 まるで水を入れたように、謎汁がいっぱい出ている(水はまったく加えていない)。
 氷砂糖が全部溶けだしたとしても、この謎汁の量は多過ぎる。その謎汁は黄色く濁っているし、りんごは茶色く変色しているし、そのうえシワシワで鮑みたいになっているし。
 なにより、大量の泡が出ているし。

 ……この泡って、腐っているからでは?
 
 瓶の蓋を開けて中をにおってみると、酸っぱいにおいがしているような気がしなくもない。常温で約一ヶ月つけこむということだったが、ここ最近の気温は連日30度を超えていた。
 せっかくの摘果りんごを、暑さで腐らせてしまったのでは……。

 だが、このまま捨てるのはもったいない。腹をくだすのを覚悟で、妻と一緒に飲んでみた。
 謎汁をコップに少しそそぎ、炭酸で割って、氷も適当に入れてできあがり。おそるおそる飲んでみると……。

 ものすごくうまい!
 腐っている味なんてしない。とにかくうまい!

 爽やかな甘さのなかに、りんごの優しい酸味。
 暑い夏にぴったりという味で、本当にめっちゃくちゃうまいのである。

謎汁の炭酸割り

 ネットでちまちまと調べてみると、つけこんでいるあいだに発酵するため、泡が出るのは正常な現象だそうだ。泡が出ていないと発酵していないため、ただ甘いだけのシロップになってしまう。
 酵素シロップにするには、発酵が必須らしかった。

 泡はカビの一種で、煮沸消毒しないといけないという情報もネットにあったが、反対に煮沸すれば風味が落ちて台無しになるという情報もあった。
 ぼくは煮沸NG説を信じて飲んだ。そっちを信じて正解だったみたいだ。もし煮沸していたら、味が落ちてしまっていただろう。きっとこんなにうまくはなかった。

 身体にいいうえに、ものすごくうまい。
 酵素シロップ最高!
 作ってくれた妻も最高!
 強炭酸割りがおすすめ!

 ちなみに、この酵素シロップ以外に、あんず酒や梅酒も作ってくれている。あんず酒は三ヶ月、梅酒は一年かかる。道のりはまだまだ長いものの、できあがるのが今から楽しみだ。
 ただ、ぼくはあまりお酒が飲めないのだが……


摘果りんご酵素シロップのレシピ

・摘果りんご 1kg
・氷砂糖 1kg

りんごを半分に切って、氷砂糖と一緒に瓶に入れて1ヶ月待つ。
氷砂糖が硬いうちも、溶けだしてからも、ときどき軽く混ぜる。
おいしくな〜れ、という恥ずかしい呪文はノーサンキューで。
ある日、多すぎる量の謎汁に気づいてびびる。
これ、飲んでも大丈夫なやつ……? と自問しながら、炭酸水や水で割って飲む。
5倍〜7倍に薄めるのがおすすめ。



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烏目浩輔
サポートしていただけたら、祝盃をあげようと思います。と言いたいところですが、僕はお酒が飲めません。大好きな梨を大人買いしようと思います。ちなみに僕は梨を皮ごと食べます。柿も皮ごと食べます。