烏目浩輔

実話怪談系の話を読んだり書いたりが中心です。 たまに雑記とか別のお話も。 一応は書籍化…

烏目浩輔

実話怪談系の話を読んだり書いたりが中心です。 たまに雑記とか別のお話も。 一応は書籍化してもらった作品もあるのですが、その話はおいおいということで。

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  • 実話怪談の記事を集めました。

    こつこつと更新している怖いお話を、実話怪談集としてまとめました。 基本的に一話完結であり、各話に繋がりもありません。一話目から順番に読んでもらっても構いませんし、気になった話だけ読んでもらっても構いません。 お好きなように、ご自由に読んでください。

最近の記事

実話怪談 #50 「意図がわからない」

 十代後半の女性、野口さんの談である。  高校三年生の野口さんは、二階の自室で受験勉強をしていた。  すると、誰かの足音が部屋の外に聞こえた。深夜の自宅はしんと静まり返っており、足音はやけに大きく聞こえた。    ミシ……、ミシ……、  フローリングの床が軋んで音がしている。足音は部屋の前の廊下を通り過ぎると、しばらくしてからまた戻ってきた。  ミシ……、ミシ……、  野口さんは勉強をしながらぼんやり思った。 (お姉ちゃんかな……)  野口さんの部屋の隣に姉の部屋が

    • 実話怪談 #49 「ギィィ……」

       二十代前半の男性、前田さんの談である。  中学生のときの話だという。  それまで住んでいた2LDKのマンションから、4LDKのYマンションに引っ越した。中古のマンションではあったものの、古びているという印象はなく、なにより部屋がふたつ増えたのがよかった。引っ越し前には叶わなかった自室を与えてもらった。    Yマンションに住みはじめてから一週間ほどが経った頃だった。前田さんは夜の十時頃に自室のベッドに寝転んで漫画を読んでいた。すると、奇妙な音が耳に届いたという。  ギィ

      • 実話怪談 #48 「ときどき本当に」

         十代後半の女性、川瀬さんの談である。  現在の川瀬さんは高校生だが、当時は小学校高学年だったという。  近所に評判のよくない三十代後半の男性が住んでいた。酒に酔ってしょっちゅう暴れまわり、ギャンブルによる膨大な借金があり、複数の女性に結婚詐欺じみたことを行なっている。  そういう悪評が立っている男性だった。  嘘か実かは判然としない話だったが、男性に騙された女性が自殺を図ったという噂もあった。  川瀬さんは学校帰りや母親の買い物についていくときなどに、その男性をちょくち

        • ちょっと忙しいので、しばらくnoteの更新が遅くなるかもです。 もし、実話怪談を楽しみにしてくださっている方がいらっしゃったら、すみません。 ところで、塩けんぴという芋けんぴをお土産にいただきました。すっごい旨い! 止まらなくなる美味しさです。 これを書きながらも食べてます。

        実話怪談 #50 「意図がわからない」

        • 実話怪談 #49 「ギィィ……」

        • 実話怪談 #48 「ときどき本当に」

        • ちょっと忙しいので、しばらくnoteの更新が遅くなるかもです。 もし、実話怪談を楽しみにしてくださっている方がいらっしゃったら、すみません。 ところで、塩けんぴという芋けんぴをお土産にいただきました。すっごい旨い! 止まらなくなる美味しさです。 これを書きながらも食べてます。

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        • 実話怪談の記事を集めました。
          50本

        記事

          実話怪談 #47 「シニマブイ:後編」

           巾着袋の中身は石だという。鉄のように重い石の正体が気になったものの、詳しく知っていけないし、見てもいけないそうだ。  翌日から石嶺さんはSさんにもらった巾着袋を制服のポケットに忍ばせて通学した。どうにも頼りのない巾着袋だったが、それからまったく男児を見かけなくなった。一年生のあいだも二年生のあいだも男児の姿を見せず、ついには高校を卒業するまで一度も姿を見ることがなかった。  Sさんのユタの能力は本物だったのだろう。巾着袋を頼りのないと思ってしまったことを申しわけなく思った

          実話怪談 #47 「シニマブイ:後編」

          実話怪談 #46 「シニマブイ:前編」

           三十代前半の男性、石嶺さんの談である。  現在の石嶺さんは大阪に移り住んでいるが、二十二歳までは沖縄県で暮らしていた。生まれも育ちも沖縄で、大阪には就職を機に出てきた。    話のはじまりは小学五年生のときだたという。  夏季はしつこいほど青空の日が続く沖縄も、秋から冬にかけては曇りや雨の日が多い。十一月の初旬のその日も、空はどんよりと曇っていたそうだ。  小学校で体育の授業中だった石嶺さんは、運動場の隅っこに見知らぬ男児がいるのを認めた。どこか古臭い浴衣を着たその男児

          実話怪談 #46 「シニマブイ:前編」

          実話怪談 #45 「視界の端」

           これは二十代半ばの女性、島崎さんの談である。  二時間ほど残業をした日のことだという。  職場の最寄り駅は地下鉄のS駅であり、そこから電車に乗りこんだ島崎さんは、座席についてぼんやりしていた。すると、視界の右端にすうっと入ってくる人影があった。  少し離れたところに乗降ドアがあり、そのすぐそばに誰かが立ったのだ。  視界の右端だと目の焦点が合っていないものの、髪の長い女性ということだけはわかった。  島崎さんはなんとはなしにその女性に目を向けた。ところが、女性は視界の右

          実話怪談 #45 「視界の端」

          実話怪談 #44 「倦怠感」

           これは三十代前半の女性、木下さんの談である。    木下さんはスタッフが五人いるサロンで、美容師として三年前から働いている。身を切るような冷たい風が吹く十二月の半ばに、五十がらみと思われる痩身の女性を担当した。数日前にオンラインで予約が入った新規の客だった。  女性は予約時間の午後四時ぴったりに美容院にやってきた。希望のメニューはカットと白髪染めだった。  高圧的だったり嫌な態度を取るような客でなかったが、女性はとにかくどんよりと暗くて無口だった。木下さんがなにを話しかけ

          実話怪談 #44 「倦怠感」

          実話怪談 #43 「忘れる」

           二十代後半の女性、広川さんの談である。  広川さんは総合病院に勤めて四年目、中堅クラスに入る看護師だった。  ある日の夜勤で入院病棟の巡回をしていた。  病室は三階から六階まであり、下から上に順番に巡回していく。消灯した廊下は真っ暗で、懐中電灯が必須だった。  やがて広川さんは担当しているすべての病室をまわり終えた。さいわい、入院患者にこれといった異常は見られなかった。  六階から二階のナースステーションにおりるために、広川さんはエレベーターホールに向かった。すると、向

          実話怪談 #43 「忘れる」

          実話怪談 #42 「廃墟」

           二十代前半の男性、須藤さんの談である。  須藤さんには同じ大学に通うIさん、Sさん、Yさんという友達がいた。ゴールデンウィークだと少々季節外れだが、その三人と肝試しに出かけることになった。    Iさんが運転するワンボックスで目的の場所に着いたのは、深夜の一時を少し過ぎた頃だった。肝試しスポットとして有名なホテルの廃墟だ。十年ほど前に経営不審で廃業したホテルが、今でも取り壊されずに残っている。  雑草があちこちに生えているものの、ホテルの隣には広い駐車場があった。先客らし

          実話怪談 #42 「廃墟」

          実話怪談 #41 「あの音:後編」

           野池で釣りをしてから約二週間後のことだった。  Sさんはマンションの四階に、両親と姉に四人で住んでいる。昼食を終えてまもなくの午後一時半頃、Sさんはそのベランダから飛び降りた。津村さんがそれを知ったのは事があった翌日で、仕事帰りにSさんが入院している病院に向かった。    病室は六階にあった。  Sさんの母親から電話で聞いてはいたが、Sさんはあちこちを骨折したものの、命には別状はないとのことだった。また、そこそこ重症のわりには案外元気で、会話するにはこれといって支障はないと

          実話怪談 #41 「あの音:後編」

          実話怪談 #40 「あの音:前編」

           二十代後半の男性、津村さんの談である。  その日、津村さんは趣味のブラックバス釣りに出かけた。同行者は大学時代からの友人であり、釣り仲間でもあるSさんだった。 「新しい釣り場を開拓しようぜ」  Sさんがそんなことを言い出したため、釣り場に選んだのははじめての野池だった。オンラインマップを使って山の中腹に見つけたのである。  野池の近くに着いたのは昼過ぎだった。すると、雑草にびっしりと覆われているものの、車を駐車できそうなスペースがあった。  津村さんはそこにワンボック

          実話怪談 #40 「あの音:前編」

          実話怪談 #39 「九時二十一分の電話」

           これは二十代半ばの男性、原田さんの談である。  原田さんの実家は埼玉県にある。大学進学のさいに大阪に出て、そのまま大阪にて就職をした。現在は貿易関連の企業で営業の職に就きつつ、ワンルームマンションでひとり暮らしをしている。  基本的に自炊をする原田さんは、その日も夕食に生姜焼きを作った。食べ終えると洗い物を済ませ、テレビを観ながらビールを飲んだ。バラエティ番組からCMに切り替わったとき、なんとなくスマホを手にして時間を確認した。画面の右上のデジタル表示が、午後九時二十一分

          実話怪談 #39 「九時二十一分の電話」

          昨日書いた伊勢神宮の記事が、『今日の注目記事』に追加されました。 なんだか嬉しい! ありがとうございます! 記事のタイトルは『伊勢神宮  貴重な深夜参拝』です。 『今日の注目記事』↓ https://note.com/notemagazine/m/mf2e92ffd6658 ※このつぶやきはいつか消すかもしれません。

          昨日書いた伊勢神宮の記事が、『今日の注目記事』に追加されました。 なんだか嬉しい! ありがとうございます! 記事のタイトルは『伊勢神宮  貴重な深夜参拝』です。 『今日の注目記事』↓ https://note.com/notemagazine/m/mf2e92ffd6658 ※このつぶやきはいつか消すかもしれません。

          伊勢神宮 『貴重な深夜参拝』

           今年の正月のことだからだいぶと時期外れなのだが、スマホの画像を整理していると、妻と伊勢神宮を参拝したときの写真がぱらぱらと出てきた。  せっかくなので記事にしてみようと思う。 はじめに  ぼくと妻は伊勢神宮が好きで、年に3~4回は参拝目的で足を運ぶ。伊勢神宮の雰囲気が好きというのもあるが、なにより大阪から車で約3時間半という距離がちょうどいい。遠出した気分も得られるし、3時間半ほどであれば、そこまで体力的にしんどくもない。  ようするに、伊勢神宮参りは手軽な小旅行なのだ

          伊勢神宮 『貴重な深夜参拝』

          実話怪談 #38 「お供え」

           六十代後半の女性、村山さんの談である。  村山さんは雌のポメラニアンを飼っている。知人の飼っているポメラニアンが仔犬が産み、そのうちの一匹を去年に譲ってもらったのだ。  ポメラニアンをつれて散歩にいくのは朝と夕の二回。朝の散歩は午前四時三十分過ぎに家を出る。ずいぶん早い時間ではあるものの、同じように犬の散歩をさせている人はそこそこいる。    朝の散歩に出た村山さんは、いつもの児童公園に向かった。野球のグランドなども併設されている立派な児童公園だ。公園内をぐるりと一周する

          実話怪談 #38 「お供え」