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アメフトの「エンタメ性」は強みか?(アメフトの事業化を考える③)

1.はじめに

前回はアメフトの「価値の発揮」という観点で、アメフトが存在しない場合に困る人の多さや重大さが、アメフトが現在発揮している価値で、発揮する価値を増大させるためにはアメフトがOnly1、No.1になれる社会領域を見出して入り込んでいく必要がある、ということを書きました。

今回は、アメフトがOnly1、No.1となれる社会領域の候補として、挙げる人が多いであろう「エンタメ性」について、考えてみます。

2.3つのエンタメ性

この記事では「エンタメ性」をよく考えてみるために、三つに分解したいと思います。

1つ目は試合会場や試合中継で行われる演出が面白いかどうか。これを「演出エンタメ性」とします。

2つ目は競技そのものが面白いかどうか。これを「競技エンタメ性」とします。

3つ目はその試合やチームの意味合いが面白いかどうか。これを「意味エンタメ性」とします。

まず、これらについて、エンタメ性溢れる本場米国アメフトについて確認したいと思います。

3.米国アメフトの演出エンタメ性

アメフトに携わっている人は良く知っているかと思いますが、本場アメリカのNFLやカレッジフットボールの人気は凄まじいです。野球やバスケットボールと比べても、NFLもカレッジフットボールもずば抜けて高い視聴率を記録しています。

特にNFLの決勝戦「スーパーボウル」は、アメリカのテレビ視聴率の歴代TOP10のほとんどを占めています。

スーパーボウルでの豪華なハーフタイムショー、アメフトの華やかなチアリーダー、様々な映像技術など、演出エンタメ性が物凄いです。

カレッジフットボールでも、ブラスバンドやマーチングバンドの演奏とチアリーダーの演出など、非常にスタジアムは楽しい空間になっています。

4.米国アメフトの競技エンタメ性

競技エンタメ性という点において、米国アメフトは戦術の奥深さや、選手の超人的な身体能力、プレーヤー同士の駆け引きで観る人を魅了しています。

また、NFLにおいてはドラフト制度やサラリーキャップ、カーディングという面でも戦力が近いチーム同士の試合を多く生み出す仕組みをもっており、接戦が多く、劇的な逆転劇も生まれやすいため最後まで見応えのある試合が多いです。

カレッジフットボールは戦力均衡はNFLに比べありませんが、戦術のバリエーションが多く、学校ごとに違った戦い方をすることが1つの楽しさになっています。

5.米国アメフトの意味エンタメ性

まず、アメフトはアメリカ人がルールも含め創り上げていったまさに「国技」であるということが大きな意味を持っています。(ここは野球もバスケも同じですが。)

競技特性として役割分担や、各ポジションの動きをアサイメントと呼ばれるルールで明確にしていることがあります。一説によると、その特徴が多種多様な民族、宗教で構成された国で一緒に暮らしていくアメリカそのものだということでこれほどまでにアメリカでアメフトが受け入れられて人気がある根本である、という説があります。

この説の考え方が波及したのかわかりませんが、まず大学において多民族多宗教で構成されるキャンパス内をコミュニケーションを円滑にするために、各大学がアメフトに力を入れ始めました。
そして、それが地域の人からも応援されるようになり、カレッジフットボールが母校対抗戦でもあり、地域対抗戦にもなり、人々が熱中するようになりました。
NFLは大学アメフトで活躍したヒーローがプロの世界に出て、また地域対抗戦として応援される、という構造になっています。
大学とプロの繋がりの意味付けを多くするために、ドラフトもそれだけで一大エンタメになるよう、様々な情報発信がされています。

また、カレッジフットボールもNFLも歴史は100年以上あり、歴史との比較や過去の因縁など、試合やリーグ、チームが抱えるストーリーが非常に豊富でその意味付けを大いにエンタメに昇華しています。

6.日本アメフトのエンタメ性

これまでアメリカのアメフトのエンタメ性について確認してみましたが、日本のアメフトのエンタメ性はどうでしょうか?

まず、演出エンタメ性ですが、これは演出をするための資金が無いと演出エンタメ性を高めることが難しいです。
日本のアメフトはボウルゲームなどスポットで出来る範囲の演出の努力を続けていますが、日本の他のプロスポーツと比べ資金が不足していますので、強みになるほど優れているとは言えないのではないでしょうか。

次に競技エンタメ性ですが、これ自体は国が変わっても変わらない部分も多いので、それなりにある、と言えるかもしれません。
しかし、アメリカと比べると、選手の身体能力や戦術の奥深さ、戦力均衡の仕組みなどで不足しているので競技エンタメ性も低下する面もあります。
そして競技エンタメ性自体で難しいのが、そもそもアメフトを知らない人にとっては、競技エンタメ性が高くとも伝わりにくい、という点です。サッカー、バスケ、野球等の他のスポーツと比べてどのくらい面白いのか、いくら語ったところで、ピンときません。そして普通の人は演出エンタメ性や意味エンタメ性も含めてその競技の面白さと認識するので、競技エンタメ性だけ取り出しても、伝えるのは難しい部分があります。
しかし、日本でも一度アメフトを知るとその面白さからハマる人は多いと感じています。なので、そもそも競技エンタメ性は、新しく観る人を増やすのには効果が低く、一度観た人にもう一度観たいと思わせる部分で活かされるのかもしれません。
なので、日本のアメフトにおいて競技エンタメ性が強みになる場面は限られる、と私は考えています。

最後に意味エンタメ性ですが、現状はあまり発揮できていない、と思います。
まずアメリカの例であったような地域対抗戦という意味合いが低い状況です。これはそもそも日本の大学が首都圏と関西圏に偏在してしまっているという点、日本のXリーグのルーツである実業団も首都圏と関西圏に偏在してしまっているという点があり、アメフト関係者以外が応援する理由を意味付けできていません。
また、今回のサッカーワールドカップやオリンピックなどのように、「日本が世界から凄いと思われる」機会がアメフトにはありません。そもそもアメリカとそれ以外の国の格差が多く、アメリカも国際試合への関心が低いため、意味合いのある大会を構築できていない状況です。
(一部福岡SUNSのコージ・トクダ選手のように、知名度がある選手が活動をして、それがテレビに注目されて放送される、という非常に凄い事例がありますが、日本のアメフト全体の強みに出来ているわけではないと感じています。)

以上を考えると、日本のアメフトにとって「エンタメ性」をOnly1、No.1の強みとして事業化を図るのは難しいと思っています。

7.さいごに

今回は、アメフトがOnly1、No.1となれる社会領域の候補として、「エンタメ性」について検討してみましたが、事業化を図るための強みとしては難しい、と書きました。

ネガティブな内容が多く気分を害された方もいらっしゃるかもしれませんが、次回以降、強みとなる可能性のある社会領域について、ポジティブに感じられる内容を書きたいと思います。

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