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アメリカ高校スポーツの地域性と主体性

1.はじめに

先日、大学スポーツの勉強会コミュニティでざっくらばんな交流会を開催しました。その時の話が非常に示唆深かったのでnoteにまとめます。

主に以下の2点。

①日本の大学スポーツ発展に必要な機能
②アメリカの教育制度と風土・文化に紐付く、高校スポーツのガバナンスモデルと地域性

この記事では②について書きます。①については以下ご覧ください。

ちなみに上記のコミュニティはMSBSというスポーツビジネススクールの修了生のうち、大学スポーツについて追求しているメンバーで構成されているコミュニティです。

現在MSBSの第5期生を募集しているようですので、スポーツビジネス関係者やスポーツビジネスの情報が欲しい方には超おすすめです。

2.アメリカの教育制度

日米の教育制度の大きな違いの1つが、アメリカは高校までが義務教育である、ということです。この影響で日本のような高校受験が存在しません。

ほとんどの中学生が地元の高校にそのまま進学します。

また、教員の採用も基本的に学区ごとに行われており、契約満了や、辞めなければ基本的に同じ学校に先生はいて、日本のように数年で転勤、という形にはなりません。

以上のことが学校スポーツにおいて結構影響してきてるなと感じました。

もちろんアメリカの教育制度の方が良い、ということではなく、違いによってスポーツ文化にも影響を与えている、ということです。

上記まとめると以下の2点の違いがスポーツに影響を与えていると考えられます。

①アメリカは高校までが義務教育。ほぼ全ての中学生が地元の高校に進学し、日本のような高校受験が無い。
②教員の転勤が日本のように頻発しない。

3.高校スポーツへの影響

アメリカの教育制度が高校スポーツに与えている影響(というより、アメリカでは普通のことかもしれませんが、日本と比較した場合の違い、といった方が良いかもしれません。)は以下4つあると考えられます。

①地域から応援される度合いが強く、寄付金集めが盛んである。
高校で進路選択や遠い所の高校に通う、といったことが無いので高校周辺の地元の子供でチーム作って部活動をしているという感じになります。すなわち、地元の人にとっては○○さん家の息子さん、娘さん、という感じで非常に親近感を持つ部活動となり、応援されやすい環境です。

日本の場合は高校受験で通う学校が地元から少し離れるという事が多くなり、学校周辺の地域の人にとっては誰の家の息子さん、娘さん、かよくわからなず、少し遠い存在になることが多いのではないでしょうか。

このように地域に応援されやすい環境なので、活動を応援してもらうための寄付金集めや地域の人を招いた有料イベントを開催し、資金を集めています。多い学校では年間数百万円を地域から集めることに成功しているそうです。

②教員の転勤がほとんどないため、①のノウハウが学校内に溜まっていく。
とはいっても寄付金集めもただ闇雲にやっても効果的に集まるわけではありません。保護者や教員の中に、優秀な方がいて、効果的な寄付金集めの方法を日々進化させています。保護者は毎年メンバーが変わってしまいますが、教員の転勤がほとんどないので、ノウハウが学校内に溜まっていきます。

日本の学校では、ある先生が部活動で効果的なノウハウを作っても、その先生の異動と共にノウハウがなくなってしまう、ということがよくあります。

③集めた寄付金を活用し、専門性の高い指導者の雇用や活動費に充てている。
①で記載したように、成功する学校では数百万円の資金獲得に成功しています。その資金を活用して、専門性の高い指導者を雇用したり、活動費に充て生徒の負担を小さくしたりすることが可能になっています。

日本で部活動の教員負担増加が叫ばれていますが、外部指導者の登用も資金不足で中々進まない状況があります。アメリカでは資金獲得のスキームにより、外部指導者の導入を行えているので、日本よりも持続可能な状況といえるのではないでしょうか。

④上記の一連の流れを支えるガバナンスモデル
次項で別途とりあげます。

4.高校スポーツのガバナンスモデル

前項の地域に根付いた資金獲得を行っていく流れをベースで支えているのが、「保護者」です。

これは教育制度というよりも、アメリカの風土や文化に紐づいていると個人的には捉えていますが、とにかく「主体的」なのです。

アメリカは多民族多宗教からなる移住者がルールを決めて国を作って行ったところなので、日本のような「暗黙の了解」がなく、「権利は主張しないと獲得できない」がベースになっています。

そして異なる主張がぶつかった時の合意形成の仕組みやスキルが優れていると思います。

教育においては、子供の教育はこうしたい、学校にこういうことをしてほしい、という主張をしあい、保護者間で合意形成をして学校や部活動に対してのガバナンスを利かせています。

寄付金集めやイベントも保護者が学校と協力して主体的に計画し、実行します。

アメリカで子育てをされている方からの話ですが、とにかく子供にスポーツをさせることに対する親の熱量がすさまじく、それが無いと子供がスポーツを続けられない、という状況とのことです。

この親の熱量が、学校の教育内容や部活動についての良い意味でのチェック機能として働いているのではないかと感じました。

5.さいごに

日本とアメリカのスポーツモデルのどちらが優れているのか、という点では一長一短あるかと思いますが、日本の部活動の持続可能性に課題が出ている今、アメリカのモデルは1つの参考になるのではないかと思いました。

脱線しますが、前述したアメリカの主体性とガバナンスの機能、というのはスポーツ世界を見ていくだけでも随所に感じられて、このあたりがアメリカの凄さなのかなと考えています。

下記の記事でも書いたように大学スポーツは、大学の主体性が前提となっているシステムであり、日本においては大学の主体性をどう作っていくか、が課題となっていると思います。

前回の記事でも書いたように、地域・学校・スポーツ・企業を繋ぐ支援機関が学校や保護者の主体性を引き出しながら、ノウハウが溜まる場所として機能していくことが日本の将来に1つ必要なのかもしれないと感じております。

ちょっと結論チックなことを書くとこんな感じでしょうか。

教育制度が地域性を生み、主体性が効果的なガバナンスを生む。

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