NCAAがまとめた「大学スポーツ再開の基本原則」が素晴らしい
1.はじめに
昨日、アメリカの大学スポーツの本部機関であるNCAAが「大学スポーツ再開の基本原則」を発表しました。
これはNCAAが独自に専門家を集めて策定されたものです。
これを日本語に翻訳しながら読んでみると、さすがアメリカというか、しっかりと今後の経過に合わせて判断基準と再開範囲が定められており、各大学が準備するのに必要な情報がまとめられている、と感じました。
そもそもNCAAというよりアメリカとしてのCOVID-19への対応がわかりやすい、という部分もあります。
日本での大学スポーツのみならず、部活動全般にとっても参考になると思いますし、スポーツ全体や、スポーツを超えた地域全体での対策においても参考になる部分が非常に多いと思いました。
2.ポイントと素晴らしい思う所
①「政府の方針 ⇒ 州・自治体の方針 ⇒ 大学の方針 ⇒ 大学スポーツの方針」という順番がしっかりと説明されており、それを網羅している。
これは日本でも基本的には同じですが、下記のようにアメリカは詳細にわたって見通しと共に計画を作っているのが凄いと思います。
②COVID-19の感染状況を判断するための明確な基準が定められており、再開へのプロセスが定められている。
以下のように、状況を判断するための基準(Gating Criteria)が明示されています。
i. 14日以内にに報告されたインフルエンザのような症状の疾患の減少傾向と、14日以内に報告されたCOVIDのような症状の減少傾向。
ii. 14日以内に確認されたCOVID-19の減少傾向、もしくは14日以内の総検査数における陽性率の減少傾向。
iii. 病院が危機管理をしなくても全ての患者を治療することができ、リスクの高い医療従事者のために抗体検査を含む堅牢な検査体制がある。
これを原則として、
14日間確認
⇒ 再開フェーズ1
⇒ 14日間の確認
⇒ 再開フェーズ2
⇒ 14日間の確認
⇒ 再開フェーズ3
⇒ 治療法やワクチンの開発
⇒ 完全再開
という形で定められています。
さらに、状況が悪化するにつれ、再開フェーズを後退させるなどの調整をしながら、感染防止と経済・教育・スポーツのバランスをとっています。
原則の9項目目には以下のように定められています。
9. 明確に識別され、透明性のあるリスク分析が行われなければならない。リスク分析では経済、教育、社会の復興、スポーツ参加の医療リスク(COVID-19感染や死亡の可能性を含む)などの問題を考慮しなければならない。
また、日本と異なり「陽性と判定された人数」だけで判断するのではなく、検査を受けられてなくても
「インフルエンザのような症状」の報告数
「COVIDのような症状」の報告数
も指標にしている、というところがかなり良く考えられていると感じました。
③「リスクの高い人の隔離」「検査と陽性者の隔離」を徹底しながらの再開計画となっている。
日本でどのような再開の流れとなるかは不明ですが、アメリカはとにかくCOVID-19への感染による死亡率が高くなるような人の隔離、そして検査と陽性者の隔離をしっかりと行いながら段階的に再開していくことがしっかりと考えられています。
フェーズ1の考え方を見るとそれが良くわかると思います。
下記でAD=アスレチックデパートメント(大学のスポーツ部門)です。
フェーズ1
政府のガイドラインに従い、フェーズ1のスポーツの再開は以下を前提としています。
1. 前述の州/地域の選別基準(Gating Criteria)が最低14日間満たされている。
2. 高血圧、慢性肺疾患、糖尿病、肥満、喘息などの重篤な基礎疾患を持つ人や、化学療法などで免疫システムが低下している人は影響を受けやすいため、そのような学生アスリート、AD医療スタッフ、コーチ、AD関係者は引き続き所定の場所に避難してください。
3. 上記の影響を受けやすい人が住んでいる寮や住居に住んでいる人は、職場や距離を置くことが難しい環境に戻ることにより、ウイルスを家に持ち帰る可能性があるため、適切な隔離予防策を行うべきであることに注意しなければなりません。
4. 物理的な距離の確保は継続してください。
5. 物理的な距離と消毒といった予防策がされていない限り、10人以上が集まることは避けてください。
6. 厳密な距離の確保と消毒プロトコルが実施されない限り、学生アスリートやスタッフが集まり交流する可能性のあるジムや共用部は閉鎖されたままにしてください。
7. 可能な限りバーチャルミーティングを奨励してください。
8. 不要不急の出張・移動は最小限とし、出張後の隔離に関するCDCのガイドラインを実施してください。
3.さいごに
スポーツに限らず、アメリカのような
①再開に向けたフェーズの設定と判定基準
②フェーズによる再開ルールの策定
③検査と隔離の徹底(それができなければ症状報告数の厳密な把握と疑われる人の自宅待機の徹底)
は教育、経済、その他社会活動などあらゆる所で必要だと思うので日本もこのように議論していけばいいのではないかと思いました。
4.全文日本語訳(掲載してよいか問い合わせ中)
※現在、全文日本語訳を公表してよいかNCAAに問い合わせ中です。
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