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デザイナーとホスピタリティ

猛烈な暑さが続いてますが、皆さん体調など崩されていませんか?
私はというと、現在進行形で入院中です。空調は快適です。
手術から1週間ほど経ちまして、改めて病院というのはすごいなという話を…
ではなく「ホスピタリティ」について感じたことを、今回の入院を通じて考えてみました。
すると、デザイナーにとっても役に立つのではないかと思う点に結びついた気がするので、書きなぐります。



ホスピタリティとは

病院では様々な患者さんが連日やってくる。
担当医師・看護師も途中で交代することもあれば、患者の体調も刻々と変化していく。
そんな中、俊敏にかつ適切に、何より安心して身を任せられることってとんでもないホスピタリティの上に成り立ってると感じた。
求められたことを完璧にこなすのは「大前提」であり「至上命題」でもある彼らのプレッシャーとは一体…。

ICUのベッドで一日中身動きもできない状態でそんなことをふわふわと考えていた。勝手にドキュメンタリー番組でも撮り始めたかのように。

ところで、「ホスピタリティ」と「サービス」の違いなんて話を見聞きすることがある。ある記事からの引用だけど、これがしっくり来た。

・ホスピタリティ … 顧客の感情や心理面に対するアプローチ、主従関係は発生しない。
・サービス … 顧客の要求に対する物理的なニーズへのアプローチ。

ホスピタリティとはどんな意味? サービスとの違いと、日本独自の「おもてなし」文化の融合

サービス面は文句ない対応だったことはしっかりと前置きしておきつつ、実際に入院してみるとホスピタリティというか個性の違いというか、看護師さん個人でちょっとした違いが見て取れた。
男性・女性・ベテラン・新人などなど、それぞれの経験値はバラバラだ。
言われたことは完璧にこなす人(やや受け身)、おっちょこちょいでも愛嬌があってとにかく安心する人、100年戦士のような無敵感のある人、患者目線になりすぎて一緒に咳しちゃう人。

これはサービス、あれはホスピタリティ。
そんな感じで一つ一つの行動について自分なりに(無理やり)区別してた。(すみません、人間観察の延長ってことで)

そこに問題(病気)を抱えた自分(私)ひとり。
不安を解消するべく提案をいただき、それを信じ託す。
成果物は自分の健康体。

お察しの良い方は途中でこじつけ感を受けたかもしれませんが、この状況って依頼主(クライアント)とデザイナー(制作請負会社等)の関係に似てませんか。

それで思ったんですよね。
デザイナーにとってのサービスとホスピタリティの境目はどこなんだろうって。なのでちょっと具体的に考えてみます。


デザイナーのホスピタリティ

  1. A社長が新事業を立ち上げ

  2. B制作会社にLP、パンフレットなどの制作依頼

  3. 同じくB制作会社に広告運用を委託

この段階でB制作会社からの提案としては、ざっくり言うと競合調査からのワイヤーフレーム・デザイン提案、広告運用提案。
見積もり提出・確認後に制作開始。

ここまででホスピタリティの出番といえば提案ベースで話が進んでいくことかなと。
以下のようにすぐ問診を始めちゃう人多い気がするんですけど、これはヒアリングに含まないと思ってます。

例)どんなデザインが良いですか? 素材はありますか? 予算は? すべて指示はもらえますか? それは対応範囲外です。

ヒアリングは提案の軸を決定づける重要な業務。
問診は単にサービス・対応範囲の確認。プロとしてどこまで対応義務が発生するか等を決定するためのプロセス。

簡易的なヒアリングシートの記入で終了したり、上記のような問診から始めてしまった場合、そこからの作業はA社長が自ら考え提案し、その制作オペレーションのみをB制作会社に依頼している状態とは呼べませんか。つまり、オペレーター契約で十分なわけです。

さらにA社長はそこまでの不信感(B社からの改善提案なし)からすべての依頼を破棄、C制作会社へと再依頼したとします。
そこでC制作会社の対応が、とことん耳を傾けて、痛いのか痒いのか気持ち悪いのか問題がないのはどこか、と自分事として振る舞うホスピタリティ全開の愛嬌100%だったとしたらA社長はどう感じるだろう。

これまで問題があったやり方を抜本的に見直したり、A社長が気付いてない落とし穴を指摘したり、そこで初めてデザイナー(他制作者含)などの価値が生きてくるわけです。

みんな大好き「課題解決」と言う言葉がありますが、サービス範囲の確認のための問診だけで課題は見つかりましたか?そんなのデザイナーの仕事じゃない!と思う人はきっと私と違うフィールドの方なのでしょう。そっと閉じてください。
また、A社長から課題を出されないと提案できないよ!と思ったとしたらそれは課題ではなくお題かも。

もちろんこれは参考例だし、規模によっては関係者も多いことでしょう。
人が多いからと人任せにしている業務の1/5でも回収できたとしたらどうですか。
自分が動かないと周りは動かない、くらいの自分事感。
これがデザイナーのホスピタリティ = 付加価値になるんじゃないかなーと。


他責思考をやめ、本当の伴走者へ

とまぁ時間が許す限り書きなぐりましたが、ついでにもう一つ。
ホスピタリティの話と案外近いのかもしれないと思ったのが弊屋号として名付けたwhom design(フームデザイン)。
もちろん造語ですが、whoとかwho'sにしたくなかったのにはもちろん訳があって、目的語としての「誰」を強調したかった。
誰のためのデザインなのか、他人事と自分事、サービスとホスピタリティ。

もはや哲学のような感じだけど、これを突き詰めるのも個人事業主としての自由度ではありそうで深掘りするのも良いかもしれない。

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