恋せよ乙女
仕事が立て込んでおりなかなかnoteに顔を出すことが出来なかっただけで、決してガリレオが実におもしろ過ぎて、過去作を読みまくってnoteをサボっていたわけじゃありません。
こんにちは、長編小説を読むといつも時を忘れてしまうコッシーです。
さて、うちの入居者でⅠさんという女性がいます。
Ⅰさんは70代と年齢はまだお若いですが要介護4と介護度も高く、車椅子で生活されており日常生活のほとんどをこちらで介助をしています。
重度の認知症でもあり、感情のコントロールが難しいようで大声を出したりすぐに怒ったりされることがあります。
旦那さんがよく面会に来てくれますが、ご機嫌ナナメの時などは「あんた何しにきた!早く帰れ!」と言われて、「今日は怒ってるみたいだから…」と寂しそうな顔して帰られる旦那さんの姿を見るとこちらまで切なくなります。
Ⅰさんは口が悪い時もありますが、とても優しい一面もあります。
介助に入ったスタッフに「あんた可愛い顔してるね」と言ってくれたり、僕のパーマ頭を見て「似合うわよ、その髪」と褒めてくれます。
きっとIさんは、僕らのように忖度したり気にしたりすることせず、自分の気持ちに正直に生きているのだと思います。
自分の感情をそのまんま表現しているのだと思います。
ちなみに以前に記事にした僕のことを【うどん泥棒】と呼んだのはIさんです(笑)
そんなⅠさんは腎不全を患っており週に3回血液透析をされています。
透析には僕らが病院まで送り迎えをしています。
その病院には僕らと同じように他の施設職員が送り迎えをしている透析患者さんがたくさんいます。
その中の1人にⅠさんのお気に入りの職員さんがいます。
40代後半から50代前半の男性スタッフで細身のキリっとしたカッコいい人です。
皆さんの脳内イメージでは【西島秀俊さん】で再生してくださると助かります。
※きのう何食べたのシロさんのイメージ
Ⅰさんはこのシロさんのことがめちゃくちゃ大好きで、病院内でシロさんを見つけるや否や「イイ男がいる!イイ男のところに行きたい!」と目をハートにして大きな声を出されます。
僕はまるで少女のようにはしゃぐⅠさんが可愛くて、「Ⅰさん、あの人のこと好きなんだ~!ヒューヒューだね!」とついついイジってしまいます。
意地悪な僕にⅠさんは「あんたはうるさい!殺すぞ!」と冷たく言い放ちます。
#殺すはひどくね
そんなある日のことです。
いつものように病院にⅠさんを迎えに行くと、Ⅰさんは病院のスタッフさん達と談笑している様子でした。
声をかける僕をみるなりスタッフさん達はニヤニヤしながら「Ⅰさん!イイ男が来たよ!」と言いました。
どうやらⅠさんから「イイ男」がいると話を聞いたみたいで、僕のことを「イイ男」だと勘違いしているようでした。
当然、僕は誰が「イイ男」なのか知っていますから「僕じゃないですよ」と否定をしますが、スタッフさん達は謙遜していると思っているのか「またまた~」と取り合ってくれません。
必死で否定するのも角が立つと思って、そのままⅠさんを連れていこうとした時でした。
Ⅰさんが僕を見つめながら何か言おうとしました。
「この人は…この人は…」
誰もがその続きを固唾を呑んで見守ります。
「この人は…この人は…
うどん!!」
全員「う、うどん!?!?」
※画像は当施設の自慢の特性天ぷらうどんです
Ⅰさんを除いて、その場にいた全員大爆笑でした。
Ⅰさんだけは「何がおかしいの!」と怒っていました。
しかしその後すぐに意中のシロさんが颯爽と登場し「イイ男!イイ男!」と喜んでいました。
そんなⅠさんに「1番イイ男は誰?」と聞いたことがありました。
Ⅰさんは悩むそぶりも見せず「そりゃあうちのお父さん(旦那さん)に決まってるでしょ」と即答されました。
普段は会っても「早く帰れ!」と罵っていますが、やっぱり本音は旦那さんを愛しているんだなと思いました。
その事をいつも寂しそうに帰られる旦那さんにお伝えしました。
旦那さんは「あいつは気まぐれだから(笑)」と笑っていましたが、その顔はとても嬉しそうでした。
しかしその日も「何しに来た!早よ帰れ!」と言われてしまい、結局すごすごと退散されていましたが、何となくいつもよりも寂しそうには見えませんでした。
Ⅰさんは相変わらずシロさんを見つけると「イイ男がいる!」とキャッキャと騒いでおり、そんなⅠさんにシロさんは「こんにちは」と爽やかな笑顔を見せてくれます。
僕はそんな様子を見ながら「イイ男と言われて調子に乗っていますが、Ⅰさんの1番は旦那さんなんだからね!」と心の中でシロさんに毒づくのでした。
#決して嫉妬ではない
#うどんと言われた恨み
それでは良い休日をお過ごしください。
コッシー
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