三十路インタビュー Elli: 幼稚園言語サポート

今回インタビューさせてもらった彼女はエネルギーの固まり。
幼稚園と保護者を繋ぐ大事なはしご役、名前はElli (エリー)、笑顔がとっても可愛い素敵な同い年!
 
ドイツにおいて大学内に納まらず、国内外で様々な経験を積んだ人はどうなるのか、どうその経験を繋いでいるのか一つの例です。
 
 
 
 
ビバ!

※このインタビューをさせてもらったのは私の実習先Friedenskreisという団体で、この団体については、、、https://note.com/kosokosolife/n/na89dbd23727d  

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《簡単に自己紹介をお願いします。 》
エリーです。今は31歳です。大学では言語学を中心に教育学や社会学など、色々なことをたくさん勉強したわ。最近の大学システムは学士“Bachelor” と修士“Master”(→日本と同様の大学教育課程)だけど、わたしが学生のときはマギスター“Magister”とディプロム“Diplom”というドイツ独特の教育課程があって、その時には分野を変えながら色んなことを学ぶことができたの。 (参照→http://tokyo.daad.de/japanese/jp_sid_uni_abschluss.htm)

わたしのマギスターの卒業論文タイトルは『Die Überwindung der Sprachbarriere in Kitas』(和訳=幼稚園における言語障壁の克服について)でこのテーマでワークショップも企画したわ。 言語学だと(異)文化間のコミュニケーションを中心に学んだり、他にも外国人のためのドイツ語について勉強したの。2005年から2013年まで大学に在籍していたのだけど、その間に、ここFriedenskreisやロシアで実習をしたりしたわ。
高校を卒業した後、エストニアの養護施設で海外ボランティアをしていて、その後に大学で何かを学ぼうと思ったんだけど、この学部を選んだ理由は特にななかったの。まずは何かをという感じ。そう何かを学んでみたかった。そしてゲーテインスティトゥートで働きながら大学で勉強した。

とまー、わたしはいろんな周り道をしたけど、これが良かった!

二年間ロシアにいた時はロバート•ボッシュ (Robert-Bosch,ドイツの家電大手) 奨学金をもらうことができて、いろんなプロジェクトをしたの。その後ドイツに戻ってからも、イノベーションプロジェクトとして引き続きロバート•ボッシュから奨学金をもらうことができたわ!そして、次のプロジェクトとしてここFriedenskreisでプロジェクトをやることになった。
 
 
 

《あなたの企画をやっているの?》
わたしの企画とその目標は、幼稚園を中心に子どもの親と幼稚園の先生の間のコミュニケーションが円滑にできるような人材を確保しておくことなの。つまり、もしある親がドイツ語を話せなかったとしたら、その時にその確保している人材にコミュニケーションにおいて仲介役をやってもらうなどということ。これは言葉というよりも、幼稚園のコンセプトとか先生の考えについて保護者が勘違いや間違いが無いように、そして幼稚園にそういったコミュニケーション不足における争いを無くしていきたいというものよ。
 
 
 
《あなたのここでの仕事は何ですか?》
いま説明したプロジェクトを大きくすること。そしてそのための補助金をもらってくるね。そして確保した人材にもワークショップや学ぶ場を提供できるようにしたいの。
2016年5月にこの企画が立ち上がってから、ザクセン•アンハルト州 (ハレのある州) にも、こういう言語での架け橋となるような人材プールが少しずつできてきているのよ!今はまだ安定していないから、それもまとめる動きをしたい。

 
 
《あなたのこの仕事に対する動機は何ですか?》
まずわたしは、この仕事が社会にとって重要だと思っているの。わたしは、ドイツ語の話せない人が社会の中に居て、その隙間や距離がとても気になるの。現代の教育学や社会学系の書籍に載っている研究結果を見ても、そういった人たちにはサポートが必要だとあるし、統合教育は社会においてとても重要だと思う。実際に社会的なレベルでサポートされるものだから、わたしもそれに対して貢献したいと思っているの。今の政治家や政治的な現実を見ると、統合教育というよりは避難民や移民にどのように“注意するべきか“ということが話し合われている。でも、それでは機能しないと思う。
言葉って、ある一方では当然のものだけど、反対にドイツ語を話せない人もいる。だから言葉は権力の道具にもなりうる。ハレの町には、たくさんの統合教育に関する企画や異文化交流のきっかけがあるんだけど、それでもまだまだ足りないと思うわ。“言葉“というのは後回しにされているわよね。

もう一つの動機とすれば、わたしがやっていることは市町村に補助されるべきでボランティアで補うべきではないと思うことかな。ボランティアは素敵なことだけど、それは一歩にすぎない。それ以上に大事なのは、全ての人が言葉を使ってしっかりと色々なものに関わっていけるようになるべきだと考えているわ。

三つ目の動機は実際の活動を通してわかったことなんだけど、“どれだけ勘違いや偏見があるのか”ということ。これはプロジェクトのなかでも同じことがいえるわ。言葉はもちろんのことだけど、一番大事なのはお互いの考えに耳を貸すことだと思う。これに関しては、わたしは重要だと思っているだけじゃなくて、とても興味を持っているの。たくさん話して関わっていく中で、そういった偏見やルサンチマンをなくしていくこと。わたしはそういったことにモチベーションを感じる。

 
 
 
《今の仕事に繋がった経験?》
とても小さな一歩が重なり合ったものではあるけれど、最初は反差別運動だったんだと思う。その活動を通して差別を無くしたり防止するというもので、その時にハレで企画された Hand in Hand というプロジェクトと出会った。それは3年間限定のものだったんだけど、"教育者が子どもたちとどうやってデモクラシーを学んだり多様性の中で価値を創っていくのか" というもの。わたしたちは全ての人が違うのだから、どうやって他の人とうまくやっていくのかということを最初に学ぶの。デモクラシーの基礎コンセプトとしても、それぞれが違うというのは前提にあるし、それに対する理解があれば差別のない社会を創っていけると思う。
当時わたしはこの Hand in Hand のプロジェクトで実習生をやって、初めて教育者とか幼稚園の人達と一緒に働いたわ。それが流れかな。
 

 
《この仕事で気に入っていること気に入らないこと》
今のわたしの立ち位置はパイオニアのようなもので、自分のやっていることを他の人に分かる様に“正当化“ することは難しい。これは骨が折れる。わたしは言語にまつわるサポートは大事だと思っている。10年後にはこのテーマについて話す人がもっとたくさん居るのが普通で、いろいろな言葉が話されていて…、そして外国語を学ぶことについてもっと配慮がなされていると想像しているわ。「言葉を学ぶのは無理だ」という人はたくさんいるけど、そういうハードルもなくなって欲しい。
そして、教育施設では言葉のコミュニケーションにおいての仲介役がいるという環境が普通になっているのが理想かな。これに関して難しいのは新しいことを始めることに対して疑いの目や反対行動をする人がいること。何か起きた時は、まず寛大に受け入れること。そして自由に活動できることで、ポジティブにやっていけることかな。あと言葉の仲介役との関わり合いもとても楽しくて、モチベーションが上がることの一つ。個人的にはワークショップをやることは気に入ってるわ。

あ、、、嫌いなのは、書類整理ね。笑

 
 
 
《この仕事を通して得た素敵な経験を教えてください。》
ある幼稚園に移民の子ども(その子どもはドイツ国籍)がいて、あるときから急に暴力的になったと、連絡があったの。その時はその親と先生と話たのだけれど、その子どもは“のど“に問題があって、親と母国語で会話できなくなったの。
それは一つの例なんだけど、そうやって対話する中で具体的な問題がはっきりと見えるの。それでその幼稚園がさらにコミュ二ティーに慣れたということかな。この言語仲介役の役割は、通訳ではなくてコミュニケーションを成立させることね。
 
 
 
《言葉を学ぶ楽しさとは?》
私自身、学校にいるときは外国語に全く興味がなかったし英語の授業が嫌いだった。それでも初めて海外に行った時に、言葉を話せることの重要性を学んだ。言葉が話せることによって助けも呼べるし、より多くの人とコミュニケーションがとれる。もちろんコミュニケーションのシステムに興味があって、実際は言葉以外のツールでもコミュニケーションはできるしね。
言葉についてだけど、わたしは言葉は別に正しい文法を使って話さなくてもいいと思っているの。大事なのは情報を与えることね。だからそのために絵を描いたり、笑ったり、インターネットという媒体を使ったり、ジェスチャーを試したりすること。そして言葉を話せない人や習っている人に対して、わかりやすい言葉を使ったり、難しく話さないこと。ルサンチマンなんて言葉は使っちゃダメね。笑 
 
 
 
《あなたにとって言葉とは?》
それはとても難しい質問で、一言で答えるのは簡単ではないわ。でも、言葉によって人を遠ざけることも出来るし、身近に引き寄せるできるわよね。
 
 
 《あなたこれからのプラン》
きっと5年後には他のことをやってるわね。今はわからないけど、おそらくドイツ以外のどこかの国でドイツ語を教えてるかな。今のようなパイオニアの様な立ち場は嫌だな。でも毎日事務所に行って、座っているのはもっと嫌だ。 プライベートは、、、今パートナーはいるけど結婚はしないかな。もしするなら税金対策のために。ドイツは結婚するかしないかで税金支払いの差があるからねぇ。結婚というか、わたしは固定されるのは嫌だなー。 30歳になったらそういう結婚とか子どもに対する希望が急に芽生えると思ったけど、まだみたい。あとは、今年の12月にインドネシアのカリマンタにあるジャングルに行く予定!友達が働いているからの。
 

 
《あなたにとって幸せとは何ですか? 》
羊のシェルマに聞いて!
(ということでドイツの絵本を紹介してもらいました)
 
 
 
 


《ベンゾウの一言、終わりに変えて》
彼女はロシアで大学で働いていたと言うが街には川があってそこを挟んで向こう側には中国という。このインタビュー記事には書かなかったが、そこでの体験やプロジェクトは彼女が自分で補助金を集めた経験が聞けたのはとても貴重だった。
 

世界はでかい。 


この三十路インタビューについて→https://note.mu/kosokosolife/n/n6d359d08e7e0  

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