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タスマニアのパブ 最後の出勤

今日はTwitterでいいねが100超えしたこのツイートのお店の最終出勤日。

時給が高かったせいか、いいねがどんどん押されていく。1時間で50いいねになった時は、かなり焦った笑
でも、このお店の本当の良さは時給じゃないんだよと伝えたくて、久々にnoteを書くことにした。

ちなみに、なぜ私が辞めるのかはこういう経緯。


私がお世話になったのはタスマニアの田舎にある小さなローカルパブ。パブ・バー・アルコールショップの3つが併設されている地元の人も、観光客もくるお店だ。

オーナーは、おばあちゃん。カールがかかった明るいブロンドヘアー。いつもにこにこやさしく微笑んでいる。口癖は「Good !」。私がこの店で一番最初に会ったのも、仕事をくれたのも彼女だ。

いつも仕事が終盤に差し掛かると、従業員みんなに「夕飯(まかない)はいるかい?」と聞いてくれる。仕事が長くなった日にはビールを持たせてくれたり、甘いものが大好きで一緒にアイスクリームを食べたり。牡蠣やホタテ入りカレーをくれた日もあった。

私はただの皿洗いなのに、そんな末端にもまるで孫のように気にかけてくれる。だから仕事をしているつもりでも、おばあちゃん家に行く感覚だった。
どんな人生を歩んだら、こんなに優しい人になるんだろう。将来は、彼女みたいに優しいおばあちゃんになりたい。

キッチンメンバーは私を含めて5人。

絵に描いたような肝っ玉母さんのメインシェフ。この街に生まれた時から住んでいて、今は2人の娘がいる。本当にお母さんみたいで安心感があった。お嬢さんがコロナにかかったようで、2週間前から会えていない。それが少し残念。

メインシェフと同じくらい気が強いけど、とても優しく、ユーモアたっぷりのセカンドシェフ。よく古い曲を歌っている。静かなのは嫌いらしい。まかないをいつの間にか用意してくれる。

サラダを盛つけたり、料理を運ぶのはオーナーの娘婿さん。仕事が丁寧。丁寧すぎて、たまに動作が遅いと感じることもあるけど、いつも動じず慌てない。みんなの安全第一な人。

フィリピン出身のししょーも料理を運んだり、調理補助をしたり。仕事が終わりに差し掛かると大量に積まれた皿を片付けるのを手伝ってくれる。皿洗いと人生の先輩だから「ししょー」。私より背が低く、50歳には見えないくらい動作がかわいらしい。いつも仕事は丁寧で早い。毎晩私を家まで車で送ってくれた。帰りの車の中ししょーとよく雑談していたがなかなか悟ることも多かった。

ウェイターは3人。

オーダー取りは、メインシェフのお母さん。親子でこのお店に働いている。彼女は一見取っ付きにくそうだけど、そんなことはない。とてもユーモアたっぷりだ。ししょーが何かを「chicken box」と言い間違え、それを聞いた彼女が腰をふりふりダンスしながらチキンのマネをし始め、キッチン内で伝染。みんなでふりふりしていた時は本当にかわいかった。私が辞める時も一番に「あなた今日が最終日なのね、悲しいわ」と言ってくれたのは彼女だ。

ウェイトレスの女の子は、いつも笑顔で明るくてかわいい。挨拶すると満面の笑顔で応えてくれる。一度だけ彼女が開けたドアに思いっきりぶつかったら、2日間くらい腕が痺れていた。(このお店の女性たちは、ししょー以外体格がとても良い。)

ウェイターのお兄ちゃんは、まかないを食べ終わってお皿を返しにくる時「Thank you, girls ! Nice dinner.」と言ってくれるが、作ったのはシェフで、私は作っていないと毎度思ってた。よく話しかけてくれて、明るい人だ。

要はこのお店、みんな人が良い。このお店で働いていて、一度もキツく怒られたり、叱られたりすることはなかった。どんなに忙しくても、お互いを気遣って、笑って、みんなのびのびと働いていた。オーナーの人柄が店の雰囲気になっていた。

パブで働いていた期間はたった6週間。でも、もっと前からここにいた気がするのは、それだけ貢献できたということかな?笑

仕事も終わって帰るとき、オーナーから、「もしも、あなたが仕事を探していて、referee※が必要になったら、私の連絡先を書きなさい。あなたのrefereeに喜んでなるわ。とてもよく働いてくれて、ありがとう。」と言ってくれた。この人は、私の将来まで心配してくれてるのかと泣きそうになった。

※推薦人のこと。海外では過去の働きぶりなどを聞くために、採用時に求められることがある。

だからね、本当に辞めたくなかったんだよ。お金のためにタスマニアに来たけど、たとえ時給がこんなに高くなかったって、あなたのためになるなら、この店に来られるなら、ずっと働きたいと思っていたよ。

でも、あと1ヶ月もしたら、タスマニアの観光シーズンも終わり、ここは人手が必要なくなる。遅かれ早かれ、もうすぐお別れだ。オーストラリアに来てから20回近く引っ越しをして、その度に「別れ」を経験しているのに、未だに慣れない。いつもさみしくて、さみしくて仕方なくなる。

たとえ、それが自分で決めて行動していても。

最後のまかない

最後のまかないはオーナーが、「最後だから好きなものを何でも頼んで良いのよ」と言ってくれた。私は決められなくて困っていたら、セカンドシェフがオーブン焼きのサーモンをすすめてくれた。

そういえば、まかないにお皿が付いてる。食べ終わったお皿はお店に戻すのが決まり。お皿を返しに行かないと。


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