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【映画感想】お前はプロメアで絶望の炎を消火しろ

俺だ、コセン・ニンジャだ。
俺は飢えていた。
飢えたアニメを求めていた。
劇場のスクリーンで、大迫力にぐいぐい動く絵と耳の奥をぶん殴られるような音響にふさわしいアニメを。
劇場で予告編を見ても、なんかヒロインが主人公の名前を叫んだりする予告編ばかりで全然滾らない。
俺は飢えていた。
そんな時、YOUTUBEである映画の予告編を見た。
パワードスーツ!消火活動!人命救助!悪っぽい発火能力者とタイマンバトル!
独自路線を突っ走り、これが俺たちの答えだ!と叩きつけてくるような、そんな予告編だった。
何の作品か分かるか?そう、プロメアだ。
心に火が点いた俺は、プロメアを見てきた。
今日はプロメアについて話そう。
なお、俺はトリガー社からドーナツの箱やガロの前日譚ムービーの視聴権(劇場のおまけでついてくる)をもらったから書くんじゃない。
俺が書きたいから書くのだ。それを忘れるな。

今回はガチンコで行く

今回は、人物紹介とかあらすじとか、そういうのは書かない。
なぜなら書けないからだ。
書こうとすると、本能がマヒし、ただの説明文。小学生の読書感想文みたいになってしまう。夏休みの終わり際にイヤイヤ書いたあれだ。
そこで、好きなように感想を語りまくることにした。
ネタばれとか気にするなら今すぐ映画館に行け。今だ。

まず、冒頭。満員電車に苦しめられてる男とか、車の渋滞でイライラする運転手とか、夫に捨てられた女とかが、突然火を吐き、街を焼き尽くす。
ニュースキャスターは人類が半分死んだとか言ってるし、いきなりヤバいことになっている。
人間のマイナスエネルギーが炎と同調し、それが爆発したのだ。
ここで、俺はkiller7のヘヴンスマイルを思い出した。
あいつらは人工的に作られたテロ兵器だが、こっちは天然のミュータント、『バーニッシュ』だ。
バーニッシュに変貌した一般的な人間がテロを引き起こせる存在になり、市民の平和は脅かされ、生活もままならない。
そんなハードコアな世界。それがプロメアの世界だ。
ここで、俺はメキシコを思った。麻薬や組織の縄張り争いで日常の中で銃弾が飛び交う国。
犠牲になるのは、いつも無力な市民だ。それはプロメアでも変わらない。

そして、オープニング戦闘。
バーニングレスキューがとんでもギミック満載の消防車で出動する。
パワードスーツで火を消し止めたり、落盤する天井をガシェットで押しとどめたりする。
この辺り、かなりアイデアが詰まっていて面白かった。
パワードスーツは戦闘するもの、という固定概念をかなりぶち壊してくれた。
この映画はただドンパチするだけじゃないぜ。と教えてくれるようでもあった。
次に、主人公のガロと敵組織のリーダー・リオの戦闘だ。
ガロは江戸時代の火消し組を連想させるパワードスーツで、リオはライダースーツを思わせる超能力由来の外骨格で、ぶつかりあう。
ビルから飛び降りたり(BGMの変調がすごい)、壁を駆け上ったり、無駄に剣をくるくるさせたり、最後はバーニングレスキューのチームワークで勝ったり。
そして、捕らえられたリオはいかにも悪役なヴァルカン大佐に連行される。

ここまでが序盤だ。そう、序盤だ。
たしか10分か、15分か。そのくらいだったはずだ。ものすごい質量だった。
もちろん、観客を引き込むための最大出力がここで使われているし、あとのパートはラストバトルに至るまでの伏線とかを張っていく流れだから、かなりアクションは控えめになる。差別迫害されるバーニッシュたち、ガロの過去、徐々に明かされる陰謀、アイナと姉の家族愛。そういったものだ。
そして、ラストバトル。
超カッコいいガロデリオン、敵巨大ロボ、撃ち出されるパイルバンカー、格闘、格闘、超巨大ビーム、ドリル、人工呼吸、地球和太鼓、太陽系完全燃焼。
……あとは実際に見てくれ。

もちろん欠点がなかったわけじゃない。
バーニングレスキュー隊の面々の描写が足りなかったようにも思えるし、中盤辺りで少しぐだついた部分はある。
だが、バーニングレスキュー隊の描写を完全にやるのは2クールくらいの贅沢な時間で放送できるアニメとかの特権だし、そこまで求めると話がとっちらかり、空中分解する危険もある。
だから、その辺りは何とも言えない。
中盤辺りでぐだついたのも、世界観の根底に関する説明部分とかだし実際にガロは寝ていた。
俺は、一本の映画にかける設定の量をはるかにオーバーしてるのに、よく描き切ったと思っている。

話の中で、最初は他者を傷つけるだけの炎が、ラストでは人々を守り新たな物を創造する。
むしゃくしゃした行き場のない感情が創作の元になる、という事を皆さんも経験したことがあるのではないか。
誰かを傷つける力を昇華させ、素晴らしい何かを作り出せるんだ!
そういうメッセージがプロメアにあると思うし、こういう話の作り方はさすがトリガーだと思った。
(もしや消火と昇華のダブルミーニングなのではないか)

最後に

製作委員会制度、ろくに給料が払われないアニメーター、技術で追い上げてくる他国アニメ、呪詛だまりになった某アニメの二期。
俺はアニメに絶望していた。何がクールジャパンだ、何がアニメ大国だ。
黄金期の遺産を食いつぶしているだけではないか。
そんな心境を抱えながら、プロメアを見た。
素晴らしい作品だった。
絵とBGMのシンクロ、メッセージ性、火を扱った原初的なテーマ。

グリッドマンがこの先もどんどんやっていける熱量を出しながら、ワンクールで終わってしまったし、なんか最近のトリガーはトリガーを引き切れていない印象があった。
そんな印象をぶち壊し、俺のアニメに対する絶望すら完全燃焼してくれた。
ガロの火消し魂は、より大きな組織が都合のいいように使っていた。
リオの、燃やさなくては生きていけないという意思も、結局はより大きな存在に操られた結果だった。
そういう社会にありがちな入れ子構造でさえ、ぶち壊し、その遥か上を行く。
自由。ロックンロール、確かな強さがプロメアにある。
アニメの未来を切り開くような、希望に満ちた力があった。

プロメア。3Dと2Dが見事に合わさった傑作であり、とんでもないパワーに満ちたアニメだった。

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