チョコレートコスモス 著 恩田 陸

演劇を見たい。この本を読んだあと、さっそく近場で演劇をしているところがないかを探した。そのくらい、この本は舞台という場所に連れて行ってくれる。私は、全く舞台というものを見たことがなく、むしろ、なにかあれは縁起が過激で、誇張したような印象があるため、好きではない。しかし、この本を読むとぜひ、1回演劇というのを見て、この小説にでてくるような天才を肌で感じたいと思った。

 話の内容的には、やはり人間的な響子に感情移入してしまう。あらかじめ決められたような家庭で育ちながらも、その中で不安や嫉妬と人間の憎らしい感情がぽっと出てくる。あまりに人間的であり、高貴な人間とは思えないような感情の表し方が非常に良かった。多分、テレビの中では高貴にふるまっているあの女優達も内面はこうなんだろうなと感じた。

 しかし、私はどうしても、最後の題名の回収だけは、納得できなかった。無理にあの回収の仕方をしなくても、十分良かったのではないか。むしろ、あそこだけは失速感を感じた。唐突にくる回収に私は戸惑った。違う読み方があるのであれば、ぜひ教えてほしい。

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