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90歳 一人暮らしの父への想い➁

車庫崩壊

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 例年以上に厳しい冬でした。

 離れて暮らしていると、地元新潟の降雪量・積雪量が気になってしまう。だから、冬は必ず毎日天気予報を見るのが習慣になっています。

 そう! 事件が起きる数日前も、実家に電話。今年(2021年)に入ってからも、相変わらず大雪が降る日が多く、私も心配になっていたのです。
 でも、父ちゃんは「雪降ろしをしたから大丈夫だ」そう言っていたので、ちょっと安心していました。

 あれは1月14日の夜のことでした。
「実家から聞いているとは思うけど、車庫が雪の重みで倒壊しかけてるよ。大丈夫?」
 友人の奥さんからLINEが届いていたんです。
「え、うそ?」
 突然の連絡がこんな内容でかなり驚きました。
 連絡してくれたのは、私の幼馴染で実家の隣に住んでいる同級生の奥さん。帰省の度に手土産を持参して挨拶行っていたら、子ども同士の年齢も近いし、意気投合!

 LINE交換もしたので、同級生より奥さんのほうが連絡しやすくなっていました。何かあると連絡して、実家の様子を見に行ってもらっていました。

 もっと詳しく聞きたかったけど、既に夜の11時を回っていたので、次の日の朝に隣のお宅に電話して状況を確認しました。

 なんでも、このまま何もしないと、雪の重みで車庫が道路の方にはみ出して道路を塞いでしまうとのこと。

こりゃ大変だー! なんとか早急に手を打たなければ……。

———そんなに大変なことが起きていたんだ…。

 車庫といっても、父ちゃんは10年以上前に自ら車は手放していたんだよね。

 だから、車庫は単なる物置と化していた。それでも、私が実家に帰ると、いつも父ちゃんは車庫と家を行き来して、楽しそうに何かしら作業をしてたんだ。
 風通しが良いんで、夏場は車庫の日陰を利用して、ゴザを敷いて昼寝したりも気持ちよさそうに過ごしていたんだ。

 車庫の中には、父ちゃん愛用の自転車、釣り道具、大工道具、スノーダンプ、私が昔使っていたスキー板、スノーボードなど、色々とガラクタ(?)が入っていた。
 父ちゃんは歳をとっても、体はきびきびと動くし、表情も生き生きしていた。そんな父ちゃんにとって、車庫はまるで子どもの秘密基地。愛着を感じてたんだよね。

 だから、どんな状況かいち早く知りたかった。なのに父ちゃんに何度電話しても繋がらなかった。

  まあまあ近くに住んでいる母方のいとこのお姉ちゃんに連絡をして、見に行ってもらうことにした。
 いとこのお姉ちゃんが実家に着いた、まさにその時、父ちゃんが雪の重みで崩壊しそうな車庫に入って、中のものを取ろうしていたらしい。

「おじちゃん! 車庫はいつ崩壊するかわからないから、ホント危ないよ…。中に入っちゃだめだよ!」電話の向こうから聞こえる声。いとこのお姉ちゃんが止めてくれて良かった。

 父ちゃんは崩壊寸前の車庫から愛用の自転車を出したかったらしい。父ちゃんの代わりに、いとこのお姉ちゃんが危険を顧みず、自転車を車庫から出してくれた。電話の向こうからも、お姉ちゃんが怪我することなく自転車を出せた状況が感じ取れた。

まずはひと安心。いやいや、そう呑気なことは言ってられない…。

 このままだと本当に危険なので、私が幼いころから知っている建設会社に、車庫の解体をお願いできるか早速電話したみた。父ちゃんには、「絶対に車庫に近づかないで」と、私からも電話を繋いでもらってお願いした。その数日後、なんとか作業を行ってもらった。取り急ぎ依頼した作業は、道路にはみ出ないようにしてもらうことでした。

 しかし、先方の手違いで、その数日後にまた業者がきて作業をしていたらしい。車庫の中に入っていたものをすべて処分され、撤去されていたのだ。
 これは本当にショック。車庫に入っていた父ちゃんの宝物がなくなり、父ちゃんにとっての楽しみが奪われた気がして、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
 ごめんね父ちゃん。電話で何度も何度も謝った。

 でも父ちゃんは、残念そうな声は出してたけど、決して私に対して怒ってはいなかった。

 父ちゃんは、昔からマイペースで、少し頑固なところがあった。
 器用か不器用かで言ったら不器用なのかもしれない。だけど、いつも人との繋がりを大切にして、みんなから愛されていたことを私は幼い頃から感じていた。
 認知症が進行中で、私も姉も近くにいない中でも、こうやって父ちゃんのことを支えてくれる人がいる。このように、近所の人や親戚の人の助けをいただきながら、それでも何とか一人暮らしをしてました。
 父ちゃんのことを支えてもらって本当に感謝しかない。みんなありがとう。

 続きはまた次回に書きます。お楽しみに!

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