私たちはまだ生きているから、あなたにも生きていてほしい
この前、僕は父に大きな手術を受けるように説得した。
周囲の医師たちは「当然その手術は受けるべきだ」という雰囲気だった。
医学的にはデメリットよりメリットの方が大きいと言わんばかりだった。
見立て通り、手術は無事成功し、今は父も回復しつつある。
よかった、よかった。
よかった?
もうすぐ米寿を迎える父はその手術を怖がっていた。
施術は5時間以上。
老いた身体を切った貼ったするような処置をなければならない。
一体、どうして僕ら家族は、ああも冷たく父を説得したのだろうか。
僕ら家族は「私たちはまだ生きているから、当然父にも生きていてほしい」とでも考えた、か。
そんな僕らは単に身勝手で残酷なのではないのか。
確かに父は延命できた。
回復にはしばらくかかるだろうが、おそらく年単位で僕らと過ごすことができるだろう。
ただ、僕はなぜあれほど残酷になれたのか、わからないでいる。
自分が愛するものを死なせないために、苦しめることを厭わなかったのではないかと。
同じようなことがもう一度あれば、今回と同じく、当人の気持ちを顧みず
「私たちはまだ生きているから、あなたにも生きていてほしい」
というのだろうか。
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