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みょうにち、七夕

 帰宅が22時を過ぎる読書会というのは新鮮だ。それも、金曜日の夜、華金を華金として嗜むことのできる人生を、まさか私が享受できるなんて。
 そんな読書会後の上気した気持ちのまま夜空をひとり仰いで帰路に着くのは、最高の贅沢だ。きっとこんな感覚を味わえるのは、人生でもそう多くは訪れないだろう。私はきっと、いまプリンで例えるなら、プリンの黄色い部分とカラメルソースが絶妙な具合に混ざり合い、「この味わいがベスト」といえる部分をスプーンで掬って口に運んでいる最中といえるだろう。

 アングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラアングラ。


 閑話休題。読書会の余韻は余韻として。ここまで。いや、なにも読書会そのものの楽しさを否定するつもりはない。私の文章がいつになく「衒い」が抜けきれていないのは、そう、これを外で書いているからだ。なるべく人気のない価格帯の安価なコーヒーチェーン店の隅だ。それでも衒いが抜けきらないのは、卑小な私らしくていい。だが私が今から取っ組み合いを開始しようとしていることは、昨日の朝九時から心が爆撃され、荒廃したままの心をいまだ引き摺っていることについてであり、それは、こうして書き出さなければ、私が私を、月曜から再び職場という戦場に重たい身体を運ぶためには必要な作業であり、これをやっていなければ、私はこの問題に自分なりの蹴りを付けられないまま、有耶無耶になることだけは絶対に避けたい。逃さん。逃げないし、問題側も、逃げるな。さあ、喧嘩のはじまりだ。だから私はこうして無駄な(其の実無駄ではない)前口上を書きつけたのだ。私はいま眉間に皺を寄せている。パソコンを睨みつけている。その先にいるのは、これからお話する上司かもしれない──。


 朝九時。社内チャットツールを開く。上司からの通知が一件入っている。仕事のタスクかと思い、確認する。
 そこにはこんな文章が書かれてあった。

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※2024年7月13日。黒塗りにした。

 私は、非正規派遣社員だ。そんなことはどうでもいい。私は、直属のこの上司のことを尊敬も信頼もしているし、誰に対してもフランクで、人として尊敬できると思っていた。日々、成果を上げるために戦略を練り、それに応えたい一心で、私なりに私の持てる能力のすべてを、それは大した力添えではないかもしれないが、少しは数字としても貢献できていると思っていた。実際に目に見える成果もいくつかあった。それでもまだまだ、貢献したいと思った。この上司になら、惜しみなく自分の能力を捧げよう、定時で上がるけど。と思っていた。
 この文面は、ほとんど手を加えていない。もちろん秘匿情報は隠している。だが、派遣契約上、双方にとってNGを言い渡されるレッドカード級の禁忌事項だろう。それとわかっていて、敢えて書く。腹は括った。

 もちろん、この言葉を受け取ってから、一日、二日と考えた。そんなことをしていいのか、と。いっときの癇癪で、こうしたことを人目に触れる場所に書き置くことが、いいことなのか、悪いことなのか、大人として、客観的にどうなのか。考えに考えた。

 でも、許せなかった。悔しかった。これをこのニュアンスのまま、吐き出さなければ、私がぶち壊れると思った。いや、すでにぶち壊れている。これはその修繕作業だ。事後処理だ。私は体の一部がない感覚のまま、これを書いている。比喩ではない。いや、比喩だが、本当に身体の一部が欠損している感覚があるのだ。
 もしこのことが露見して、ペナルティ、社会的制裁を浴びるとしたら、まったく社会というのは企業というのは理不尽だなと憤りつつも、覚悟はできている。殺すなら殺せ。社会的に抹殺するならすればいい。立場とか、大人として社会人としてとか、そんな論理、いにさらせ。
 私が話しているのは、尊厳の話だ。踏みにじられた。私は、声を上げて泣きたいのに、それを抑圧しようとする自分の存在に、またさらに哀しくなった。
 私はまた、私を傷付けるのかと。

 いつもそうだ。これまで転々としてきたどこの職場に行ってもそう。私は、ひとから、上司、同僚、歳上、歳下問わず、足蹴にされてもよい存在、軽くあしらっても構わない存在として、ぞんざいに扱われてきた。

 この職場でも、人によってはそれを感じる。もちろん万人に好かれたいわけではない。ただ、互いに円滑に仕事を進めるには、コミュニケーションは大事だし、そのためなら道化だって演じる。私は無害な存在ですよ、力を貸せる範囲のことなら、引き受けますよ、と。私は、仕事をするチームの雰囲気が円滑にみながそれなりに居心地の良さを感じるためならなんでもした。遅れて入ってきたライターの派遣の子があまりに無口で、「そんなんやったら居心地悪うなるがな」「馴染めずに辞める」という自体は、会社とその子当人にとっても喜ばしくない事態だと判断し、私は彼女との疎通を試みた。いまでは私の取り成しなど知りもせず、それなりのポジションで、相変わらず無口に、しかしなぜかチームからは実力を認められる存在として、誰とでも仕事の話などは円滑に行いつつ、平穏に存在している。しかし、最近なぜか私は彼女から嫌われている。理由は知らない。話しかけすぎたことが仇になったのか。これは憶測だが彼女には自分の描く「自分像」があり、その彼女像からすると、私はその像を滲ませに来る、うっさいおっさん、と思われているのかもしれない。会話をはじめた当初、それなりに会話をしていたときとは反応がまるで違う。声音でわかる。なんかこいつ、嫌っとるわ。
 あー、良いですよ。もう慣れっこなんで。匙加減を繰り返し、小さじ2/3ほどの優しさや気遣いが、いつの間にか、そんなこと無かったことにされ、私よりその人が重用され、なぜかその反動なのか、気が付くとおれは低みに落ちている。いいように利用され踏み台にされ、おれは踏んでもいいからね、とみんな無意識に踏みつける。

 それが今回も、またしても今回も、限界は迎えていた。営業の一人に嫌われ、他部署のロン毛に嫌われ、ADHDの窓際おっさんにナメられ、派遣の後輩に嫌われる。
 そこに来て、上司からのこの文面である。もう私は本気で消えたいと思った。もうおれ、水蒸気でいいよ。って。

 なぜなのか、私は自己アピールなどせず、与えられた職務をこなし、女性にも無害であることを然りげ無くわからせ(実際無害なのだからアピる必要もないのだが)、加えて場をとりなすという役を、誰に頼まれたわけでもないのに執り行うが、その終着点はいつも、私を突き落として、みんなが和気あいあいとしたいいチームが完成している。 

 なにもこの上司を直接的に憎む気持ちが芽生えたとか、そんな次元の話ではない。

 ただ折れたのだ。心が。あーいいよ、言葉の綾、とか、ここには書いていない部分でちょっとおれの行動に不満があったからそれにも釘を刺そうと思ってたとか。そんな言い訳、聞きたくもない。

 言うたろか? おれの行動の不満に思われていたであろう部分。月一くらいで病欠が多い、昼の休憩時間が少し長い、合間の休憩が小刻みに多い、今回のように他部署の人間から言われたことを報告もなく作業している。こんなもん?

 答えるよ。月一くらいで病欠が多い。あー、悪いね。おれ、正直生きるの下手くそなんだわ。もうね、このサイクルで生きてんの。自分でもわからないけど、前日から弁当の作り置きの準備を万全にして、明日のために備えて遊びから早めに帰宅して月曜日に備える。英気を養う。仕事に行く気満々なんだよ。だけどね、いざ翌日目を覚ますと、心が臥せってるんだよ。自分でも理由はわからない。教えてほしいよ。昨日準備したせっかくの弁当が無駄になる虚しさ、あなたにわかる? ただめんどくさくて、サボりたくてサボってるわけじゃないんだよ。……というか、おれが月イチペースで病欠してしまう理由、派遣会社通して一度きちんと伝えましたよね。それで、そのくらい気にしなくてもよい、という回答を得られたはずだったのですが……ああ。あれですか。その前の週に、「次週から展開していきたいから」と仰っていたページ更新が、私が休んだことで実質一日遅れたことに苛立っていたというのもあるのでしょうね。機会損失の可能性にはもの凄く過敏でいらっしゃるようで。以前もそのようなことがありましたものね。あのときのあなたは、はっきり言って怖いです。まあ「責任」がおありになると自ら仰るくらいですから、そのくらい命に関わる大事なことなのでしょう。たしかに私とて責任を感じないわけではないですし、心苦しい思いもしつつやむ無く欠勤したわけですが。……そこに生じる責任は、果たして「派遣の分際」である私に求められて然るべきなのでしょうか?? そんな重要な作業を、私一人に一任している体制にも問題あるのではないでしょうか。……偉そうな口を利くな?と? そうでした。私は非正規のたかが「派遣の分際」でした。しかしですね、矛盾してることに気付いてます?

 昼の休憩時間が少し長い? あーわるいね。おれさ、餓鬼の頃から病名なしの奇病?に罹っててさ。名付けて「15分ジンクス」っておれは呼んでるんだけどね、食後十五分〜一時間以内に、便意を催す。ドクターショッピングは数しれず、どこにかかっても医者は「過敏性腸症候群ですね」と言ってみたり、「もう治ってますよ、ただ代謝がいいだけじゃないですか?」「便秘よりよくて結構結構!」「そんな症状、聞いたことないですね……」と言われる始末。医者もわからん変な病気のせいで、飯食ったあとの制御が効かず、結果的に休憩を1時間10分くらい取ってしまっていることに、時給働きである分際でなにしとんのやと思ってるんでしょう。知りませんよそんなこと。私の尻の穴に尋ねてください。もう正直おれだってね、この身体やってられんっすよ。常にトイレタイムを計算に入れたり、場所を確認したり、行動の逆算をしたりして生きる生活。この苦しみがあなたにわかりますか? あ、べつに理解してくれとか思わないですよむしろ理解されたくもない。じゃあ逆算して60分に収まるように行動しろと? 残念ながら私の腸は私に似て天邪鬼らしくてね。そういう計算をすると便意が思ったように来ず、結果的に60分経って仕事に戻ったタイミングを見計らって訪れる。便に振り回される人生。便を振りまきたかった。

 合間の休憩がいちいち長い? やってられっかよ。ひたすら真っ暗い画面のコード見て、無言でキーボードを叩き、気が付くと過集中しすぎて、身体が強張って首も凝っている。5分に満たない小休憩を一日のうちに2回取ることは、派遣の分際で許されないことですか。(プラスうんこ時間もあるので三回かな)それなら分単位で時給から引いてもらっていいっすよ。身体ぶっ壊れるくらいなら時給くらい痛くも痒くもないっす。

 他部署に言われた人間のことをきくな。 え? あの人といつも楽しそうに談笑してるじゃないですか。疎通とったうえでの指示かと思ってましたよ。思ってましたし、今回の指示も、前回の指示も、作業する前からそれをやることは知ってましたよね?? だって、あんなに近くで依頼受けてるとき話してましたし、それとなく話聞こえて知ってたでしょう? なんで後出しなんですか? めちゃくちゃ苦労して実装したあとに言うんですか? その苦労は知らないですよね? え。まさか苦労したって話も聞こえててあのメッセージ送ったんですか? 人間性やばいですね。なんというか、「The 男」って感じですね。いいと思いますよ。娘さんも優秀みたいですしね。まあ、こんなに頭の切れるいいお父上のお子なら当然か。

 とりあえず、おれに釘差しておきたかったんでしょう? 細々とした治してほしいところとか、行動規範みたいなものとか。いまいちど、理解させるために、今回のような手段を取ったのでしょう。


 それを伝える手段は、話し合い、ではないですか。私たち、大人ですし。

デザインが苦手なこと知っていて、そこに言及するの、正直姑息ですよ。言い換えますね。「デザインに無知なくせに、おれの意図を勝手に変えるな」

 〇〇さんの間接的な愚痴。え、なんで派遣の分際の分際にそんなこと漏らすんです? てか、意外と不満に思ってることあるんすね。あんなに仲良く話してるように見えるのに。男って実は陰湿ですもんね。知ってます知ってます。いやー懐かしいなあと思って。こういうのってなかなか見聞きできないですから。腹の中に抱えていて、行動はしてるんだけど、言葉にする人って珍しいですからね。魚拓、取らせていただきました。いいサンプルが取れました。ありがとうございます。

 死ぬ気で考えてる? 〇〇さんのこと言ってるようで、その言葉が回り回って私に刺さるように言ってますよね。姑息かつ高等すぎて渇いた笑いがでましたよ。あえて指示していないこと、があるのは正直そこまでは思い至っていなかったな、って思います。さすがだな、と素直に思いました。でも、今回のケースを利用して伝えるのって、もっとほかに方法なかったんですか。べつに反省を伴わなくとも伝えられる手段って、もっとありますよね? なんすか。そのゴキブリホイホイみたいなやり口。正直反吐が出ますね。

 他部署の人間(というか毎回特定のひとりなんだけど)の指示はあんま聞かなくていいからね〜、で、済む話じゃないですか。これって。なんすかこの見せしめ。晒し首。

 そして、誰も望んでないのよ、これ。ですか。 「みんな」を出してくるんですね。それ、本当に一人ひとり言ってたんですか? そもそも、今回手が加えられていたこと、あなた以外に知ってた人いるんですか? せいぜい仲良くしてる直属の部下一人でしょう。それも愚痴る感じでお話されたんでしょう。
これでおれが「責められていない」と感じると思いますか。これでダメージ受けない人間、いないと思いますよ。
 最後に予防線を張るようにして、「コサムくんは悪くないんだけどね〜」って。なんすか、それ。罪滅ぼしの文句にしか聞こえないですね。いや、自分に非がないことを言い添えた、って感じですね。
 どこからどう読んでも、遠回しにおれの行いを指摘してるじゃないですか。それもすんごいぶっ刺し方で。実装にかけた労力と時間、知ってます? え?工数分無駄になった、って? はは。さすがタクトを振られる方は考え方が違う。苦労して組んだコードを削除していく作業の悔しさ虚しさ想像できますか? 無駄な時間、無駄な作業、無駄な知恵絞り。デザイン完成したあとで、あ、それ作らなくていいんだわ。捨てといて〜、って言われて「はい、わかりました」ってあなた納得します?

 もうおれ、やめてもいいと思ってる。というか、続けられないよこんなの。だって、上司の顔見るたびに思うもん。何をって? 尊厳が保たれなかったという事実に対して、つまり上司という人の顔を見られない、とかではなく、現象と向き合わされるから。それが無理だから。いや別にこれだけ書き散らしたけど、実のところ、上司自身には驚くほど怒りとかないから。なんというかおれ、逆にスンとなってるというか、感情が無になってるんすわ。だから実際色々書きましたけど、なんの感慨もなく書いてますからね。あれです。熟年夫婦の妻が、もう夫に対して何とも思わないあれです。いちいちキレないでしょ? アレと同じ精神状態です。
 おれの代えが(そんなすぐには)利かない〜ってべんちゃらかなんかは知らないが事あるごとに言っていたが、(まあ個人的に全然そんなことなくて、おれ程度のスキルと頭持ったやつは腐るほどいる。ただ、都合よく利用できるかという意味ではおれみたいなやつはそんなにいないだろうが)派遣の女には席が嫌だと言ったその週末に、すぐに大幅な席替えを敢行し、取り計らうのに、おれが男だからか、この扱いの差はなんなん。やめます。ま、次がきちんと見つかるまでじっくり検討しつつ水面下で動かせてもらいますけどね。そのくらいしていいでしょ。別に波風立てるつもりなんかないっすよ。よかったすね。勝手におれ消えるんで。問題解決。

 口頭では一度だけ形式上頭を下げておいたが、文面では謝らなかった。おれは尊厳を蹂躙するような人間に、頭を下げるほど虐げられていい人間ではない。

っていう気持ちを、たったいま知れたのは、こうして書いたことによる功名だった。書くまでは、「やめたい」という発想なんてなかった。
 ほらね、だからこうやって人に愚痴るなり、書き起こして自分がどう感じているか、っていうことを確認、整理しなくちゃ、心は死んでしまう。私はもういやなの、心が死んでいくのを見たくない。


 ここから自宅。さっき帰宅中。若干これだけの書き殴りをしたあとというのもあってか、テンションがHighになっていた。それは否めない。そんな帰り道、またもや開けた場所で夜空を仰ぐ。あー、空には満天の星……ん、なんか、数、多くないか? え、てか夏の星ってこんなに数多かったか? てかてかてか、動いてないか蛇行してないか??

 こわい。こわすぎる。おれの目が狂ってしまったのか? やはり精神の病み方が思っている以上に深く、視えないものが視えているのか。待て待て。冷静になろう。最近ドローンで空になにがしかを描くイベントなどもやっていたりするではないか。今日はそのような日なのかもしれん。そういえば帰宅中にも浴衣姿の女性たちも見かけた。なんだ、お祭りか。……なんの?? Xで調べても誰もそんなことに言及している人はいない。そもそも、ドローンは飛ばすのに許可がいるし、なにせあんな高度まで飛ばすことなど可能なのだろうか。

 帰宅。さっき見たものに恐怖を覚えつつ、数少ない友人に連絡を取る。一人はフェスで京都にいるという。もうひとりは返信がない。確かめようがない。ここは読書会でお世話になっている大先輩にお尋ねしよう。

 少し離れた地域に住んでおられるので、いまは空全体が曇っていて見られないというお返事が。仔細に私が見たもののことを話すと、もう一度目を凝らして見てくださった。しかし空には光るものは私には見えないというお返事。

 これはやはり私の見間違えだろうと思い、もう一度外に出て空を見てみる。すると、こちらもさきほどの雲一つなかった景色とは違って、空全体を雲が覆っている。やっぱり見間違えだったのだな、と思い部屋に入ろうとしたとき、雲の切れ間を見つけた。そこに目を凝らしてみると、あった。3つほど、チロチロと光を放ちながら動いている「なにか」が。

 これで確信に変わったことが2つ。おそらく私の見間違えではないこと。雲の切れ間からそれが視えた、ということは、高度は雲よりも上にあるもの。つまりドローンではおそらくない。

 明日が七夕だということはこうして星について調べている折に初めて知った。それまで今日が7月6日だということはまったく知らなかった。天の川??? でも、方角もクソもないくらい、空に満遍なく点在して、それらが蠢いていたんだよな。七夕の空って、こんなに怪奇現象的な空模様だったの?? 足元ばかり見て生きてきたから知らなかっただけで、実はこんなすごいことになっていたのか?

 


 読書会の大先輩は、興味深いお話をしてくださった。ユングの著書に、こんなものがあるらしい。UFOについて真剣に研究していたなんて知らなかった。。
 そして、聞くところによると、本書では、精神状態、コンディションによっても見える見えないが変わるそうな。

 人はかなり不安な状態になると、円盤のモノを見て、心を落ち着かせようとするのではないか

 曼荼羅も、瞑想に使われたりしていて、円というのは、心を落ち着かせる道具なのかもしれない


「私には見えないだけであって、コサムさんには見えているのかもしれないですね」


 私は先輩に落ち込んだ話しは一言もしていない。それで唐突にメンタルの話が出てきたので、ちょっと驚いた。

 というか、ロマンがありすぎるよ、先輩。

「私は見えなかったけど、織姫さんと彦星さんがちゃんと出逢えますよーに、とお祈りしておきました」

 心が浄化された。

 いずれにせよ、今日のことは記録されていたほうがいいですよーと仰っていたので、そのまま書きつけた次第になった。


 なんと混沌とした記事か。醜さと美しさが、星のように散りばめられてしまった。そして今日はなんかすごく不思議な一日だった。

 私も柄にもなく、織姫と彦星が出逢えるように、お祈りしておこうと思った。


追記

あれから一週間。くだんのメッセージを寄越した上司は最初こそ引け目を感じていたのか、気を遣う感じで私に接してきたが、私がしゃんとした態度で、あくまでも一度きりさらりと謝っただけだったことが気に食わなかったのか、「つーか、なんでおれが気を遣わなあかんねん。上司やど!」と思い出したのか知らないが、どこか不機嫌な、これまで接したことのない種類の態度に変わった。子供っぽいね。それだとお互いに気まずいだろうというわけで、私が折れて、上司をあやしている。幼稚な人間だな。なんかもうどうでもいい。職場を変えるというのはとても労力のかかることだ。やめるために私がまた苦労しなきゃいけないこともなんだか理不尽だ。切りたいなら切りたいで、切ってくれればいいし、そんときはそれはそれでやめてもいい。別にここに骨を埋めるつもりはない。ほんとうは「骨を埋める」というほどではないけれど、「この上司なら、一緒に行けるとこまで付いて行ってもいいかな」なんて思ってたが、今となってはそんな気持ち、微塵もない。


 今回のことでわかったことがある。私はもう職場の空気やチーム内の人間たちへの配慮、上司へのリスペクトとフランクの狭間のような態度を作って接することを、今後金輪際やめようと思う。感謝されたいからやってたわけでは絶対にないし(むしろ気付かれるなんて絶対にいやだ)、職場はみなの人間関係がある程度潤滑な状態に保たれていることが、単に自分にとって居心地の良い場所になる条件みたいなものだと思ってたから、そうしていただけだ。
 それがこんなふうに、裏目に出てばかりなら、なにを貫く必要があるのか。私はただ、私の居場所を心地よくしたかっただけだ。それならばもう率先して動く理由など、どこにもない。

 私はまた一定の距離を置く自分に戻る。職場など知ったことか。あんなのはただ自分の仕事さえしていればいいのだ。

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