ドラマ「光る君へ」感想〜「昔の日本人像」=「武士」という先入観が自分にあったと気づかされた〜
大河ドラマ「光る君へ」を観ての感想です。
※ネタバレあり。
大河ドラマ「光る君へ」がスタートして現時点で3話まで放送されました。ドラマ感想、というより、このドラマを観て私自身気付かされたことを述べていきます。
なぜこんなにも「平安時代」が新鮮に映る?
一番初めに頭に浮かんだのは平安時代って義務教育で習ってるはずなのに全然見慣れない、知らないことばかりで、違和感がある、ということ。
例えば…
書物のタイプは「巻物」?
この時代は一般的な書物って現代でもメジャーな「冊子」じゃなく「巻物」なんだ、とか
風通しが良すぎる建物
襖が無い!貴族の屋敷でも無いものは無い!とか。
なので画面見てるだけでもいちいち発見や驚きがありました。それにしてもなぜこんなにも平安時代の描写に新鮮な感動を覚えるのか?
「武士」がメジャー過ぎて他の時代はよく分からない
それは「昔の日本人像」=「武士」という先入観が良くも悪くも自分の中に染み付いているからだろうと思えました。その像から外れる平安貴族達の描写がとても物珍しく思えるんだろう、と。
日本の歴史を語る上で、「武士」というモチーフは圧倒的なストーリー性、スケールの大きさ、迫力と華を携えています。60年の歴史があるNHK大河ドラマと言えど、平安時代を扱ったドラマは少数派で、戦国時代〜幕末の武家社会真っ只中の時代がやはり人気ですよね。「武家社会」が繰り返しエンタメの場で描かれた結果、読み手側の私達は「武士」以外の日本人の歴史に慣れ親しむ機会を知らず知らずのうちに失っていたんだなあと実感します。だから「武士」ではない、人々、社会の描写がこんなにも新鮮に映るんでしょう。
「武家社会」のイメージと比べたら?「光る君へ」の感想
特に「武士」に思い入れあるわけではないのですが…日本史の知識があまりない者としては「武家社会」と比較していくと色々気づきが出てきたのでその感想を。
1話のあのシーン
現時点の3話までの間で一番印象に残ったシーンは、主人公まひろの母:ちやはが殺害された場面。
殺害の実行犯である、藤原道兼の言動に戦慄した視聴者は多いでしょう。
例えば「武士」が誰かの命を奪う、暴力を行使する場合、「自分の殿や家を脅かす者を排除するため」に行う場合が多いでしょう。私利私欲で動くのではなく、あくまで自分が仕える、拠り所とするものに忠義を感じながら礼儀を重んじて生きていくのが武士の倫理だからです。
しかし、道兼の言動にこの「忠義」は見えません。自分が世界の中心で、それ以外は自分が気持ちよく過ごせるための道具でしかない、そんな傲慢な全能感が現れています。
ただ、この「全能感」は道兼一人が突然変異で備えたものではなく、当時の平安貴族に程度の差はあれ通じていた感覚と言えそうです。平安貴族は当時の全人口の1%もおらず、限られた身分、まさに上級国民でした。彼等が権力を総取りして利益を享受していた一方で、貴族以外の平民達は飢えや病で苦しむのが常だった様子。死体が道端に転がっていることも珍しくなかったとされます。つまり貴族と庶民では同じ人間とは思えないほどの格差が存在していたのです。史実を考慮すると目に余る道兼の目下の者への残酷な応対は当時としてはあり得る話だったのでしょう。1話終盤の殺害シーンは単純にセンセーショナルにしたかった、と言うわけでなく、平安貴族の生活環境、思考、平民達の暮らしぶりなど、平安時代の重要なエッセンスを端的に濃縮して表した重要な場面であったのではないかと思えます。
女性陣に負けない男性陣の華やかなファッション
平安時代といえば十二単衣!お姫様達の豪華絢爛たる衣装が真っ先に思い浮かびます。
ドラマを観ていると、男性達の衣装も女性陣に負けず色彩に溢れ華やかな印象を受けます。平安貴族の男性達が「武士」達とは違う文化、慣習を持つ人間なんだなあとここでも実感させられます。
どうでしょうか?いやいや武士でも結構カラフルな衣装あるよ!と言われそうですが…時代劇の男性が出てくるシーンでこんなに画面明るかったけ??と疑問に思ったので。
※画像はリンク先の動画から引用しています。
知ってるようでやっぱり知らない「平安時代」を知りたい
「武家社会」が本格的に成立していくのはちょうど「光る君へ」の時代以降の話。平安時代までにも武士を主体としない政権はあり、様々な身分、立場の人々がいてその積み重ねで「武士」が誕生し、ずっと延長線上に現代の私達があるはずです。その土台となった過去を知らないままでいるのは、今を生きる者として何とも寂しく思えました。「光る君へ」で、今まであまり通ってこなかった歴史に触れ合えたらと思います。
※画像は「光る君へ」公式YouTube画像から引用しています。
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