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「ゲーテ」考 05

(承前)

『ファウスト』の構想を
ゲーテが練り始めたのはかなり早く、
『ゲッツ・フォン・ゲルヒリンゲン』
を書いていた頃と言われている。

実際、1773年には
『ファウスト』の第一稿に取りかかり、
2年間という、
極めて短い期間でこれを完成させた。

この75年完成の『ファウスト』は現在、
『ウルファウスト』("Urfaust")
として知られている。


『ファウスト』についてはその後、
20年近くも執筆を中断していたが、
彼が1786年に行ったイタリア旅行では
『エグモント』『タッソー』といった
作品の書きかけ原稿と一緒に
『ファウスト』と表題された原稿を
鞄に詰めて持っていたそうだ。

筆こそ入れてはいないが、
いつも心のどこかで
この作品のことを気に留め、
構想を温めていたのではないかと
私は推測する。


1797年、
いよいよ満を期して
『ファウスト』の執筆に取り掛かったゲーテは、
9年の歳月をかけ、
1806年に第1部を完成させる。

そして、
第2部の完成を見るのは
それから更に25年の後、
すなわち
ゲーテが亡くなる前年の
1831年の事である。

ゲーテにとって『ファウスト』は
文字通りのライフワークであった。

(続)

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