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「杖」

オペラの舞台では
役によって
さまざまな杖が登場する。

老人や老婆が持つ杖。

ダンディな紳士が
小脇に抱えるステッキ。

負傷した兵士の
体を支える松葉杖。

司祭が手にする祭祀用の杖。

その原型である
牧童が羊を追うのに
用いた杖もある。


身の丈を超える杖もあれば
菜箸くらいの小さな杖もある。
形も用途も様々だ。

老人の杖や松葉杖などは
今の社会でも
普通に使われている身近なもの。
舞台で小道具として使う時も
それほど難しくはない。

逆に
夜会に集う紳士が
手にするステッキは
身を支えるものではなく
ダンディを装うための小道具。
それだけに
持ち方にもこだわる必要がある。

気負うことなく
自然体で、かつ
手に持つその姿が
様(さま)になるよう振舞うには
逆にしっかりと意識し
普段から練習しておく必要がある。

(19世紀のダンディ諸氏も
 無造作に杖を手にしていた訳ではない。
 無造作に見えるよう鏡の前で
 人知れず練習していたのだ)

手に持つ小道具は
上手く扱うならば
演技の幅を広げ
演じる役の性格や
気質などの特徴、
心の変化すらも
そのしぐさで表現し
観客に伝えることができる。

・・・失敗すると
手に持っている小道具を
文字通り持て余すようになるけどね・・・


自分が演じる役には
どのような設定がなされているのか。

どのようなコスチュームで、
どのような小道具を持って、
舞台の上で
役を演じることになるのか。

そうした情報は
早目に知っておいた方がいい。

楽譜の譜読みをしている時でも
その衣装をつけての演奏
その小道具をもっての演技を
イメージしながら練習できるし、
そうしたイメージを温めておくことは
実際に立ち稽古に入った時
演出家の要求に応えるための
自分の引出しのひとつとして
確実に役に立つ。

さて、あなたは
与えられた小道具の杖を
どのように使います・・・?

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