【『孤狼の血 LEVEL2』評論/映画評論家・北川れい子】
「孤狼の血 LEVEL2」讃歌
《男たちの血まみれお伽噺に酔う》
まず戯れ言で失礼。
コ・「孤狼の血」に近付くな
ロ・ロクデナシ野郎たちが大集合
ウ・嘘も裏切りも何でもあり
ノ・のたうち回って死ぬ奴も
チ・血が迸る映画に近付くな
う-ん、これではまるでスブラッタホラーの宣伝惹句。あらためてもう一度。
コ・こいつらみんなヤバすぎる
ロ・路地の裏側は男のリング
ウ・運だけでは生き残れない
ノ・のぼせた野郎に明日はなし
チ・超絶ノワール劇に血が騒ぐ
お粗末でした。
それにしても危ない男たちの、善悪を超えたク-ルな熱気と殺気が目まぐるしく交錯する「孤狼の血 LEVEL2 」は、誰にともなくザマアミロ!と言いたくなる傑作だ。
前作で惨殺されたマル暴刑事のガミさんこと大上(役所広司)の唯一の
遺品、ジッポのライターでタバコに火をつける日岡刑事役・松坂桃李のどこか冷たいふてぶてしさ。
当初は、乱暴な捜査を続けるガミさんを内偵するために、県警本部から密かに派遣されたエリート刑事だったが、ガミさんの死から3年後、いまやヤクザ組織と裏で繋がる危ない刑事に。署内の悪い噂にも平然。
そんな時、前作で親分を殺された冷酷無比の上林が刑務所から出所、大胆不敵、大っぴらな血の粛清を始めるのだが、その手口の残忍さ、映画史に残りそうなほど。ただ観ていてあまり恐怖感はわかないのは、じわじわしたリアルな演出ではないからだろう。白石監督の一気に押していく演出は、妙な後腐れがない。
上林役の鈴木亮平の躊躇なしの暴力演技も、恐怖より、つい見とれ。
けれどもこの刑事サスペンスで最も汚くズル賢いのは県警で、どうも
彼らの標的は、狂犬・上林ではなく日岡を追い詰め、告発するけと!
そんな状況の中、日岡と上林はついに命を張り合うのだが、善悪を超えた彼らの死闘は、危ない男たちのお伽噺に近く、コロナ禍のいまだからこそ血が騒ぐ。
白石監督とスタッフ、そしてこの映画に出演した全ての俳優たちに、熱い拍手を送りたい。