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【『孤狼の血 LEVEL2』評論/映画評論家・秋本鉄次】

『撮れい、撮ったれい!』 「孤狼の血」シリーズの使命はアウトロー映画の血脈を今後も絶やさぬこと。

      
 『映画はアウトローを描いてこそ、じゃけえ』…広島の隣県で方言も似たような山口県生まれなので、この言い方をさせて頂きたい。『映画言うたら“刺激”じゃろうが』とも吠えてみたい。もう昔からの持論である。それがどうだ。今世紀に入ってから特に、銀幕のシャシンが、どうも“衛生消毒・温室栽培”されすぎて刺激度が急速に損なわれた。大袈裟に言えば“映画の危機”である。

 そんな中、平成もそろそろ終わろうか、という2018年に、干天の慈雨のように突如現れたのが「孤狼の血」だった。昭和を熱狂させた、かの「仁義なき戦い」シリーズを彷彿とさせるような極上で濃密な“刺激”がそこに甦り、私は文句ナシにこの年のベストワンに推したものだ。しかし、同時に一抹の不安も感じた。社会現象になるほどの大ヒットしたわけではない。せっかくのこの刺激が単発花火の徒花で終わるのか、と。待望のシリーズ化を待つ間に令和を迎え、1年、2年と過ぎ、コロナ禍となって久しい。やはり、後に続かないのか…と諦めかけた矢先、“反社”の男たちを主人公にその過去・現在を描いた映画が連打された。20年12月12日「無頼」公開、21年1月29日「ヤクザと家族 The Family」公開、21年2月11日「すばらしき世界」公開…そして、満を持して、21年8月20日「孤狼の血 LEVEL2」公開! 番外篇的なところも「仁義なき戦い」の2作目“広島死闘篇”を想起させ、第1作に比肩するほどの沸騰感に酔った。これらの作品群は決して偶然の産物ではなく、心ある映画人たちの強烈な意志による必然だろう。

 今世紀になってからこれほど短期間に“ヤクザ映画(異論もあろうが、私はこの呼称が馴染むので敢えて使う)”が群れとなったことはあるまい。久しぶりに血なまぐさいイイ風が吹いてきやがった。こうこなくちゃヨ…と私はほくそ笑むのである。「仁義~」を約1年で4本も撮ったあの頃とは違うとはいえ、「孤狼~」シリーズも1年1本、せめて2年に1本ぐらいは撮り続け、アウトロー映画の血脈を今後も絶やさぬこと。それが使命ではないか。すでに、柚月裕子原作は「孤狼の血」以降、一足先に「凶犬の眼」などシリーズ化されているではないか。最後に「仁義~」のキャッチ風に、熱いエールを送りたい。

 タマ(原作)はまだ残っとるがよう。撮れい! 撮ったれい!