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【『孤狼の血 LEVEL2』評論/ライター・ 藤木TDC】

マル暴刑事とヤクネタやくざの激突! 現在進行形の暴力映画


「狐狼の血LEVEL2」は70年代東映ヤクザ映画のオールドファンを間違いなくニヤリとさせる映画である。いや、むしろニヤケっぱなしといっていいかもしれない。

 前作は原作ありきだったのに対し、今回は原作にない創作的続編という自由な構成ゆえ、監督は配給会社東映の過去作品を完全に意識、70年代ネタ満載で俳優たちもみな楽しみながら撮られたであろう印象を受けた。
 モノクロ静止画&ナレーションでこれまでのあらましを復習、雨中の盛り場を手持ちカメラが駆け回り、切断した指を犬が食う。間違いなく「仁義なき戦い」シリーズにオマージュを捧げた場面・台詞も多数あり、吉田鋼太郎、中村梅雀の演技はあの名脇役を彷彿とさせ再会を懐かしむような幸福な気持ちになれる。舞台は広島カープが5年ぶりにリーグ優勝した1991年=平成3年だが、暴力団組どうしの抗争が始まると「広島は昭和に逆戻りじゃにゃあか…」など思わず吹きだす台詞も。ラストもまた深作欣二ファンに「おお!」と拍手させる徹底ぶりだ。

 一方で、これは2021年製のヤクザとマル暴刑事の映画であり、さまざまな社会的要請から70年代のように明らかな実録テイストをまとうのは不可能だ。そのためプロットはかなりフィクショナルに構築されている。そうした傾向は配役にも歴然と現れ、本作の軸になるのは松坂桃李と鈴木亮平の二人のイケメン俳優による壮絶な戦いだ。松坂桃李演じるマル暴として地元組織と癒着しながら生きる悪徳刑事は前作の優等生イメージを一変させていて驚く。いっぽう鈴木亮平は刑務所すら厄払いで追い出される武闘派ヤクネタやくざ。いつの時代でも周囲と協調できないヤクネタは実際にやくざ社会で生き残るのは難しい。ゆえに眉毛を抜いた鈴木が不気味に演じる最悪ヤクネタにリアリティはなく、映画をより劇画的な味にする反面、彼のキャラは韓国映画のような圧倒的バイオレンス演出に活かされる。その意味で本作は東映の歴史的作品に対するリスペクトを感じさせつつ、それらとは一線を画す現在形の暴力映画なのだと強く主張している。

 東映配給である点からすればビックリ仰天の○○と○○○が悪者にされているウイットの利いた設定など小ネタが各所にちりばめられ、140分を飽きさせない。暴力映画の新しい地平がここにある。