【『孤狼の血 LEVEL2』評論/映画ライター・よしひろまさみち】
孤狼2で自由に書いてOK!
という極楽のような場所はこちらですか?
『孤狼の血 LEVEL2』をたとえるなら、ヤバい幕の内弁当。この「ヤバい」は傷んでいるとかじゃなくて「旨すぎてどうしよう……震える」の最高レベル、ってことなのは、本編を観た人なら分かってもらえるわよね。
じゃ、なんで幕の内弁当なのか。幕の内弁当って、ちょっと古いスタイルだけど今も昔も定番で、白飯もあれば副菜もよりどりみどり。『孤狼~』もそうでしょ。ヤクザ映画は古い、と言われてはや20年ほど。古くは『仁義なき戦い』からだけど、その後のレンタルビデオ全盛期=東映Vシネマ全盛期には、実録ものとしてさんざん作られ、消費されてきたこのジャンル映画。その後も警察vs反社会勢力と、主人公を警察に変えて続いていたものの、もはやネタ切れしたと言われてもおかしくなかったわけで。
そこにきました、『孤狼』シリーズ! 食べたいものが詰まってる幕の内弁当同様、観たいものが詰まっている孤狼! ということで、本気で個人的なオシだけ好きに書きます。
なにより最高だったのは、かたせ梨乃姐さんの使い方よ。かつての極妻を、極妻役でかつてのようではない見せ方をしてくれるなんて、孤狼でしか実現しなかったんじゃない? あのラストったら……あっけないながらも、フラグが立ってないところに地獄あり、っていう孤狼の良さが一番うまく表現されてたシーンだと思うのよ。あぁ、あのシーンだけでもおかわりの価値あり。
そして、なんといっても白石監督のバランス感覚がギラギラ冴え渡ってることが、このシリーズには不可欠。役者(というより事務所?)への忖度を感じさせず、観せたいものを完璧な形で魅せることだけにこだわったこと。そこに、「とはいえ、今って2020年代じゃん、令和じゃん」と監督の声が聞こえてきそうな、絶妙なコンプライアンス意識が加わってるのがいいのよ~。昭和~平成初期の狂乱をそのまま見せるなら、ドキュメンタリーで結構。それを今のバランス感覚でやると、将来的にこのジャンルが生き生きと根付いていくことを見据えてやってるとしか思えないの~。はちゃめちゃやってるようでいて、じつは「守るところは守りましたよ」というのが孤狼最大の良さよ、マジ。じゃなかったら、昭和を知らない世代までがハマる作品にはならなかったものね。
これって、大枠の守るところは守って、中身は今の感覚にアップデート&お味改善っていう、幕の内弁当の歴史と同じな気がするのよ~。