60歳がくる!9
55にもなると、結婚やら出産やらのめでたいお知らせは激減し、訃報ばかりが届くようになる。子供のころテレビや映画で活躍していたスターもどんどん鬼籍に入る。当たり前だ。俺の先輩はもうみんな60代、70代の立派な老人。同世代でも体を壊して早くいってしまうやつもいる。別に積極的に連絡をとらずとも、会えるタイミングがあるなら、億劫がらずに足を運ぶ。これを実践している。
……にもかかわらず、一番身近な存在なのに、なかなか会いに行かない人がいる。母親だ。母は同じ路線で駅にして12個先に住んでいる。7年前に父が亡くなってからは2DKのアパートでひとり暮らしだ。83歳の後期高齢者。ザ・独居老人である。でも、同じ都内、同じ路線といってもぶらりと訪れるにはけっこう遠い。ドアトゥドアで1時間はかかる。時間があっても、なかなか行く気にならない。最近の母親は偏屈で、話していてイライラしてしまうことも多い。これも足が遠のく原因だ。
幸い大きな病気もなく、ボケるわけでもなく、元気でいてくれているのだけど、かといって、5年後、10年後も今と同じというわけではないだろう。年間を通して近所の居酒屋の常連オヤジよりも、母との会話時間が少ないのはよろしくない。
酷暑が続くが、きょうは妹が姪を連れて実家へ遊びに行くというので便乗することにする。娘も保育園を早退させて顔を見せるつもりだ。残された時間は自分が思っている以上に少ない。あとから後悔しないように、会えるときに会っておく。みんなにも会いたいです。
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