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イギリスあるある‐その3

イギリスあるあるを考えながら散歩をすることがとても楽しくなってしまった。
来たばかりのことは「なんじゃこりゃー」と松田優作のようにのろしを上げていたあれやこれが、いつの間には「そんなもんよね」になっていることにも驚く。

ということで、もう少しおつき合いいただきたい。

家の中あるある

コンセントにスイッチ?

イギリスの家で謎なことはいろいろあるが、まずはコンセントにいちいちスイッチがついていることだろう。
これを入れ忘れると、充電したと思っていた携帯やパソコンがが電池切れになってびっくりする。

上部が赤かったら通電中

これは前のイギリスあるあるでも触れたイギリスの「火災への恐怖心」からきている法規制。
このスイッチによって個々のサーキットをおおもとから切断しておくことでリスクを下げるためなのだが、どんな場所でもなので、会社のブースであってもついている。

それにプラグがめちゃ大きい

同じような理由から、イギリスのプラグはとても大きい。

日本とアメリカは細長い二つの金属。
ヨーロッパの大陸の国もほとんどは丸い二つの金属。
けれど、イギリスだけは差込が三つある。おかげでめちゃくちゃ大きい。

よく見てみると、上の差込は縦長、そして下の二つは横長と方向が違う3つなことに気がつくだろう。こうやって差込の方向が違うとぐらつかないかららしい。(ほんとか?)
そして上の一つはアース、左側は0ボルトのニュートラルで、実は右側だけに電流が流れているのだ。

イギリスの電圧は230ボルト。
100ボルトの日本に比べると倍以上だ。
だから、特にモーターや熱を発する電化製品を日本から持ってきて変圧器なしに使おうとすると、途端にボンッと壊れる。
なので、最近日本で流行りの高級炊飯器も変圧器がなければ使えない。(どちらも持っていないけれど)

高い電圧にはどんなメリットがあるのか。
いろいろ考えたけれど、電気ケトルの沸く時間が圧倒的に短いくらいしか思いつかない。
そこにイギリス人のティータイムへの情熱が背景にある、のかどうかはわからないけれど。

ちなみに、人気テレビ番組「Xファクター」のオーディションにワンダイレクションという人気ボーイズグループがでていたとき。
電力会社はコマーシャルになる時間をテレビ局からきいておき、電気の供給を増やし停電を防いだのだとか。
なぜかというと、コマーシャルに入ったとたん、お茶を入れようとケトルのスイッチをいれる家庭がものすごい数だったから。

そのコンサバぶりは浴室にも

この火事をださない電気配線のルールは、「浴室にはコンセントの設置禁止」というところにも表れている。
だから、これだけ電動歯ブラシが全盛の時代に、どこの家にいっても充電を変な場所でしている。
あれ、コンセントがなくて不便なのはうちだけじゃないの?

だから、私が家を増築したとき、「浴室の鏡でドライヤーを使えるコンセントが欲しい」をしたいことリストにいれていた。

しかしそのもくろみは、同僚の友達であるビルダーのトム、そしてうちの増築を仕切ってくれたピーターによって打ち砕かれる。

「だめだよ。そんな違法なことしたら物件引き渡し書にサインできなくなるから」

要は漏電や感電のリスクの高さからきているんだろうが、日本やアメリカどころかヨーロッパのほかの国にだってないコンサバルール。

ところが、イギリス人たちにいわせると「どうだ、イギリスの電気とガスのルールは世界で一番安全なんだぞ、えっへん」となる。

いや、利便性を犠牲にしないで安全を達成してるんだったらすごいけど、これってただのビビりなんじゃ…。

そして謎に複雑な電球たち

引っ越してすぐ、部屋の電球が切れた。
本当なら外して同じものを買うべきところなんだろうけど、なんども「あ、そうだ電球買うんだった」と忘れて帰ってくることが多かったので、あてずっぽうで買っていけばいいやと電球コーナーにいった。

そして言葉をうしなう。

なんじゃこの種類の多さは!
それも、何ワットとか乳白色なのかをいってるのではない。
かっこいいおしゃれ系の特別な電球の話をしているのでもない。

普通の豆電球型。なのにソケットの部分がねじ巻きと2つピンが横に飛び出してるものがあるし、しかもその差込部分にそれぞれ太いのと細いのがあるのだ。

無駄に複雑。
まったく意味がわからない。
でも、これはきっと、古い住宅が長生きできてしまうことの弊害なのだと思う。
なので、電球を買う必要があったなら、かならず一回外してお店にもっていくことをお勧めする。

窓もバリエーション豊か

日本の窓がほとんど左右に開く窓で、たまに出窓があるくらいなのに対し、イギリスの窓は実にバラエティに富んでいる。

https://www.everest.co.uk/windows/types-of-windows/

私が最初に引っ越しした賃貸のフラットはすべて、リビングからお風呂場まで、サッシ(Sash)ウインドウだった。
ちなみに日本のような左右に動かす窓はスライディング(Sliding)ウインドウと呼ぶ。日本だと網戸とかも含めたアルミの窓枠のことをサッシと呼んでいるような気がするけれど、そこにはギャップがある。

イギリスの繁栄したヴィクトリア女王とエドワード王の時代、サッシウインドウはとても人気があった。
また、通りに面した窓をボウ(Bow)ウインドウや、ベイ(Bay)ウインドウにするのも大流行した。なので、今だに多くの街並みに残っている家の窓はこれらのスタイルが多い。

ただ、サッシウインドウはメンテナンスが大変な窓でもある。というのも17世紀以降のサッシ窓は両脇にロープが垂れ下がり、おもりの力を借りて楽に開閉ができるようになっている。しかし窓枠そのものが木製で経年変化とともにバランスを調節したり、膨張した木材を直したりしないと建てつけが悪くなるのだ。

ヒンジを使ったケースメント(Casement)ウインドウもよく使われている。特にすこし節約したい場合(共同住宅や、家の裏に面している窓)に多い。

私は今の家を購入した時、初めて、上の例にあるようなケースメントウインドウに出くわした。
面白いことに大きな窓を違う大きさに3分割し、1つははめ殺し、残り二つを傾けるように開けることができるもの。全面ガーッと開けることはできない謎めいた形に最初は戸惑ったけれど、空気を入れ替えるには充分なので、そのうち慣れてしまった。

ベイ(Bay)ウインドウは、外から見ると実にイギリスらしいスタイルである。
けれど、実際使ってみると、微妙な角度で3面の窓が設定されていて、カーテンのレールを簡単には渡せない。途中が蛇腹になっているレールも売っているのだけれど、カーテンが必ずそこにひっかかってしまいストレスがたまる。
しかも、たいていの場合、ベイウインドウの高さは3mほどあるので、引っかかったときには椅子や梯子に上らないとならない。不便極まりない。

鍵もいろいろ

私が家を買ったとき、大金の代わりに受け取ったものは薄っぺらい丸い頭の鍵が2つと、時代がかった真鍮色の細長い鍵が1つだった。
あまりに金額を反映していない感じがして、思わず膝から力が抜けたのを覚えている。

イメージとしてはこんな感じ。

友達の家の鍵を見ても大体似たような感じ。フラットの場合、建物に入る共通の玄関の鍵と、フラットそのもののための鍵が2種類という感じだ。

何世帯も住んでいるフラットの鍵の場合、下のような「スペシャリストキー」という作っている会社と番号が書かれていて、そこでしか鍵ベースが手に入らないもののこともある。つまり、簡単にスペアを作って、いつの間にか知らない人の手に渡る…ということを防ぐため。
だから、これをなくしてしまうと結構大変。作るのも大変だし値段も高い。

スペシャリストキーたち

そして、家のドアはオートロックなことが多い。

オートロックに気をつけろ

そう。オートロック。
つまり、鍵を持たないまま、たとえばごみを捨てようと外に出たときに、風でドアが閉まったら、それでおしまい。

私はこれまでに5回ほど、うっかりドアがバタンと閉じてしまい、締め出されて(ロックアウト)しまったことがある。

一回は、今の家に越してきてすぐのころ。瓶をリサイクル箱に出しに行ったとき。しかも、キッチンでお湯を沸かしていた。
まずい、このままでは火事を出してしまう。
しかたなく恥を忍んで、お隣の老夫婦の家へお願いした。だんなさんのマイケルはたぶん70歳近かったんじゃないかと思う。それでも「レディには無理だよ」といいながら、梯子を出してきて、うちの屋根をつたって庭におり、偶然換気のために開けてあった勝手口のドアから入り、内側からドアを開けてくれた。

ある時には、日本からだんなの学会でロンドンに来た附属の同級生との再会に興奮して玄関先まで出て行ったら、バタン!
どうしたもんかとオロオロしていたら、通りかかったハンサムな若者が声をかけてきた。
なんと、数軒先のドアの鍵の修理のためにきたロックスミス(鍵屋さん)だという。
「やり方は、公開できないからみちゃだめだよ」といいながら、カードのようなものでシャシャシャと作業してあっという間に開けてくれた。
「普通なら出張費用もいれて100ポンドコースだけど、たまたま通りかかったし、お茶をごちそうしてくれればいいよ」とニッコリされたので、玄関先に用意していたビスケットとお茶を持ってきて、友達と一緒にお礼をした。

ただ、あんなに簡単に開いちゃうなんて、とちょっとショックだったのも事実。複数の鍵をかけないと怖いんだと心にすりこまれた経験だった。
と、同時に、こんなによくロックアウトしちゃうなら対策が必要だと思い、同じエリアに住む3人の友達に合鍵を預かってもらった。
3重の保険だぞ。ふふん、これで、なにかあっても大丈夫。

そう思った矢先。家をでて、チューブの駅までいったら、財布も鍵も忘れていた。
携帯だけはあったけど、よりによって合鍵を渡したはずの3人すべてがロンドンにいなかった。
がーん。
結局、近所にある仲良しの和食屋さんのご夫婦のところに泣きついた。
20ポンドを貸してもらい、予定していた映画を観て(映画のチケットは持っていた)合鍵をもっている友達がロンドンに戻ってくるまで時間をつぶした。(これをきっかけに、携帯のお財布機能を使うことにした)

まあ、どんなロックアウト(鍵による締め出し)も、この時の経験に比べたらなんてことはない。

私だけがダメダメなわけじゃない。
友達のトレーシーは、ランニングに出かけ、気持ちよく5キロ走ったあと、鍵を忘れたと気づいたことがある。

しかもその日、今度は彼女の合鍵を預かっていた私が郊外に出かけてしまっていた。
携帯すら持たずにランニングをしていた彼女は、まず行きつけの美容院にいったらしい。そこから電話を借りてウェールズの実家に連絡。
そして実家からロンドンに住む妹のサマンサへ、さらにサマンサから私に電話がかかってきた。
知らせを受けて家に戻ってきた私は合鍵をつかんで、タンクトップに短パン姿で立ち尽くすトレーシーを救いにいった。
第一報から3時間後のことだった。

ほんとうに、イギリスあるあるなのである。

いただいたサポートは、ロンドンの保護猫活動に寄付させていただきます。ときどき我が家の猫にマグロを食べさせます。