ありきたりな女

今日、母親になった人と少し話す機会があって。

育児は大変ではないですか。と尋ねると「(大変だけど)子供の顔を見たら忘れちゃう。」と笑顔で返された。

私はそこに母親としての強かさとか、愛とか、私との程遠さとか、いろんなことを感じて、彼女に深く感心した。

私は今のところ母親というのになる度量も気力もないから、尚更彼女の存在を程遠く感じる。母親になるということは、相当の覚悟が必要なものだと思うから。

そういうふうに考えるようになったのは、ある歌がきっかけだった。椎名林檎の「ありきたりな女」という曲だ。

私は椎名林檎の曲でこの曲が二番目くらいに好きなのだけれど、この曲は「母親になる前の世界からの旅立ちと、子を持って“女”になること」を鮮明に表現した歌のように思っている。

失った世界への後悔と新たな世界への覚悟。その2つが描かれたとき、「母親」という存在への理解が深まるように思えた。

この歌を思い出す時、私は「母親」というものに思いを馳せる。母親になる前の、“あの素晴らしき世界”を失ってもなお、愛情という魔法を子に注ぐことのできる母親という存在。その強さと、脆さ。失った世界の先にいる彼女たちは、貴い。そんな風に思う。

もし、私がいつか母親になる時が来た時も、きっとこの歌が頭の中に流れてくる気がする。その時は、世界を失う前の後悔や覚悟をこの歌と一緒に味わえたらいいな。 



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