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「再婚生活 私のうつ闘病日記」 山本文緒 著を読んで

  このエッセイは、KindleUnlimited の文庫版にて読んだ。

 私自身は以前にも書いたが、がんの術後、病後うつになり、その時はなるべく大勢の人に会わず、やりたいことをして、特に治療はせずに普通に家事をこなして半年以上後に、立ち直った。多分私がうつとはそれほど自分も周囲も意識はせず、ただ身内はそっと心配してくれていたと思う。

 一方で私は20数年前に、うつできょうだいを亡くした経験がある。通院もしていたが、独り暮らしだったのと、大病を患ったのと、人生の大きな節目と仕事の責任が重なって起きた不幸な出来事だったと思う。きょうだいは、文緒さんと同じ生まれ年だった。

 うつ病は真面目な人がなる。文中ぐるぐるぐるぐると、何度も書いてあったけれど、本当にそんな感じで、きょうだいの最初のうつのときは、当時は夏で、大学生だった私はアルバイトもやめて、きょうだいにつきあったけれど、堂々巡りで自信をなくし、痩せ細り暗い顔をしていたのを思い出す。
 
 一度目はちょっとしたきっかけで治ったが、2度目はアウトだった。入院もしなかったし、仕事を休まなかったし。今思うと、やっぱり身近に文緒さんの王子みたいな人がついていたり、すぐに帰れる実家が近くにないと無理だったのかも。

 色んな思いが交錯しながらも、淡々と読み終えた。文緒さんは、治って本当に良かった。

 治った後、違う自分になったというのも分かる。身体のがんで、手術で変形してしまった私も、治ったけれど、前の自分とは違うと実感したから。

 病気は辛い。心の病はしんどい。11年も本当に良くしのいで、その後は仕事やプライベートを、きっと王子や仲間と楽しめたのかなぁと。人生は長く生きたから良いというものでもない。

 今さらながらに、文緒さんのご冥福をお祈りいたします。