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新人職員のための債権管理『超』基礎講座ver.2022 3日目 [強制徴収債権の滞納整理]

ごきげんいかがですか?
まっつんの「明日からできる債権回収」にようこそ。

今回のシリーズは,新人職員のための債権管理『超』基礎講座 です。これだけは知っておきたい基本中の基本を6回に分けておはなししますので,一緒に勉強していきましょう。

それでは3日目を始めたいと思います。
今日は,強制徴収債権の滞納整理 です。
強制徴収できる債権というと,地方税や,国民健康保険料,介護保険料,などがありましたよね
それらの債権に,滞納が発生した時,どのように対応しらよいでしょうか?早速,勉強していきましょう。

強制徴収に関する規定は,地方税法第373条のほか,それぞれの法律に規定があります。
地方税滞納処分の例とか,国税徴収の例とか 書かれているものになります。
これは,国税徴収法や地方税法の規定を包括的に準用して差し押さえを,しなければならない,という規定になっています。

そして,その差し押さえは,職員が直接おこなうこととなります。

これを,自力執行権と言います。

間違えないで欲しいのは,市町村長や県税所長などではない,ということです。徴収職員である,みなさんが,やらなければならない,のです。
この権限を与えられている職員のことを,徴税吏員,とか,滞納処分執行職員,と呼びます。
例えば,税部門への人事異動で辞令をもらった際に,辞令書に徴税吏員を命ずる,と書かれていると思います。

それでは,徴税吏員には,どのような権限があるのでしょうか?
滞納整理の第一歩は財産調査から,と言っても過言ではありません。
徴税吏員には,滞納者の財産を調べる権限が与えられています。
国税徴収法第141条 ですね。
この条文は覚えておく必要があります。

あまり多い事例ではないのですが,財産調査の際にその根拠について質問されることがありますので,その際に,きちんと答えられるようにしておきましょう。

次に,財産を調べてどうするのか? ということなのですが,調査により財産が判明した場合は,国税徴収法第47条のとおり,差し押さえをしなければなりません。この条文も覚えておいてください。

ものすごーーーーく,重要条文です。

滞納が発生した場合は,差し押さえの前段処理として,督促状を送らなければなりません。
その後,10日を経過した時までに納付がされなければ,いよいよ差し押さえとなります。

ところで,10日を経過した日,なんて,あまり効かないですよね。
これは,日数計算の法律用語みたいなもので,経過した日とか,経過する日なんてのがありますので,下段に書いてある「例」をよく確認しておいてください。

では,いざ差し押さえをするとして,どのようなものが,差し押さえの対象となるのでしょう。
預貯金や保険,給与,年金,不動産などは,実務上,差し押さえをする回数が多いのではないでしょうか。
これらの調査先は,金融機関や保険会社,勤務先などになりますので,初めて財産調査や差し押さえをするというかたは,近所の金融機関から,始めてみることを,オススメします。
対象財産の種類によって,調査の仕方や差し押さえの仕方が,少しずつ違いますので,これは個別に詳しく説明したいと思います。


ところで,みなさんは,捜索って,経験したことはありますか?
ここからは,捜索について,少しお話ししていきたいと思います。

捜索,については,国税徴収法第142条に,規定があります。
すぐにイメージするのは,警察なんかの家宅捜索,だと思うのですが,国税徴収法第142条の捜索が,大きく違う点は,捜索のための裁判所からの令状が不要,というところです。

徴収職員,徴税吏員も含みますが,必要と認めた時は,滞納者の自宅やその他必要な場所を捜索することができるのです。
もちろん,滞納者の同意や許可は,必要ありません。
強制的に家の中に踏み込むことができます。
そして,お金に変えられそうな財産を探して、差し押さえを行います。
電化製品や貴金属,案件によっては美術品なんかも,差し押さえして売却します。また,自営業者であれば,帳簿や取引先との契約書を探したりもします。
なので,捜索に関しては,財産調査の一環として行うこととなります。

あと、これも重要なのですが,これはあくまで滞納処分による捜索ですので,同じ税金でも脱税事件の捜索とは違います。
ごちゃまぜにしないでくださいね。
脱税の時は,裁判所の令状が必要です。

さて,ここまでの話で,捜索ってハードル高いかもって思ってしまったかもしれませんが,これらのポイントを押さえておけば,安心して捜索することができます。

まず,捜索で発見した財産は,その場で差し押さえしてください。
搬出して,事務所に持ち帰ってからではありませんので,間違えないでください。

次に,多くの場合は,滞納者の自宅を捜索することで,ほぼ目的を達成できるのですが,自宅以外の場所も捜索可能ということを,覚えておいてください。

こんな場所って捜索可能なの?って質問を受けることが,結構あります。

あっ。特殊関係人って,どういう人か知っていますか?
単刀直入にいうと,愛人。です。
ちなみに私は,愛人宅の捜索は,経験したことはありません。

そして,差し押さえした財産は,公売,という方法で売却します。
換価するって書いてますが,言い換えると,お金に替えるってことです。

最後は,捜索についての考え方なのですが,捜索に行ったけど財産が何もなかった。今回は失敗だ。
という話も,結構耳にします。
捜索の目的は,財産調査なので,調査の結果として財産がないということが判明したのであれば,それは成功だったと考えてください。

それでは,次に移ります。

仁義なき戦い

ちょっと物騒な感じもしますが,ここは簡単に説明します。

みなさんが差し押えをしようとしている滞納者が,他の市町村でも滞納があったとします。
そしたら,その市町村も差し押さえをしようとしますよね。
その場合,先に差し押さえを行った方が,全部取れる,という決まりになっています。

早い者勝ち。

ということを,覚えておいてください。

権利の上に眠るものは,保護に値せず。

ご存知のかたも多いと思いますが,有名な法格言です。
差し押さえ可能な財産が見つかった時は,モタモタせずに素早く差し押さえを行なってくださいね。

今日はココまでになります。
また次回も見てくださいね。

それではみなさん,ごきげんよう。

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