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カヌーで来た男 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

「カヌーで来た男」
 写真が佐藤秀明 片岡義男と野田知佑の対談
 初版1985年8月10日なので、私が29歳の時だ。39年前だ。
日本の自然は崩壊する。全ての川がコンクリートで塗り固められていく。日本人はブルドーザーを持ったサルだ。(サルは死ぬまで好きな事をやり続ける)そんなことを野田知佑さんが、片岡義男さんを相手に語る。
この当時、私も日本の自然の破壊を身近に感じていた。

 でも、これは世界的な事であり、89年にハワイのハマウナベイに入った時、サンゴもあり、私は魚達に囲まれて泳いでいた。流石アメリカと思っていた。その11年後に行ってみると珊瑚も減り、珍し魚は消えていた。

 沖縄も1985年に宮古島へトライアスロンの参加で初めて行ったの時、試合前、仲間3人で、町の豆腐屋と魚屋で買った豆腐とブダイの刺身を持ち、下地島へ船で渡った。
 真っ青な通り池と美しい海を見ながらビールを飲んでいた。たまに目の前でジェット機がタッチアンドゴーをする。
あの時間の止まったような沖縄は今はない。
それでもまだ「夜空には星が綺麗」だ。

ファルトボートにして欲しかった

シフティング・ベースライン・シンドローム
 2024年、知らない間に人間の価値感覚がおかしくなっていた。郊外の一戸建てさえコンクリートで塗り固めている。庭はいらないようだ。

 あの時代、環境問題を騒いでいた文化人は何処へ消えた。気づかなうちに自然環境はどんどん劣化し続けている。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド
 窓から、外壁塗装の営業という詐欺師が歩き回っているのをよく見た。最近、市の広報カーが注意喚起しているので、どこかへ消えたようだ。

 私は、長年ITインフラを設計、工事、施工管理をしていた。施工管理技術士1級も持っている。だから建築に関して多少の知識はある。

 そんな私が運悪く、この手の営業に庭で作業していたら捕まった。
話って直ぐにわかったが、ほぼ素人だ。一時期の新聞の営業と同じパターン。この後に悪者がやって来る。
話していて、全く建築関係の仕事に従事している人間の臭いがしない。

「あんた、元々、なにをやっていた?」
「アパレルですけど」40近いオッサン。正直だ。でも言うしかない。
「二度と来ないでくれ」

 もっと昔、床下にシロアリがいると言って、高額な床下ファンを営業する業者もあった。手を変え品を変えやってくる。ネズミ講と同じだ。

 私の頭には、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」村上春樹の本が頭に浮かぶ。
村上春樹さんの小説はこの頃が最高だった。
春樹嫌いの娘1もこの本だけは気に入っていた。

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

顔が見えない
 40年前は、窓を開けて生活が出来た。庭で作業も出来た。地域も今より木々や花に溢れて、土の臭い、水の臭いがした。そんな牧歌的な郊外生活も消えつつある。
椎名誠さんは、それに嫌気がさし、早々と利便性を求めて都心のマンションに引っ越している。

 近頃の新築の家では、皆が家に閉じこもっており、人の顔も滅多に見ない。見るのは道をうろうろしている怪しい営業だけだ。
 そんな時代の危機感を比喩して小説にしようと思ったけど、うまく出来そうにない。

 さて、「カヌーで来た男」に戻る。
写真の中には、カヌー犬ガクもいる。さらに驚いたことに三好礼子さんがいる。この時、28歳の三好礼子さん、壮年の野田さん、若い元気なガク。
熊本の男で、女の子好きの野田さん。やはり飲んでいる。

ガクだ。野田さん飲んでいる
亀山湖

 野田知佑さん、その愛犬ガク、三好礼子さん、素晴らしい写真を撮る佐藤秀明さん、知らない人は、私が何に感動しているのだと思うだろ。
片岡義男さんも知らない人がいるかも知れない。簡単に説明しておくけど、もし興味が湧いたらネットで検索して欲しい。

ハードボイルドな男達野田知佑、片岡義男、佐藤秀明
野田知佑さんはさすらいのカヌーイスト(自由人)
片岡義男さんは超有名なハードボイルドな小説家
佐藤秀明さんは海の中からサーフィンを初めて撮った自然相手の写真家 
犬のガクは野田知佑さんの過去最高のパートナー。
三好礼子さんは当時珍しい女性ライダー、ラリーリストでもあった。

三好さんラリースト時代
三好礼子 村山礼子時代もあった

温暖化
 男がカヌーで来た1985年と比べて、2024年夏、なんて暑い日が続くのだろう。それでも緑は減る。
里山はなくなり公園になるか、または省エネマンションが建つ。

 一戸建てからは庭が消え太陽光パネルが屋根に光る。野原、竹林、雑木林も整地されコンクリートで固められる。土が消えていく。
そして光合成も無くなり、CO2の土への固着もなくなる。その結果、生き物の原点となる小動物が消える。

 CO2削減と言っても、CO2は実際には地球上から減りも増えもしない、自然界に固着したCO2を空気中に取り出したままだから問題となる。

 CO2の削減がEVと太陽光発電だという。それは放出の削減で、吸収する自然を確保しないで、いったいどうするつもりなのだろう。
CO2問題は昔は環境保護がメインストリームだったはず。どうして、こんな勘違いした世界になったのだろう。

酸味がなく甘いプチポン トマト、酸味キツいブラックベリー

 土や木々、雑草が消えると、庭にいる小動物もドンドン消えていく。これほど自然教育にマイナスなことはない。

 カヌーで来た男は、2022年3月27日にこの世界から消える。
そして、世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドが残った。

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