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泳ぎ続けた果てに 本当に長い間泳いでいる

1983年 28歳 事始め
 28才でトライアスロンに出ようと思いたち、地元のスイミングスクールのマスターズコースへ入会する。
想像で、おっさん、おばさん達がちんたら泳いでいると思っていたら、その練習メニューに驚く、完全に体系化されていた。

 当時からスイミングスクールは子どものコーチングがしっかりしている。また大人のコーチングもかなり進歩的なものが多い。自由きままに我流で泳がせるのではなく、基礎から練習方法も含めて指導された。

 このスイミングスクール、入るまで全然知らなかったが、近隣で最強と言われるマスターズ選手が沢山いた。
25mプールは8コースを使い、スキル区分されており、各コースに1名以上コーチが付いた。

 年代もマスターと言いながら、17才もいる。平均すると30代前半くらいなので、練習中は殺気だっていた。
キックやスキル練習なんか真面にやったことないので、ともかく苦しい。泳ぎも、背泳ぎ、クロールから平泳ぎ、最後にバタフライとマスターしていく。

 練習コースを決めるため、月末に記録を取った。記録により泳ぐコースがステップアップする。
上級コースは100m個人メドレーのタイムで最低で1分40秒が切れないとだめだ。しかし上級コースでも、さらに区分があり、こんなタイムでは練習では地獄を見る。インターバルのサークルがまわれず、先頭に抜かされたりする。

  驚く事に練習は毎日ある。参加は任意だけど盛況だった。
私はここのスイミングスクールへ入るまで、自分では結構泳げると思っていたが、ただの素人だった。泳ぎ方、ターンや飛び込みの技術でタイムが簡単に縮まる。コーチングて凄いと思った。

2005年 49歳 家族で泳ぐ
 一時期、自分の子供達も含めて、5人がスイミングスクールに在籍していことがあったが、息子は中2で部活が忙しくなり辞めた。
娘1が小学校4年生でジュニアの選手となっていた。娘2は小学校1年生だが、すでに大会にも出ていた。
私はこの頃仕事が忙しく、マスター選手としては既に泳いでいなかった。
トライアスロンの為だけの練習だった。

2015年 60歳
 あれから32年、月日は流れ、あれほど盛況を呈していたこのスクールも、最近のスイム人気の低下か、はたまたスクール自体が廃れたのか、マスターズコースは10年前になくなった。寂しいことだ。
また少子化でスイミングスクールも閉鎖されるところが多くあった。
大人は、30代から40代の人達がほぼいなくなった。来るのはシニアだけだ。スイミングスクールを銭湯代わりにしているようだった。

しかし、まだトライアスロンとたまにOWS(オープンウォータースイム)に出続けている私には練習は必要だ。昔の練習メニュー(手抜きタイプ)で、フリー遊泳の契約で泳ぎ続けていた。

 そんなある日、Tさんと久しぶりに会った。
すでに70才を越えているはずだ。流石にもう引退だろうと思っていたら、更衣室で偶然お会いした。
「Tさん、久しぶりです。まだ泳いでいるんですか?」(馬鹿な問い)
「あたりまえだよ、だんだんライバルが減っていって、もうすぐ日本チャンピオンになれるよ、1500だけど」
「凄いな、俺、もう60ですよ」
「そうだろう、月日の経つのは早いやぁ、あの頃は、皆20代、30代。俺だってまだ40代だったんだから、皆さん元気で、楽しかったよ。じゃお先に、お互い頑張ろうね」

 Tさんは、私が30代の時、大きな壁となっていたおっさんだ。とにかく強い選手だった。マスターズ大会の勝負どころでは常に勝つ人だった。
Tさんはインターバル練習時、常に先頭を泳ぐ。これは相当きつい。私なんか、すぐに逃げて2,3番目について楽をする。たまに先頭を泳ぎなさいとTさんに言われ、後ろから煽られて苦しむ。 

 60才過ぎると、泳いでも、泳いでも記録は落ちる一方。スイム練習に対して全く動機付けが出来ない日々が続いていた。
しかし、Tさんの姿を見て少し力がわいてきた。
続けることで、人に影響を与えることはある。年取っても生き様があると格好いい。

過去の栄光
 整理を全くしてないので他にもあるはずだが、小さい頃の娘2が興味本位で取り出したことがあった。
 トライスロンの完走メダルも多いけど、俗に言うメダル(金とか銅)はマスターズスイムで稼いだもの。一つの大会で、個人種目が2レース、メドレーリレー、フリーリレーと出て入賞すればメダルラッシュだ。
 トロフィーはモトクロスの入賞のもの、モトクロスでは一度も優勝はない。しかし、娘にとっては、なんの価値もない自己満足の証だ。

2024年 67歳 そろそろお終り
 2021年に虚血性心疾患となり、回復はしたが、スイムは精々週1回程度となっている。
そして、トライアスロンも含めて無理をする試合には出られない。そうなると泳ぐ動機付けがない。健康のためだけなら水泳より楽しいこともある。
さて、どうするかと悩んでいる間にも、体力はどんどん落ちていく、その恐怖がアスリート老人にはある。そして人生の全てを練習に注ぎ込む。

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