【第12話】遠足
僕にとって小学校の頃の一番の楽しみは遠足だった。その日は給食ではなくお弁当、と言うだけで、もはや右に出る者がいない程、マズイ給食を食べさせられていたものだ。学校給食といえば脱脂粉乳(牛乳と呼ばれていたがとんでもない代物で鼻をつまんで飲んでいた)とおかずとコッペパン(これまたマズイ)が定番メニューであった。今にして思えば、とても成長盛りの子供達に食べさせる食事ではなかった。コッペパンなんかは本当にマズくて、僕は全部食べたことはほとんどなく、いつもランドセルに放り込んで帰りに捨てていた。給食を残すことはほぼ不可能で、先生が見張っている前で泣きながら食べさせられる子もいた程、マズかった。まるで拷問である。現代ならば人権問題にも起きられてしまうほどの問題として扱われそうな事件である。それに比べると母が作るお弁当は、給食とは比べ物にならない程本当に美味しかった。しかも、当時は高価だったバナナも遠足の日には持たせてくれた。
そんなスカスカの様な給食でもちゃんと血となり肉となり、僕らはスクスクと成長していった。
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〜シタール奏者伊藤公朗人生の反省文〜
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