読書記録②~2020年の恋人たち~
島本理生さんの「2020年の恋人たち」の読書記録です。
楽しい時もあった。助けられたことも。だけどもう、いらない。
僕自身、島本理生さんの作品を読むのはこれが初めてでした。
彼女の女性像がこれでもかというほど込められた力強い作品でした。
簡単なあらすじ
ワインバーを営んでいた母が、突然の事故死。落ち着く間もなく、店を引き継ぐかどうか、前原葵は選択を迫られる。同棲しているのに会話がない恋人の港、母の店の常連客だった幸村、店を手伝ってもらうことになった松尾、試飲会で知り合った瀬名、そして……。楽しいときもあった。助けられたことも。だけどもう、いらない。めまぐるしく動く日常と関係性のなかで、葵が選んだものと選ばなかったもの――。直木賞受賞後長篇第一作。
本帯より
感想
正直出てくる主人公も男性のほとんど嫌いでした。
ただ、それは作品が嫌いというわけではなく、だからこそ作品としてはとても魅力的で引き付けられるものでした。
主人公の女性・葵の強さ、そして弱さ、脆さ、複雑な感情。そして葵に言い寄る男性たち。
「どうして人は口では愛してるって言いながら、自分にだけ都合のいいことを人にやらせたがるんだろう?」
これがこの本を読んで最も印象に残ったセリフです。
僕がこの本の登場人物を好きになれなかったのは、彼らの恋愛観が僕の理想とかけ離れているからだと思った。でも同時に、きっと自分も似たようなものだと実感してしまったからだと思う。
また、最後のページで葵が思った
「してもしなくてもいいんのだ、恋なんて。誰に強いられることでもなく自分が望んだのならどちらだって。ましてや大切なものは一つじゃなくていい。」
は、作中で葵自身が思い、感じたことのすべて、この作品の集大成といえる内容でした。
総括
全体として、僕個人として共感できるものではなかった。
が、ものすごくリアルな「2020年の恋愛」が描かれていたと思います。
男性が読んでも、女性が読んでも考えさせられる一冊だと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?