言い訳をする店
「すいません」
私は、静かに沸騰するやかんのように声を出した。
「ご注文は」
いま風の髪型をした若い青年が、声を聞きつけてやってきた。しかし、彼の見当はずれな対応に私の中で鋭い音が響いたのを感じた。
「この料理に髪の毛が入り込んでいた。それだけじゃ無い、虫のようなモノも潰れていた。君たちはどうしてこんな得意げに店を出しているんだ」
「すいません。しかし、我々の厨房では徹底した衛生管理が行われていて…」
「そうかいそうかい。あくまで悪いのは、厨房から運んできて席に運ぶまで。ってことかい。しょうもない。」
「すいません。お代は結構ですので、いますぐ取り替えます。」
「当たり前だ。誰がこんなのに金を払うか。」
〜〜
「お客様。今回は2000円となります。」
先ほどの店員が何もなかったような爽やかな態度で話しかけてきた。
「ああ、いつも悪いね。人生上手くいかないと、どうにも明日が見えなくて。」
「お気をつけてお帰りください。」
愚痴をこぼすということは、愚痴を聞く人が必要不可欠である。
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