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禍話:面の向き

語り手のかぁなっきさんと同い年ぐらいのA君が、中学生の頃にB君の家に遊びに行った時に体験した、なんだかよくわからない話。

A君は中学に入ってから仲良くなったB君の家に、初めて遊びに行った。
B君のお母さんが
「A君、晩ごはんも食べてったら?」
「もう明日休みだし泊まっていけば?」
と歓迎してくれたので、そのままお泊まり会になった。
B君の部屋に一緒に雑魚寝するのかーとわくわくしていたら意外にも寝床は客間に通された。小さめの和室で、さながら旅館のような綺麗な部屋だった。
「なんだか申し訳ないね」
「うちはそういうことになってるから」

晩ごはんをご馳走になりゲームでたっぷり遊んで、23時ごろ例の客間で床に就いた。その客間には床の間があり、そこにお面が掛かっていた。A君は何のお面かわからなかったが能面のような女性のお面に見えた。

ひとつ気になったのが、お面の向きだ。
左側を下にして、横に掛かっている。
(かわった掛け方だな?)
と思ったが、特にわざわざB君に尋ねるまでもなく、それ以上は気にせずそのまま眠りについた。

夜中、寝ていたら揺さぶられた。
うっすら目を開けると、B君が揺さぶって起こしてきているのだが、お面をかぶっているようだ。暗い中で目を凝らすとお面の顎部分を上にしてさかさまにかぶっている。
A君は寝ぼけながら
「…お面、逆だよ?」
と言うも、
「これはこうするのが正しいんだよ。これだけは覚えていてほしいんだ。壁に掛ける時は横、被るときは顎が上じゃないとだめなんだ。覚えておいて。つまり頭頂部に当たる部分にね、…」
と、B君は枕元で長々とお面の向きについて、そして何故その向きなのかを解説していたが、A君は眠いのもあり適当に相槌を打って聞き流して、再び眠った。

翌朝。
B君一家とともに食卓を囲んで朝ごはんをいただいたあと、A君は帰り支度を済ませ玄関に向かった。
「急に泊めてもらってごはんまでありがとうございました」
「いいのよ~、いつでもおいで」
靴を履いて玄関を出るまで、B君一家は全員でお見送りしてくれた。
ずいぶんご丁寧に…と恐縮しているとふいにB君のお父さんが強めに
「忘れないでね!」
と言う。A君は何のことかわからず
「…はい?」
とあやふやな返事をすると、すかさず念を押された。

「お面のかぶり方!」

A君はわけもわからず、あいまいに返事をしてB君の家を後にしたが、帰宅後やっぱり不思議に思って親に
「お面ってなんか変わったかぶり方とかあるの?」と聞いてみるも
「なにそれ。無いよ」
と即答され、わからないまま話は終了した。


ちなみにこれはG県の話だそうだ。
調べてみても、どこにもそんな伝承は無い。



※この話はツイキャス「禍話」より、「面の向き」という話を文章にしたものです。(元祖!禍話 第十六夜  2022年8月13日)

禍話二次創作のガイドラインです。


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