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禍話リライト:外の読み上げ

A君が高校生の時、同級生のB君の家は学校のすぐ裏あたりにあった。
「お前いいなーギリまで寝てても間に合うじゃん!」
「いやよくないよ、学校で何かあったら用事頼まれたりするんだよ」
なるほど、良し悪しだな。それでも朝ゆっくりできるのはA君としては魅力的だった。

ある月曜日。
B君がどんよりとした表情で登校してきた。
「おはよー。ってB、どうしたの?」
話を聞いてみるとどうやら近所に変な奴がいるらしいと言う。B君の家の玄関にはインターホンがあるにもかかわらず、ドアをノックされるんだとか。夜の10時ぐらいまで、たまに来るらしい。
「おれはだいたい2階の部屋に居て気付かないんだけど……」
B君のお母さんは怖がって応じないようにしているそうだ。

そして昨日の日曜日。
B君のお父さんが仕事で不在のタイミングでコン、コンとノックされた。
「母親がこわいこわい言っててさ。親父がまだ帰ってなかったから、もしものためにとバット持って、おれがドアスコープのぞいたんだよ」
ところが真っ暗で見えない。
指でふさいでいるのか?
B君はそっとドアに耳を当てて外の様子をうかがった。

何かぼそぼそとしゃべっているのが聞こえた。
知らない男の声だ。
「……××田 〇雄、……△△山 □介、……」
ずっといろんな人の名前を立て続けにひたすら言っている。B君は頭の中で(人の名前……?そいつらがどうしたんだ?)と思ったと同時にフッと静かになる。

そして明らかにドアのこちら側に向けてはっきりと
「みんなじさつした」
と言った。

えっ!?と思いドアスコープをもう一度咄嗟に覗くと、もうすでにいなくなっていた。後から考えればいくらでもバットを振りかざして「テメエ!」と飛び出せたかもしれないが、その時はとにかく怖すぎて足がすくんだ。

話を聞いたA君も怖くなり
「あ、あんまり来るようなら警察に言ったほうがいいかもね……」
と言うのがやっとだった。そしてB君の家ということは、そんな奴がこの学校の近くでウロウロしているってことになるのだと気付いた。それも怖すぎる。

数日後、B君の家では同じ現象がまた起こった。
ノックをされ、ドアスコープはやはり何も見えず、ドアに耳を当てるとまたぼそぼそと名前を言っている。たくさんの人数、すべて違う名前をスラスラと言っている。しかもどうやら全部男の人の名前のようだった。
そして一定数言い終えたところでフッと黙り、はっきりとこう言う。

「みんなじさつした」

今回は一緒にいた父親が、急いで飛び出した。ところが誰もいない。異常に逃げ足が速すぎる。

B君の両親はとうとうすぐさま警察に相談した。しばらく巡回してくれるということになり、その日からその現象は治まったそうだ。


その後、A君もB君も大学に進学した。B君は近くにアパートを借りたようで、A君はよく遊びに行っていた。お酒をのんだりゲームをしたり、いつも何人かで集まっては明け方までダラダラと過ごしていた。

ある日の深夜1時をまわった頃。
いつものように何人かで遊んでいた。家主のB君は部屋の端のほうでうとうとしている。A君と何人かはまだおしゃべりしていた。
《コンコン》
ドアがノックされた。B君のアパートは家賃が安いだけあってインターホンが無い。誰かまた仲間が遊びに来たのかな?A君がはいは~いとドアスコープを覗くも、真っ暗で見えない。

その瞬間、B君から高校の頃に聞いた話が一気に蘇る。
(……これ、あの時言ってた話の奴じゃね?)

A君はまさかと思いつつそっとドアに耳を当ててみた。
やはり、ぼそぼそと名前を言っている。
よくもまあそんなたくさんの名前をスラスラと……
聞いていたとおり全部男の人の名前だ。

そして何故か苗字が全部、B君と同じだった。

A君は焦ってしまい、見えないとわかりつつもう一度ドアスコープを覗いた。すると意外にも声の主の姿が見えた。眼鏡もなく髪型やほくろなどまったくなにも特徴のない、そして覇気も無い。年齢すら検討がつかない。
つかみどころのない顔の男。

そいつがフッと顔をこちらに向け、真顔ではっきりとこう言う。

「みんな自殺した」

A君はウッ、と後ずさった。ちょうど物音に起きたB君が
「ん??誰か来た~?」
と言うので
「……いや、なんか、間違いだったっぽい」
とだけ告げ、その日以降A君はB君の家には寄り付かなくなった。

彼は、ずっと来ているのだろうか。


※この話はツイキャス「禍話」より、「外の読み上げ」という話を文章にしたものです。(2023/02/11禍話アンリミテッド 第五夜)

禍話二次創作のガイドラインです。


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