新装版 思考の技術 エコロジー的発想のすすめ を読んで 立花隆氏の偉大さを再確認する
以前に野口聡一氏の仕事術についての著書の書評をnote記事としてあげました。
その中で言及されていたのですが、野口氏は、立花隆氏の著書に大きな影響を受けていたようで、今回宇宙から戻ってきてまた対談をしたい、と考えていたようですが、なくなられてがっくりされていました。
個人的にも立花隆氏は、「知の巨人」として尊敬しています。
野口聡一氏の著書を読んでから、そういえば積ん読のリストの中に立花氏の著書があったので久しぶりに読んでみよう、ということで今回の本を取り上げてみました。
読み出してから気づいたのですが、どうやらこの著書、立花隆氏の処女作だったらしいです。上梓されたとき、氏は30歳だったとのこと。
では、書籍のメタデータを貼っておきますね。
今回も読書ノートからの書評ですので、小理屈野郎の読書ノート・ローカルルールの凡例を以下に示しておきます。
書名 新装版 思考の技術 エコロジー的発想のすすめ
読書開始日 2022/08/24 17:07
読了日 2022/09/01 19:02
読了後の考察
著書の奥付を見てみると、一番最初にこの本が上梓されたのが1971年1月 。それ以前に著書は書かれているわけで(執筆期間はどれぐらいだったか分からないが)、50年以上前に生態学に注目しそれをしっかりと咀嚼して自分のフィールドである社会的事象に適用していた 、ということは驚くべきことだと思う。
この著書は出版社を変えながら出版は続いていて、まずは日本経済新聞社の新書、そして次には中央公論新社から、そしてその次は中公新書ラクレから、昨年販売となっているようだ。
この内容であれば、そうなると思われる。
著者は生態学に何らかの理由で注目した。そしてその生態学をおそらく大量の著書を読み込むことによって正確に理解していった。
そして、その考え方を人間社会のいろいろな出来事に当てはめて考えていく。その中で自然は恐れるべし 、という教訓を得ている。
もちろんそれは当たっているが、それ以外にも「身の丈を知る 」とか「爆発的な成長をしたあとの急激な凋落 」など、いろいろなフェーズを生態学を使いながら示している。LGBTについても論考している。
思わずほぼすべての事象は生態学を用いたら理解できるのではないか 、と思った。
この著書を読んだあと、ちょっとした意思決定をするにしても非常に参考になる考え方だな、と思われた。
現在職場では自分の身の丈を超えた成長を目指し、そのひずみが出てきているような状態と受け取れるところがある。なぜそのようなことになりつつあるのか、という原因論を考えていたのだが、生態学的な考え方を演繹するとマクロな面での理由は容易に想像ができた。
成長することは大事。しかし無理にして成長する必要はない。ゆっくりと自分のフィードバックやフィードフォワードを効かせられる範囲で無理なく成長していくことが必要だ とこの著書を読んでいて痛感した。
何か判断基準がなくなって困った、というときは読み直してみてもよいのではないかと考えた。
キーワードは?(Permanent notes用)
(なるべく少なく、一般の検索で引っかかりにくい言葉、将来もう一度見つけてみたいと考えられる言葉)
#身の丈
#自然をなめるな
概略・購入の経緯は?
立花隆氏の著作で、佐藤優氏が推薦、ということになっていたのをKindleの広告で見て、購入としている。
かなり長い間積ん読になっていたので、掘り起こしてきた。
立花氏の思考の技術を学んでみよう。
本の対象読者は?
企業で意思決定をする立場にいる人
全体を俯瞰してみたい人
著者の考えはどのようなものか?
自然をもっと恐れよ
→いたずらに恐れよというわけではなく畏怖すべきもの だ、と考える。人間は、文明を進化させてきた。文明というのは学問が進化させてきた。学問というのは自然のある小さなフェーズを切り取り、それを普遍化したもの 。なので、部分最適にはなっているが、全体最適にはなっていない (具体的な証拠に物理の問題を渡航とすると問題文にやたらと制限事項が問題文に書いている)。
そんな中で文明=学問至上主義を貫くと、部分最適が肥大化して全体とは調和しなくなる。全体はいろいろな部分が複雑に組み合わさってできているもので、一部だけが肥大すると、その部分は抹殺されて他の部分との整合をとるようなことにもなる。
所詮人間も生態系の中から見るとただの歯車に過ぎない 。その様な思いを持って自然やいろいろな物事に対して、対応していかなくてはならない、ということ。
人間の理解の範囲はたいしたことはない
→☆人間の頭脳が思いのほか複雑なことを一気に考えられないと言うこと。だからこそ制限をいろいろつけながら限定した範囲内ので定理の証明や法則の確立などをしていたのだろう。そのあたりの根本的なそれらの成り立ちを知っておくことが必要 だし、その上で学問や文明を使っていく必要があるのではないか?
無駄とムラ
→☆部分しか見ていないから無駄やムラと見てしまう。それらはもう少し大きな視点から見ると無駄やムラではないのだ。
なぜその様な無駄が見なかったのかについては
としている。確かにそうかもしれない。
どのように進歩していくべきか
→☆マクロの方向性については考えていないことが多く、予定調和の幻想に過ぎないレベルのことが多い、と著者はしている。
そして
と考えている。実際にそうだろう。
→☆結論が非常に素晴らしい。
個人的には、成長についてはあればよいのは分かっているが、その速度については懐疑的だった。
急いで成長すると、その分綻びも出る のであろう、ということ、そして成長し続けることはできないのではないかな、と思っていたところがあるのだ。
その様な考え方をするようになったのは、現在の経済社会は常に成長し続けることが前提になっている 、ということに気づいてからだ。そんなことできるわけがない、と思っており、成長の速度をゆっくりにすれば繁栄を味わう時間が長くなるのではないか 、と考えていたのだ。
結論的には著者のものと比べるとあながち間違っていなかったのではないか 、と思われた。
そしてゆっくり成長するときに内部を改良していくことが満足(=幸せ)につながるのではないか、と思っていたところは全く一緒 だった。
このような考え方はエコロジーと結びつく、ということを知ることができた ことは個人的に大きな収穫だったと思う。
その考えにどのような印象を持ったか?
どれも納得できる内容だったが、それをきれいに理論化できるところがさすが、立花氏 と思った。
「文庫版あとがき」には「本書は今から20年前、私が30歳のときに書いた事実上の書ぞさくである」としている。
自分が30歳のとき、このレベルに達していたか?もちろん達していないし、これが第一作、というところもすごい なあと感じた。
やはり**「知の巨人」と言われるにふさわしい著書** だと感じた。
印象に残ったフレーズやセンテンスは何か?
→☆これが学問の考え方の利点であり欠点 であると考える。
だからこそ、学問としていろいろな理論を発見したり発明したりできたのだが、それがあくまでもかなり限定された部分最適である と言うことを忘れてはいけないと考える。
→☆すべて見る化できるものだ、と思っているところがすでに問題 だ、ということ。
類書との違いはどこか
生態学について非常に細かく解説しており、実際の社会との関連性についても詳述している
関連する情報は何かあるか
生態学について全般(かなり詳細)
社会的な出来事についての考え方
キーワードは?(読書ノート用)
(1~2個と少なめで。もう一度見つけたい、検索して引っかかりにくい言葉を考える)
#生態系
#進歩
まとめ
サクッと読み出したが、非常に有意義な著書だと感じた。
久々の個人的なヒット作の著書であった。
小理屈野郎の職域は基本的には理系なので、生態系の話は高校生でも習ったし、大学受験でも履修範囲だったので理解はしやすかったのですが、ひょっとするといわゆる文系の方は理解しにくいかも知れませんね。ただし、自然で起こっている現象を社会現象で喩えている立花隆氏の書きっぷりですので、かなり理解はしやすくなっていると思われます。
また、立花氏は、理系・文系というような切り口で学問や社会を見ていない ようです。それが氏の知の強みでもある のではないかなと考えています。
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