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野口聡一の全仕事術 を読んで レジリエンスとテレワークについて思索する

今回は、前回の子供たちの国内留学の顛末の記事を書いたあとに読んだ著書ですが、ノンバーバルコミュニケーションについて思索したあとだったので個人的には非常にタイムリー でしたので、書評をあげますね。
子供たちの国内留学の顛末については以下のノートをお読みいただけると幸いです。

.付箋文リンク張る

では、書籍のメタデータを貼っておきますね。

今回も読書ノートからの書評ですので、小理屈野郎の読書ノート・ローカルルールの凡例を以下に示しておきます。

・;キーワード
→;全文から導き出されること
※;引用(引用の背景で示されていることもあります)
☆;小理屈野郎自身が考えたこと


書名 野口聡一の全仕事術
読書開始日 2022/08/21 15:13
読了日 2022/08/22 13:02

読了後の考察

おそらくインタビューを著書にまとめた感じの本であり、スムーズに読み進めることが出来た。
コロナ禍以降によく行われるようになっているテレワークは、宇宙飛行士にとっては普段からやっているもの で、その知見は地上で生活している我々にも非常に役立つ内容であった。
その上で、チームビルディングの方法、レジリエンスなどにも言及していた。
最後には、著者本人の宇宙に対する思いや内面の変化について述べている。たくさんの知見にあふれた本だった。
テレワークについての記事を読むより、この本を読んだ方がこれからどうしていくのかの方針は立つのではないか 、と感じた。

キーワードは?(Permanent notes用)

(なるべく少なく、一般の検索で引っかかりにくい言葉、将来もう一度見つけてみたいと考えられる言葉)
#テレワーク
#レジリエンス

概略・購入の経緯は?

日経ビジネスの書評欄で出ていたため購入とした。
宇宙飛行士を訓練する方の講義は約10年前に聴いたことがある。それは非常に興味深いものであった。みている視点が非常に高く、独特であったからだ。
宇宙飛行士の方が話すことについては、インタビューをテレビでみる程度。ちょっとしたインタビューも活字媒体ではあまりなかったのではないかと思う。
そんな中でつい最近まで現役だった野口氏の話が読める、ということで購入とした。

本の対象読者は?

テレワークに興味のある人
宇宙飛行士に興味がある人

著者の考えはどのようなものか?

非常にたくさんのトピックスについて語っているので、いくつかに絞って書評を書いていくことにします。

宇宙飛行士は究極のテレワーカーである

地上のアメリカ航空宇宙局(NASA)や日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)との連絡は今やオンラインの画像送信システムを使って行われるのが日常
国際宇宙ステーションは、地上スタッフと物理的に切り離された環境ながらも快適な通信環境で結ばれる

→☆宇宙飛行士を、テレワーカーという視点でみたことがなかったので、非常に新鮮な感じ を受けた。
しかし、宇宙飛行士の人にとったら、「地球で生活している人も、私たちの働き方に似てきたな」 と思ったことだろうと考えた。
組織こそ違え、運用時間はNASAやJAXAの方が極めて長く、たくさんの知見をもっているはず だと考える。
著者の意見に耳を傾けると、色々なことがみそうだなと考えた。

テレワークの心構え

自分はいつでも世界とつながれる。つながっていけるという気持ちこそ大事なんだ

→☆自分の隔離自宅療養の間、それなりにうまくいったのは、ネットで周りとつながっていたこと、家族とはいつでも気軽に連絡がとること、ポメラという自分の考えを吐き出すところ(アウトプットできる)所があったこと などが理由してあげあれるだろう。
もし、ネットもない環境なら、電話も自由に出来ない環境なら、アウトプットも整理する環境がなかったら(紙とペンがあれば出来ますが、あまりにもありふれて良すぎてなかなか自分の考えていることのメモをとらないでしょう)どうしようもなかったと思われる。

人間は、人間同士のつながりや、社会との関係において自己の存在感を認識する。鏡としての集団社会がないと自分の位置を確認することは出来ない生き物

→☆上記から引き出された結論と考える。自分の経験からいっても、これはいると思う。
おそらく著者も、自分の経験からも太鼓判で話をしていると思われる。

テレワークの意外なコツ

→事前準備が出来ると良い

準備なくテレワークを始めたら、収まるはずのトラブルも却って傷口を広げてしまうことになる。

→☆テレワークに漫然と入ると、働き過ぎたり、ちょっとした意思の疎通が出来なくなり、非常に働きにくくなることについて言及している。
本来なら、著者のような経験豊かな執筆陣によるこのようなことをまとめたサイトとかがあれば良い のですが、小理屈野郎が知る限りそのようなまとめがなく、ちょっとした事象についての対症療法的な記事が目立つ ような気がする。
この著書では、根本的なところから思考しているように見受けられるので、ヒントは満載だと考える

→テレワーク中の会話の特性について

ディスプレイを介したやりとりになると、相手の様子が十分うかがえず、不安になる
目の前30㎝の相手と対面で話すのと、パソコンのが面腰に話すテレワークとでは、話し方のエチケットや交渉術は当然変わってくる

→☆テレワークをやり始めた当初はこれで足りていると思うがリアルに面会しているときに比べて圧倒的にノンバーバルコミュニケーションの情報量が少ない のだろう。
ディスプレイからみている状態というのは、おそらく画角の決まった望遠鏡から覗くようなもの で、視覚からの情報のみでその情報もリアルに会っているときほど豊富ではないからだと考える。
現状はその変わってくるエチケットや交渉術は実際にテレワークをやって身につけていくしかない と考えた。
そのうちに体系だったものが出来てくるかも知れないが、個人差も大きい。ある程度の慣れが大事 なのではないか。
そのような環境で、テレワークで言葉は悪いが「落伍」してしまったり、心身の状況を崩さないように細心の注意は払わなければいけないのではないか と考えた。

その上で

(遅延に)慣れてくると、その時間の間を使って、自分の話を組み立てることに程なく私は気付いた

→☆かなりやりこまないとここまで気付かないし、落ち着いて向き合っていなければこうはならないと思う。
さすが宇宙飛行士だな、と思った。
このあたりを解説・説明した記事は小理屈野郎は読んだことはありません。もう少し注目されても良いのでは と思った。

ノンバーバルコミュニケーションについて

視覚で捉えていた相手の仕草や、嗅覚で感じた香りは言葉の世界からそぎ落とされ、言語化された情報として相手に伝わらない。これがテレワークのもつコミュニケーション環境の実体(中略)発した言葉だけで勝負する

→☆最後の言葉は覚えておくべき と考えました。その上で丁寧にしゃべる、丁寧に言葉を扱う、ということが重要 になるのではないかと考えた。

リーダーについて

最近の国際宇宙ステーションの船長をみていると、協調型のリーダーが求められるようになった(中略)宇宙ステーションはもはや強烈なリーダーシップを必要とせず、多くの仲間たちの力を引き出せる協調社会へと進化している

→☆これはリアルな社会でもそうではないかと考えた。
ひとりのリーダーで判断できることはかなり限られているし、昔より経営判断やリーダーの判断のスイートスポットは極端に狭くなっている と個人的には受け止めている。そのあたりを考えると、総合知をもって判断する方が妥当である と個人的には考えている。
ただし、その決断の責任は、リーダーの採るものそのものだ、ということは忘れてはいけない原則 だと思う。

日本人の特性

日本人はすごく真面目で勤勉だから「真実は一つ」という考え方が根強い。マンガでもドラマでも、真実を知るものが最後は勝つ、みたいな雰囲気がある。物作りの現場では技術者が「良いものをつくれば売れる」という考えて頑張っている。それはそれで大事な美徳であり、良いものをつくれば報われると思うのは当然かも知れない。でもそれだけでは国際社会では生き延びていけない。(中略)せっかく品質の優れたものをつくったのなら、そこにあぐらを書いていないで、どんどん売り込む交渉をしなきゃいけない

→☆これはよくいわれていること。メタな視点から述べている宇宙飛行士の言葉なのでかなり重く感じた。

完璧主義を求めない

Better is the enemy of good.

「よりよいことは善の敵」 と訳されることがある。要するに完璧主義の人には落とし穴があるという意味合い。

90点をとった候補生が「あと10点足りない」「もっとベターになろう」とする。そうやって自分を追い込み、自分自身にストレスをかけてしまう。(中略)「70店が合格点だから、これでいいじゃないか」「とりあえずOK」といる人は強い。引きずらないことが何より大事。引きずるぐらいだったら「明日70点以上とればいいや」とリセットできる方がよほど良い。

→☆レジリエンスを発揮できる環境について言及している。小理屈野郎的にはこの発想で生活してきた。単に楽観的だ、ということだろうと思う。深くは考えていない。大学の試験なんかはそんな感じでやってきました。逆に完璧主義とまでは行かないが、精度をあげることが個人的には必要ではないか と考えた。ちょっと違う意味で反省するポイントではあった。

後天的にくよくよしない性質を身につけることも、出来なくはない。

→☆「ルーティン」をつくっておくことで逃げることが出来る。リセットする行動を考える
なんとなくこのような行動が身についている人はいるはず。けど、意識してそういう行動を自分はもっていないか、と探してみると面白いかも知れないな、思った。

マインドフルネスについて

あらゆる知覚が覚醒され、周囲のささやかな刺激もどんどん吸収できる状態。五感がフルに働いて、周りの状況をあるがままに把握できる(中略)頭をすっきりさせて、周りの状況をあるがままに受け入れられ得るようにしておく。そこから柔軟な発想が生まれ、新しいアイデアが生み出される

→☆著者なりの、マインドフルネスの定義だと考える。確かに瞑想とは違うと感じる。瞑想の場合は「心を無にする」 という感じなので、外への働きかけについてはほぼない と考える。
外にもそれなりに注意を巡らせながら、状況をあるがままに受け入れるのがマインドフルネス なのかも知れない。

宇宙飛行士のセカンドライフ

宇宙から帰還した宇宙飛行士の第二の人生をサポートする体制が手薄い(中略)ミッションを追えて地上に戻ると、そこからはまるで忘れられた状態になってしまう。もちろん、ほかの飛行士のミッションを手助けする地上支援業務はあるが、引退の道を歩む人も少なくなく、そこから先は「自助努力」となる

→☆さらに、宇宙飛行士とオリンピアンとのセカンドライフの類似性 も著者は述べている。注目されるときは思い切りされるが、されなくなったらそれで終わり、という社会の軽薄さを思い知らされる内容だ。

レジリエンスについて

Grief and resilience live together --- Michelle Obama
悲しみと強靱性は共生している。

→☆悲しいときこそしなやかに 、ということなのだろう。
結構両立するのは難しいが、それを探るのが人生というもの なのかも知れない。

その考えにどのような印象をもったか?

テレワークについては凡百の著書を読むより、根本的なところをついていると思われた。
テレワークの功罪については解説した著書はこの頃ポツポツあるが、それらはあくまでも枝葉末節のことに過ぎないのではないか なあと思った。
もっと根本的なところをまとめた著書があったら読みたい と思った。
その他のトピックスについても、宇宙での滞在を長期間行って、そこからのフィードバックが非常に効いている。著者の思索の深さ を感じた。また、世界を俯瞰して状況をみているので、世界はここまで進んでいる、というところを外連味なく伝えることも出来ていると思われる。
日本はこのままの発想法ではなり具合悪いのではないか、と思われた。
もうちょっとしなやかに(強く)、思考していく 必要があるのではないかと考えた。

類書との違いはどこか

宇宙飛行士が、心理の内面まで踏み込んで思索しているところ。

関連する情報は何かあるか

各国の宇宙開発の様式やスタイルについて
外交姿勢について

キーワードは?(読書ノート用)

(1~2個と少なめで。もう一度見つけたい、検索して引っかかりにくい言葉を考える)

#アジャイル
#世界との競争

まとめ

テレワークについての考え方は非常に参考になった。ここでは触れていないが、NASAやJAXA風の指示出し法は、少し違和感があるが、事故を起こさないことが一番の場合は、これでもいいのではないかと考えた。自分のいる業界でも事故を起こさない必要はあるが、ここまでやったらやり過ぎではないか、と思われるところもあった。
自分で咀嚼してどのレベルまで実践していくかを考えたい。


久しぶりに、自分が実生活で痛感しているところを、タイミング良く著書でさらに深く思索することになる著作でした。

こういう体験をすると、本当に読書って良いなあ、と思います。

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