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長良川鉄道と越美北線を乗り継いだ話

長良川鉄道越美南線は、岐阜県の美濃太田から北濃までを結ぶ路線。そしてJR越美北線は、福井県の福井から九頭竜湖までを結ぶ路線である。

この2つの路線は、本来は1つに繋がって岐阜県と福井県を結ぶ路線になるはずだった。しかし、北濃から九頭竜湖までの間、すなわち県境の山越え区間は、最後まで開通することなく今に至り、分断路線となっている。もし全通していれば「越美南線」「越美北線」という2つの路線名ではなく「越美線」という1つの路線名になっていただろう。

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▲長良川鉄道越美南線と、JR越美北線の位置関係 (Yahoo地図より)

さて、想像地図の人の旅行に対する姿勢として、「来た道と同じ道をそのまま折返して帰ってくる旅行」よりも、「ぐるっと大きく0の字を描いて、来た道とは違う道で帰ってくる旅行」をしてみたいという考え方がある。

長良川鉄道越美南線にもJR越美北線にも両方とも乗ってみたいが、行き止まりの路線を終点まで行って、そのまま折返して戻ってくるのは何かつまらない。もし可能なら、北濃と九頭竜湖の間を列車以外の手段で乗り継ぐことはできないだろうか、と考えた。

乗り継ぎは可能か

かつては、越美南線の終点の北濃駅の2つ手前の美濃白鳥駅と、越美北線の終点の九頭竜湖駅までの間を結ぶバス路線があったが、このバス路線は2002年に廃止になっている。

しかし、調べてみると、

(1)北濃駅から石徹白(1つ目の中間地点)までを結ぶバス路線
(2)家族旅行村(2つ目の中間地点)から九頭竜湖駅までを結ぶバス路線

があることが分かった。ただし、石徹白と家族旅行村の間(約8km)にはバスが運行されておらず、この区間だけは徒歩で通過するしかない。この区間に岐阜と福井の県境があるが、最高地点である桧峠の峠越えは(1)のバス路線の中間にあり、徒歩区間は川沿いに進む緩やかな下り坂が続く。従って、岐阜→福井の方向に進むのであれば、「山登り」はしなくて済む。

なお、この区間は冬季閉鎖区間で、12月1日から4月30日までは通れない。通れるのは5月1日から11月30日までである。

また、上記のバスはどちらもデマンドバスであり、乗車の1時間前までに電話で連絡する必要がある。

実際に乗ってみた

2021年5月1日、想像地図の人は中央線と太多線を乗り継いで美濃太田駅に向かった。冒頭の写真はそこで撮影したものである。

1. 越美南線

9:26、美濃太田駅を定刻通りに発車した。この列車は「ゆら~り眺めて清流列車」という名前で、鉄橋の上など景色の良い場所で徐行運転することが魅力の一つである。

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12:04、定刻通りに終点の北濃駅に到着した。

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2. 白鳥交通 石徹白線(バス)

北濃駅の駅舎内にある食堂で昼食を済ませて、駅前のバス停でバスを待つ。石徹白線のバスは1日に3本で、日祝日は運休である。3本の内、現実的に乗り継ぎに使えるバスの時間は「12:30北濃発→12:59石徹白(下在所)着」の1本だけだった。

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デマンドバスなので事前の電話連絡が必要だったので、数日前に連絡しておいたのだが、いざ現地にたどり着いてみると本当に時間通りに来るか不安になった。しかしバスは予定通りの時間にやってきた。

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やはり乗客は1人だけだった。時間通り12:30に出発し、桧峠を越えたバスは予定通り12:59に下在所バス停に到着した。このバス停は石徹白の集落の中南部にある。この区間の運賃は310円。

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3. 徒歩区間

下在所バス停から福井県側の家族旅行村までの8kmはバス路線がないため、山道を歩くことになる。先述したとおり、峠は既にバスで越えたので、ここからは福井県に向かってずっと下り坂が続くので、「山登り」はない。

家族旅行村のバスの出発時間は14:35なので、それに間に合うためには8kmの道を1時間36分以内に歩き通さなければならない。

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もう峠は越えたのだから、川沿いに下り坂が続くだけ。だから道を間違えることもないし、山登りはないから楽だ。きっとこんなのどかな風景を8km歩いて行けば、家族旅行村バス停まですんなり行くことができる。きっとそうだ、そうに違いない。負ける気せぇへん8kmやし。なんてね。

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さっきまでセンターラインがあった道路。いつの間にかセンターラインがなくなり、車1台がやっと通れる幅になった。

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下在所バス停から歩いて1km地点。徒歩区間の8分の1の地点である。ここで景色は集落から森になる。ここが冬季閉鎖区間の始まりである。ここから家族旅行村までの7kmにわたって民家はない。また、基本的にガードレールがない区間が多いので川に落っこちないように注意しながら歩く必要がある。かといって、落石注意の看板もあったりして、山側にへばりついて歩くのも怖いのだけれども。

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1.6km地点にある石徹白橋。ここで対岸に渡り、しばらくは川を左側に見ながら進むことになる。

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2.2km地点。今回の徒歩区間で唯一のトンネルである。この辺りまで来ると、携帯の電波が圏外になる。

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短いトンネルなので一瞬で抜けてしまう。

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2.5km地点。1台の車が想像地図の人を抜かしていった。釣り人を見かけた。

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川は透き通っていて美しい。

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3km地点。漁業権の境界を示す看板があり、手前側には「これより上流 石徹白漁業協同組合」、奥側には「これより下流 奥越漁業協同組合 管理漁場」とある。そして2枚の看板の中間に、道路のアスファルトの継ぎ目があった。間違いない、ここが岐阜と福井の県境である。右側には小さな滝がある。

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滝の左側が福井県、右側が岐阜県である。また、この地点には「22km」を表す里程標が立っていた。

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ゴールまであと5kmである。ここからがしんどいのである。徒歩区間は8kmだが、県境は3km地点にあって、徒歩区間の中間地点よりも僅かに手前側にある。県境というマイルストーンがあるがゆえにそこを通過するともう中間地点を越えたかのように錯覚してしまうのだが、実際にはそうではない。そして暫く、こんな風に森と川しか見えない単調な道が続くのである。

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登山家なら、こんな場所はなんてことはないだろう。しかし、都会育ちの人間にとっては、なかなか辛いものがある。けれども、1時間36分という制限時間があるので、ここは先を急がねば。

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3.5km地点。右手から合流する川とダムが見える。

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ようやく中間地点を過ぎて、4.2km地点。かつての小谷堂(こたんどう)集落跡。標識が設置されている。川から少し離れた場所を進む。

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5.5km地点。冬季閉鎖区間が終わる。道幅が、車1台が通れる幅だったものが、センターラインが復活して片側1車線となる。

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6km地点。石徹白ダムから放流される水の勢いに圧倒される。

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ここまで、川を左手に見ながら歩いてきたが、ダムの横に架かる橋を渡り、ここから500mほどの短い区間は、川を右手に見ながら歩くことになる。

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6.5km地点。また橋を渡り、また川を左手に見るようになる。

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6.8km地点。三面と書いてサツラと読むらしい。

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7.6km地点。残り500m未満の最後の最後で、「え、山崩れ!?」と驚くけれど、ちゃんと通ることができる。しかし、崩れてからそこそこ時間が経っていそう。2014年に撮影されたストリートビューではこうなっていないから、2014年から2021年までの間に山崩れが発生したっぽい。

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やっとたどり着いたゴールの家族旅行村バス停。時計を見ると14:25だった。バスの時間は14:35だから、10分の余裕を残して到着できた。

この日は雨の予報だったが、幸いなことに天気予報が外れ、歩いている間、雨が降ることはなかった。

4. 大野市営バス 前坂線(バス)

家族旅行村バス停に、バスは予定よりも5分早い14:30にやってきた。バスに乗ると10分もせずに九頭竜湖駅に到着した。九頭竜湖駅までの運賃は100円。

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5. 九頭竜湖駅

列車の出発時間は18:36。

4時間ほど余裕があるので、駅の周辺にある郷土資料館や笛資料館などを見て回った。

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SLが展示してあったりも。

また、道の駅も併設されているので、そこで夕食用に「まいたけ弁当」を買った。

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そうしている内に天気が一変し大雨に。

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辺りが暗くなってきた。

6. 越美北線(1日目)

予定通りの時間にやってきた列車の乗車する。

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この日は越前大野に宿泊である。7駅の乗車である。この日はずっと雨が降り続いた。

13越前大野駅20210501ND001

7. 越美北線(2日目)とその他

7:16 越前大野 → 8:12 福井

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北陸本線と小浜線は過去に乗車したことがあるので、この区間に乗車したことにより福井県内のJR線の完乗を達成した。

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えちぜん鉄道に乗って東尋坊へ。

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悪天候で大荒れの日本海。東映のオープニングの波の映像みたいな景色。

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「ジャンジャン」ってどんな音だろうと思ったが意外に普通の音。

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福井市内にある地下道のエレベーター。ボタンがとても低い位置に設置してあり、これは足で蹴って使うためだそうだ。何年も前からあるらしいけど、コロナの時代には手で触らずにボタンが押せるからとても良いと感じる。全国に普及して欲しいね。

この後、福井鉄道と、えちぜん鉄道勝山永平寺線にも乗車し、福井県内の全ての鉄道に乗車して帰った。

17勝山駅20210502ND002

実際に行う上での注意点

1. 岐阜県側の石徹白線と福井県側の前坂線は、いずれもデマンドバスなので乗車の1時間前までに電話連絡が必要。また、前者は日祝日運休なので注意が必要。

2. 徒歩区間は8kmと長く、大部分で携帯の電波が通じない。道半ばで有事があった場合、遭難事案になりうる。特に、落石・野生動物には注意したい。道幅が狭く谷が深いので落っこちないように注意すること。念のため出発前に家族や友人に連絡するなど根回しをしておいた方が良い。

3. 無人地帯の森の中を1時間以上歩き、薄暗いトンネルを通る場所もあるため、1人で行く場合は孤独耐性が必要。

関連リンク

・想像地図の人 ツイッター @koridentetsu

白鳥交通 石徹白線デマンドバス

大野市営バス

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