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日本に「ポリバケツ語駅名」はいくつあるのか?

※これは過去にTwitterで呟いた内容をまとめて再構成したものです。

ポリバケツ語とは

「ポリバケツ語」とは、日本語の5母音が1回ずつ含まれているような単語のことである。例えば、「とりあえず」という単語は、ローマ字表記すると TORIAEZU となり、5母音 A, I, U, E, O がそれぞれ1回ずつ含まれている。「ポリバケツ」という単語もそうである。

ポリバケツ語駅名

例えば、「甲斐上野(かいうえの)」という駅名は、ローマ字表記すると KAIUENO となり、5母音 A, I, U, E, O がそれぞれ1回ずつ含まれている。「池の浦(IKENOURA)」も同じく。

では、このように5母音 A, I, U, E, O がそれぞれ1回ずつ含まれる駅名は、日本全国に何箇所存在するであろうか。

ポリバケツ語の定義の再確認

数える前にポリバケツ語の定義を再確認しよう。5母音 A, I, U, E, O がそれぞれ1回ずつ含まれている、というのは、発音上5母音が1回ずつ含まれているものを言うこととする。

1.ひらがなでは含んでいても発音しない場合は除外する

「仮定法(かていほう)」のように、ひらがなの上では5母音を含んでいても、実際には「かていほう」は [kateːhoː] 「カテーホー」と発音するから [i] および [u] の音は含まれていない。このように、ひらがなとしては5母音を含んでいても発音上は5母音を含まないような単語は、ポリバケツ語には含めないことにする。

2.「ん」や「っ」が入っていてもよい

また、あくまでも母音の話なので、子音だけの発音である「ん」や「っ」が入っている場合でも、5母音 A, I, U, E, O が発音にそれぞれ1回ずつ含まれているという条件さえ満たしていれば、ポリバケツ語に含める。

3.長音が入っていてもよい

長音の母音は、短音の母音と同様に1つと数える。
例えば「越中大門」ETCHŪDAIMON のように母音が長音になっている(この場合はUがŪになっている)ものは、Uが2つとは見なさず、1つと見なすことにするので、可とする。

4.日本語としての音韻で考える

あくまでも日本語の音韻として考える。
例えば「オレンジタウン」は、駅名の英字表記は ORANGE TOWN となっているが、日本語の音韻の中では ORENJITAUN となり、5母音 A, I, U, E, O が発音にそれぞれ1回ずつ含まれているという条件を満たす。

実際に調べてみる

使用したデータは「日本駅名語辞典」(第26版 2021年2月版)である。この辞書は、駅名替え歌用に筆者自身が作成した辞書である。母音の配列別に駅名を検索できるようにすることを目的に作ったものであるが、今回の調査にはもってこいのデータだったのでこれを使って分析した。

まず日本駅名語辞典で5母音を全て含む駅名を抽出し、その中からまず同じ母音が離れて2つ以上入っているものを除外した。
ここまで絞り込んだ段階で、あとは手作業で処理しても苦にならない程まで充分にデータが絞り込めていたので、条件を満たさない駅名を除外したところ、以下の結果になった。

結果

絞り込みの結果

ポリバケツ語駅名(5種類の母音をそれぞれ1回ずつ使用する駅名)は、数え方にもよるが最も多く数えた場合は日本国内に合計28個あることがわかった。 ただし、表中には29個の駅名を表記している。
この理由は、/ei/を「エイ」と見るか「エー」と見るかによって揺れが生じるためである。前者の解釈を取る場合、永犬丸(えいのまる)は「エイノマル」と発音するから母音はEIOAUでポリバケツ語だが、都立家政(とりつかせい)は「トリツカセイ」と発音するから母音はOIUAEIでポリバケツ語ではない。後者の解釈を取る場合、永犬丸(えいのまる)は「エーノマル」と発音するから母音はEOAUポリバケツ語ではないが、都立家政(とりつかせい)は「トリツカセー」と発音するから母音はOIUAEでポリバケツ語に当てはまる。
どちらの解釈を取る場合であっても、永犬丸か都立家政はトレードオフ的であり、一方をポリバケツ語であると考えるなら、他方はそうではないと考えざるをえないだろう。従って29個全てをポリバケツ語と見なすことはできず、最も多く数える場合は28個となる。

また、石神井公園についても解釈が分かれるかもしれない。ローマ字中心主義的に考えるならSHAKUJIIKŌENだからポリバケツ語とは見なせない、という考え方もあるかもしれないが、今回の議論ではあくまでも発音に従って考えているので、それは本質的ではない。
ようは、「石神井」を「シャクジー」とイ段の部分を長音として発音しているか、それとも「シャクジイ」と別々の音節として発音しているか、と言う問題である。これは個人差があるのではないだろうか。従って、長音として発音する人にとってはポリバケツ語と見なせるし、そうではない人にはポリバケツ語とは見なせない、ということになるだろう。

2024年1月2日追記

2024年3月16日のダイヤ改正で、ポリバケツ語駅名の1つであった北海道の「滝ノ上(たきのうえ)駅」が廃止になるため、ポリバケツ語駅名の総数は1つ減少する。多く数えた場合の総数は27駅に。


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