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メガネ1つで普通のおじ様がイケオジに大変身

メガネを選ぶ時に、もう何年もメガネをかけ続けているベテランメガネユーザーは自分がかけるメガネの形を決めていることがある。

お一人でメガネを買いに来たおじさま。
今まではスクエアという横長の四角い形のメガネばかりをかけてきたそう。

キリッとして真面目で誠実なイメージが漂う。
だが言い方を変えてしまえば、正直なところどこにでもいそうなイメージ。

「自分は四角いメガネだ」という固定概念からか、おじ様は無意識に四角いメガネばかりを選んで試着されている。
どれをかけても今までとほとんど同じ印象から脱しない。
もちろん悪くはない。

そんな最中、
「ちょっと違うのかけてみようか」
そう言ってラウンドという丸い形をしたメガネを一瞬だけかけた。

その一瞬、鏡の前に現れたのはすごくオシャレなイケオジ様の姿だった。
そのままスーツを着たらどこかの企業の経営者にも見えそう。
エプロンをしてピザを焼いていても良い。
ラフな格好でギターを弾いていても間違いじゃない。
とにかく若干のちょい悪さと遊び心とスマートさがバランスよく混合している。

メガネ屋の店員をしていると、時折りこういうことがある。
お客様がある1つのメガネをかけた瞬間に背筋に電流が走り、
「それ似合いますね!」
と反射的に言ってしまう瞬間。

接客でのお世辞やセールストークとしての
「お似合いです」
とは違う。
心からの、
「似合いますね!」

接客の敬語さえ少し崩れてしまうほど、頭で考えての発言ではなく心や身体が反応して条件反射的に発した「似合いますね!」だ。

「ぜひともそのメガネを選んでほしい」
あまりにも似合いすぎている姿を見て勝手ながらそう願うが、もちろんどれを選ぶかはお客様の自由だし最終的な決定に口は出せない。

けれどもイケオジ様は、
「やっぱりこういうのは違うな」
「今までと同じのがいいな」
そう言ってラウンド型のメガネはすぐに外して、これまで通りのスクエアを選び始める。

「全然違くないです!!」
「絶対それですって!!」
「もうそれに決めましょう!!」
「戻さないで!!それ!!それが良いから!!」
心の中でそう叫ぶ声を、理性が抑え込んで蓋をする。

「先ほどの丸いのもお似合いでしたよ!」
丁寧さと適度なラフさを織り交ぜて、精一杯のラウンド推奨をしてみる。

「いや、丸いのはええわ。やっぱり違う。今まで通り四角なのが良い」
そう言われてしまうとこちらはもう抗えない。

最終的に今までと同じスクエアのメガネを選ばれて帰られていくおじ様をお見送りし、
「ラウンド型似合ってたのにな」と少しだけ残念な気持ちになる。

とはいえこれは自分が思う正解。
お客様が思う正解はまた違うから、自分の思いを押し付けることは絶対にできない。

でもな〜、絶対ラウンドが似合ってたな。

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