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オランダの夜間外出禁止令と暴動

勝手に広報のコーフボールママです♪
今回は、2021年1月23日(土)から施行された夜間外出禁止令に伴って起こった暴動について書いてみたいと思います。

夜間外出禁止令施行

オランダに先立ってフランスでは夕方18時から朝の6時まで夜間外出禁止令が出ておりましたので、オランダの21時から朝の4時半までの禁止令は私としては納得出来る時間帯でしたので、まさか3日間連続、暴動、略奪、放火が起こるなどとは施行前には想像もしていませんでした。

オランダニュースサイトの暴動特集のサイト

ルッテ首相や私の周りのオランダ人は「これはオランダではない」と言っていましたが、冷静に考えてみるとオランダ社会にはいつ暴動が起こっても不思議ではない社会的要素が色々とあるような気がします。

オランダの教育システム

オランダでは、小学校6年生でどのレベルの中等学校に行くのか振り分けます。6年生で受ける学力テストの結果だけではなく、小学校4年生から受けてきたテストと授業態度等を総合的に判断して、生徒の学力にあったレベルに振り分けます。つまり、どのレベルの中等学校に属しているかという事で生徒の学力レベルが分かるシステムとなっています。

勉強が好きではなく、苦手なのに無理して難しい事を学ぶ必要はない。各々のレベルにあった勉強をして、勉強が得意な人は長く学んでもらい、そうでない場合はサッサと社会に出て貢献してくれれば良い。という理由です。

オランダ教育システム

オランダ教育に関して分かりやすく解説しているせかいじゅうライフさんの記事

この上の表の一番右にある中等教育の一番レベルの高いVWOはさらに3つのレベルに分かれています。ラテン語とギリシャ語の習得が必修となっているギムナジウムが一番レベルが高いです。

その一番レベルの高いギムナジウムですが、色んなレベルの教育を提供している中等学校のギムナジウムより、Categoriaal Gymnasium(カテゴリアール ギムナジウム)と呼ばれるギムナジウムだけの学校に通う生徒は、
「オランダ中等教育で最高の授業を享受出来る、勉強がとっても出来る未来のエリートたち」を意味します。ロッテルダム市には2校のカテゴリアル
ギムナジウムがあり、学校名を言うだけで「おお!賢いお子様!」と周りは反応します。

一番低いレベルはVMBO BASISというレベルですが、机に向かって勉強するよりも、手を動かした方が好きですよね。という感じの授業になっています。教育内容も、小学校の時の復習に少し毛が生えたぐらいのレベルと英語を習う。という感じです。

私は、カテゴリアール ギムナジウムに通っている先生と生徒、VMBOに通っている先生と生徒の両方を個人的に知っていますが、同じ中等教育にも関わらず雲泥の差があります。ギムナジウムでは「未来のエリートたち」という風に生徒たちを扱いますし、VMBOでは生徒が武器や麻薬の売買をやっていたり、警察の事情聴取や裁判所に証人になったという話も聞いたことがあります。

中等学校に在学中に学力が伸びて、上のレベルに行くことも、学力が下がって下のレベルに行くこともあります。
1学年目はHAVO,2学年目はMAVO、3学年目はVMBOKaderと毎年落ちた生徒も知っていますし、逆に1学年目はVMBOBasis,2学年目はVMBOKader、3学年目はMAVOと上がっていった生徒も知っていますが、そのような生徒はクラスに1名か2名だと思います。

ここまで読んで頂くと、同じオランダ教育でもかなり違う事が分かって頂くと思うのですが、この二つのグループは小学校を卒業した時から交じり合う事はありません。一方は弁護士、医者、企業の管理職のような知的職業につく場合が多いです。もう一方は肉体労働や簡単な事務職の場合が多いです。

もちろん中等職業教育を受けた後、自営業者になって大成功する人もいます。しかし、オランダの職は学歴とくっついていますので、職名を聞いただけで最終学歴レベルが分かります。看護師はこのレベル、小学校の先生はこのレベル、ホテルのレセプションはこのレベル、と事細かく決めらています。

学歴社会の話

この前、聞いた話ですが、一族みんなが医者か弁護士の一家で息子さんはトラック運転手になりたかったのですが、親がガンとして許してくれなかったそうです。そこで、その子は大学を卒業して卒業証書を手に入れてすぐ、

「ほら、これが二人が欲しがっていた卒業証書だよ。」

と、卒業証書を親に渡して、トラック運転手になったそうです。

このような話は、滅多にありません。何で勉強出来るのに、トラック運転手になるわけ?何でパン職人になるわけ?何で配管工になるわけ?勿体ないじゃない。という感じで親も周りも子供を説得するからです。

このようなオランダの教育システムが社会を分断する下地を作り、今回のような暴動を起こす一因になっているのではないか。と私は思います。

学校名や職業名を言うだけで一部の人から見下されたり、一部のエリートから、「彼らはあまり知識がなく、弱い存在だから」みたいな態度を時々取られたりすると私ならとっても腹が立ちます。

統計調査と学歴

高学歴の場合はOO、低学歴の場合はOOという、統計調査結果を発表することがあります。
私がビックリしたのは、低学歴の人たちは悪い生活習慣が原因で、高学歴の人たちよりも医療費を使うが、彼らは高学歴の人たちよりも寿命が短いために、最終的にはどちらのグループも医療費が同じぐらいかかる。
という統計調査結果をニュースで聞いた時です。

私はオランダで教育を受けているわけではないにも関わらず、この調査に関してはモヤモヤします。世の中には、色んな人がいます。それを、高学歴、低学歴と分けるのって単純すぎます。もちろん、平均を取っていると分かりますが、このような統計調査をする事自体に何の意味があるんでしょうか。


親の学歴が子供の学力にも反映されている。親の学歴が子供がどのレベルの中等学校のアドバイスをもらえるのか変わってくる。等の統計結果も聞いたことがあります。

メディアがこのような統計調査結果を発表する度に、社会の分断を進めているような気がします。統計調査を依頼する人は高学歴ですから、低学歴の人たちがそれを聞いてどんな気持ちになるのか想像できないのかもしれません。

私の願い

理論武装が苦手なために、同意できないとすぐに暴力で訴える、暴動を起こした後の影響を考えていない、等と色々あるとは思いますが、このオランダ教育システムと職業が学歴レベルで決まる。という今のシステムが続く限り社会は分断し、不満が爆発すると暴動に繋がる危険はいつもはらんでいると私は思います。

オランダの政治家も高学歴の人たちと低学歴の人たちの交流がないことの問題点は気づいていますが、どのように解決すれば良いのか分からないようです。中等学校のレベル分けを現在の11,12歳ではなくもっと年齢を上げる。というアイデアもあるとは思います。

私は、現在のエリート達が社会を引っ張る!という電車みたいな形のイメージの社会ではなく、みんなが自分の能力を発揮して、学歴に関係なく社会貢献しているというパズルみたいな形の社会イメージになり、暴動が起こらないような社会になると良いな。と願っています。







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