見出し画像

稼ぐ図書館員(『人物図書館』)

公共図書館に勤めて15年になります。はじめは滋賀県の草津市立図書館の臨時職員としてスタートしました。その時、私に図書館のことを一から教えてくれたのは同い年の嘱託職員の人でした。その後、幸運なことに採用試験に受かり、京都府立図書館で働くことになりました。

京都府立図書館でも嘱託職員が図書館運営に欠かせない存在です。歳が近い職員も多く、一緒によく遊んだり、飲みに行ったりしています。私が入った当時の京都府立図書館は、正職員・非正規職員に限らず、日々の業務について何かを提案するというような雰囲気ではありませんでした(今は違います)。ですので、飲み会ではいつも愚痴で盛り上がります。でも、毎回同じ愚痴を何年も繰り返して来たら、いい加減飽きました。そういうこともあって2013年に「ししょまろはん」という自主学習グループが生まれたときに、そこでみんながやりたいことを実現しようとしました。

その一つが「京都が出てくる本のデータ」です。京都が舞台になった本のデータをみんなで集めてオープンデータとして公開したら、スマートフォンのアプリになったり、新聞に掲載してもらったり、ついにはコンテストで優勝して、賞金15万円を得ることができました。
「ししょまろはん」のやっていることに対して外部からの評価を得て、次第に図書館内部の理解も生まれ、正職員の私は徐々にやりたいことが仕事になってきましたが、嘱託職員のメンバーの仕事内容に変化があったり、賃金や雇用の問題は改善されることはありません。それについてどうにかしたいという思いを強く持つようになりました。

その時に、『月3万円ビジネス』(藤村靖之さんの著作)という言葉を聞きました。月に3万円ずつ稼ぐことのできる仕事をいくつか持っていたら生活ができる。3万円以上利益が出るようなら、他の人を加えてシェアをすべきという内容が書いてあります。

非常勤の図書館員も今ある仕事をベースとしながら、それに加えて月に3万円ずつ稼げたら、少し生活にゆとりが生まれるかな。その3万円の仕事がとても楽しかったり、スキルアップにつながるものだったりしたら、何かが変わるかもしれない。

ある時、京都府立図書館が民間企業に本の目録データを作成するために発注する一冊当たりの単価を見て、「そのお金もらえるのだったら『ししょまろはん』にやらせてよ」って思いました。図書館員の知見をもとに情報を再編集して新たな価値生み出すような「ししょまろはん」の取り組みを知って、こうやったら収益につながるとアドバイスしてくれる人がいました。私たちが作り出すものを使いたいと思ってくれる人たちは案外いるのです。可能性はゼロではないような気がします。

日本全国に、低賃金で不安定な身分で頑張っている非正規の図書館員がたくさんいます。いつか、株式会社ししょまろはんとかNPOししょまろはんとか、どういう形態になるか分かりませんが、非正規の図書館員を集めて、それぞれの得意なことを、好きなことを活かして世の中のみんなの役に立つことを行って、月に3万円ずつ分配できる仕組みを作れたらいいな、なんて最近考えています。(京都府立図書館の職員時代に2017年2月に開催された人物図書館で話した内容を『人物図書館』(2019年2月発行)に掲載)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?