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【週刊プラグインレビュー】Eventide / Physion MkⅡ

今月はEventideから発売されたマルチエフェクターPhysion MkⅡをレビューしていきます。

概要に関してはこちらをご覧ください。

プリセットのデモはこちらをご覧ください。

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動画を見ていただく限り、どちらかといえば飛び道具のように思われると思いますが、このプラグインの振り幅、ものすごいです。
飛び道具的なサウンドはこのプラグインのほんの一面に過ぎません・・・。


概要

Physion Mk IIは、信号のトランジェントとトーンの要素にそれぞれエフェクトを適用できるツールで、創造性と柔軟性をもって、サウンドを彫刻することができます。

Physionでは、信号の中で急激に変化する部分をトランジェント、残りの持続的な要素をトーンとして識別します。
信号のトランジェント部分に影響を与えずにトーン部分に影響を与える、あるいはその逆を行うことができるため、ミックスにおける多くの難問が些細なことになります。
例えば、ボーカルのリバーブをトランジェントシビランスを発生させずに滑らかにしたり、ドラムのアタックを劣化させずにリチューニングすることができます。
また、ゲインを個別に調整することで、ボーイング効果やトランジェントアイソレーションも可能です。
ドラムのアタックとサスティーンに別々のエキスパンダーやコンプレッサーを使用することで、正確なダイナミック・コントロールも可能です。
Physion Mk IIを使いこなすと、ミキシングでよくある問題をどれだけ解決できるかがわかるでしょう。

https://downloads.eventide.com/audio/manuals/plug-ins/Physion+Mk+II+User+Guide.pdf

Physion MkⅡは、Structral Splitテクノロジーを用いてオーディオをトランジェントとトーンに分離してプロセスするエフェクターになります。

元々Physion(無印)が発売されていたのですが、そこに対してSplitEQで得た知見や大量のプリセットの追加、GUIの変更などを経て正当進化したのが今回のMkⅡになります。

トランジェント用に7種類、トーン用に8種類のエフェクターが用意されていて多彩な音の作り込みが可能になっています。

Physion MkⅡのシグナルフローダイアグラム

このプラグインの肝になっているサウンドの分離システム「Structual Sprit」について解説していきます。

Structural Sprit

Structural SplitはEventideのSplit EQにも搭載されているアルゴリズムで、時間と周波数から安定している部分を検知してトーンとし、それ以外をトランジェントとして分離させます。

コンプレッサーやダイナミクス系のプラグインと異なり、プラグインのかかり方が音量に依存しないため、大音量の強いプレイからゴーストノートのような弱いプレイまで正確にトランジェントとトーンそれぞれにプロセスすることが可能です。

例えば、以下の波形のようなベースのリリースをタイトにしたい場合、コンプレッサーだとスレッショルド以下の信号に対してはプロセスできないですが、Physionであれば弱音に対しても強音に対しても同じプロセスができます。

強音にThresholdを合わせると弱音に変化がない
弱音にThresholdを合わせると強音がオーバーコンプになる
Physionでトーン部分だけにコンプをかけてタイトにしてみた例
音量の大小に関わらず全ての音に同等のプロセスが可能
(わかりやすく実用的でない過激なセッティングにしています)

恐らくこのような使い方ができるプロセッサーってないんじゃないでしょうか。

Flux - Soleraに代表されるようなAdaptive Threshold(入力音の大小に合わせてスレッショルドの値を変化させる)搭載のダイナミックプロセッサーは存在しますが、トランジェント部分だけにEQをかける・ディレイをかける。
トーン部分だけにリバーブをかける・ピッチを下げる。なんてことできるプロセッサは見たことがありません。

これがPhysionの最大の特徴です。
そしてこのトランジェントとトーンに分離して別プロセスを行うという構造が、緻密な下地造りにも使えるし、クリエイティブな飛び道具としても使えるという点がPhysionの魅力です。


操作方法

実際の操作方法を見ていきましょう。

Physion MkⅡの操作画面

まず初めにFXを適用する前にStructural Splitの設定を詰めていって、
使いたいソースをどの様に分離するのかを決めます。

Structural Splitの使い方

  • 1.入力した素材に対して適切なSource Typeを選ぶ

  • 2.トランジェントとトーンのエフェクトをどちらもオフにする

  • 3.トランジェントとトーンのどちらかをソロにする

  • 4.Structural Splitコントロール(Focusと描かれた縦のスライダー)を調整し、希望の結果になるように調整する

ざっくりとここでトランジェントとトーンを希望の形に分離したら、詳細設定に入っていきます。

詳細設定

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