【週刊プラグインレビュー】Mixland / Vac Attack
今月はMixlandが開発したVac Attackについてレビューしていきます。
まずウォークスルーはこちらを。
ぶっちゃけこれ見ればもうレビュー読まなくていいんじゃないかと思うくらいよく出来た、ミックスデモの動画はこちらをご覧ください。
Mixland
MixlandはソフトウェアデベロッパーのEddie Lucciolaが所属しているプラグインメーカーで、プラグインやサンプルパック・チューブトラップのマニュアルなどを制作・販売しています。
[TILT!] や[SUBLOOM]など、品質の高いプラグインもあり、[Rubber Band Compressor] [STEAM DRIVER]など、見た目や出音にクセのあるプラグインを作ることでも知られています。
ティルトEQであるTILT!
簡単に素材の重心を変えつつ、真空管の歪みも足せるので重宝しています。
Rubber Band Compressorはその名の通り、ゴムバンドの跳ね返りみたいなサウンドの質感にしてくれるコンプレッサー
スネアを突っ込んだ時のSquashじゃない「ブイン!ブイン!」みたいなサウンドは唯一無二ですよね。
デベロッパーのEddie Lucciolaは、Kiive Audioのオーナーとしても知られています。Kiive Audioでは筆者も過去にレビューした[Distinct!]や、Distressorを模した[Xtressor] Chandler TG1を模した[ADC1 Compressor / Limiter]などを開発・販売しています。
普段から実機のDistressorを愛用しているのですが、Distressor系のプラグイン全部試した結果、一番似てるのはXtressorでした。
本家のArousorはまたDistressorに改良を加えたものなので、実機そのままって質感ではないです。
とまぁこんな感じで高品質で「む、これは本物っぽい・・・」と思わせてくれる音楽的なメーカーMixlandが今回開発したのがコンプレッサーのVac Attackになります。
販売元はPlugin Allianceです。
※以下解説に入りますが、元ネタはInward Connections Vac Racであるとご指摘いただきました。[23年10月14日]
誤った情報の紹介失礼いたしました。
メーカーの意図している部分と異なる解説になってしまいますが、
執筆当時の文章のまま、noteは残します。
https://youtu.be/QetboXVAYzI?si=x4LGdJrqjPiBOFJs
Fairchild 670
見た目から明らかですが、今回の[Vac Attack]はFairchildの670を模したプラグインになります。
"なんかよくわかんないんだけど自然"というのがこのコンプレッサーの一番の特徴といえます。
叩かれる際の音の変化が音楽的なのか、スレッショルドに合わせて可変するアタックタイムがナチュラルに聞こえるのか。。。
理由は定かではないのですが、とにかくまとまるし、音も値段が上がったような密度感が出ます。
筆者が所属していたソニー・ミュージックスタジオにもCBS SONY時代から引き継がれたFairchildが2台あったのですが、それはもう素晴らしいサウンドでした。
特にレコーディングの段階でのキックとスネアのレベリングに使うと、ベチベチ!と鋭くなってしまいがちなサウンドがムチムチしてきて、「聞いたことある!」という音になります。
しっかり叩かれているので、ProTools上の波形も恐ろしく安定してミックスも楽になります。
余談ですが、[Fairchild 670]は通称で、正式にはNYの会社であるFairchild Recording Equipment Corporationが販売したMODEL 670という名前のコンプレッサーになります。
プラグインにおけるFairchild
レコーディングにおいて聖杯と称されるFairchildなので、当然プラグイン化もされています。
UAD / WAVES / Slate Digital / Avid などがプラグインとして製品を出しているのですが、個人的にはどれも惜しいなーと思っています。
それは「やっちまった感」があることです。
1176やCL1Bなど、レコーディング現場でよく見かけるコンプレッサーは、オーバーコンプになった時に、音楽的でない歪みが生じたり、奥にいってしまったり、後でどうやっても取り返せないサウンドになってしまうんですが、Fairchildの実機って、なぜかやっちまった感がないんです。
Gain Reductionがたとえ10dBに達してしまっても何とか音楽的にしてくれるんです。
ところがプラグインには「やっちまった感」がある。
何が違うのか言葉で説明できないんですが、とにかくスムースさなのか、突っ込んで行った時に旨みがないのか、あんまり使いたいなーとならないのが正直なところでした。
Vac Attack
正直またFairchildのプラグイン化ね〜。
と思っていたのですが、そこは信頼のMixland。
実機のモデリングにも定評のあるEddie Lucciolaと、Kanye West / Doja Catなどで知られるグラミー賞エンジニアJesse Ray Ernsterの共同開発で生まれたプラグインなので、期待せざるを得ません。
簡単にマニュアルをさらっていきます。
はじめに
コントロール
主に3つの部分に分かれていると考えてください。
コンプレッサー
Reduction: 信号の圧縮具合を決める
Gain: 圧縮後の出力ゲイン
Knee: コンプレッサーのアタックとリリースの曲線の柔らかさを制御
ソフトニーはよりスムーズな圧縮を、ハードニーはより急な圧縮を生じる
Mix: Dry / Wetのブレンド
Link: ステレオリンクかデュアルモノかの切り替え
サイドチェイン
HPF: ハイパスフィルター、低域をカットすることで不要なポンピングを防止
Gain: ミッドレンジをブーストまたはカット
Freq: ブーストかカットをしたいミッドレンジを選択
LPF: ローパスフィルター、過度なコンプレッションを防止
トーンシェイプ
LF PUSH: 低域シェルビングで低周波ブーストまたはカット。
HF PUSH: 高域シェルビングで高周波ブーストまたはカット。
EQ MODE: LFとHF PUSHの周波数切り替え、LFはJで230Hz Eで52Hz
HFはJで4.4kHz Eで10kHzをコントロール
THD: ハーモニックディストーション 音に暖かみまたは攻撃性を追加
サイドチェインは実際の音には影響しません。
シグナルダイアグラムが載っていないので恐らくになりますが、コンプレッサー部の後段にトーンシェイプ部があると思います。
その他プラグイン上部では、ReductionとGainのリンク、オーバーサンプリング、GUIサイズなどが変更できます。
次項から詳細な使い方と所感をまとめていきます。
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