見出し画像

ミラノデザインウィークを見て

4/16-21にイタリアのミラノで開催された「ミラノデザインウィーク」に行ってきました。経緯としてはインターン先で関わらせいただいた墨田区のものづくり企業の方々がデザインウィークに出展するということがきっかけです。”デザイン”という分野に関して素人だった自分が"デザイン"について考えるきっかけになった時間でした。
デザインウィークで感じたことを墨田のものづくり企業の展示等をご紹介しながら、振り返ります。


ミラノデザインウィークについて

そもそもミラノデザインウィークとは。
ミラノデザインウィークはミラノ・ロー市の見本市会場で行われる国際家具見本市「サローネデルモービレ」とその会場外の市内各所で行われる「フオーリサローネ」の総称を"ミラノデザインウィーク"と呼びます。
(東京ビッグサイトで行われるイベントがビッグサイト内だけでなく周辺市内でも連動して開催されているようなイメージ)
期間中は「サローネデルモービレ」で世界各国の最新家具やインテリアデザインが。「フオーリサローネ」ではバイクで有名なDUCCATIや時計のSEIKOの展示も見ることができました。
墨田区企業の展示は「フオーリサローネ」のイゾラ会場にて開催されました。

イゾラ会場の展示

今回、墨田区のものづくり企業はイゾラというミラノ北東地区の会場にて行われました。行ってから知ったのですが、今回の展示会場では東京のものづくり企業、荒川技研工業の『biblioteca d'Oro』プロジェクトと『NEW NORMAL NEW SATNDARD』というデザインプロジェクトの展示が行われており、今回、墨田のものづくり企業は「NEW NORMAL NEW SATNDARD」として参加したそうです。
会場設営準備のお手伝いしたのですが、墨田区のものづくり企業の展示だけだと思っていたので、会場の全体のテーマやプロジェクトを理解するのに混乱したのを覚えています。
しかし、墨田のものづくり企業しか知らなかった自分が他の日本のものづくり企業を知ることができたので、すごい楽しい空間でした。
以下から、イゾラでの展示のご紹介をしていきます。

荒川技研工業-biblioteca d'Oro-

荒川技研工業は創業1973年、東京でワイヤー吊り金具システムやピクチャーレール機構を開発している会社です。
今回の会場では50周年の歴史とデザイナーとの共創を振り返ることができる金と銀のワイヤーで創られた図書館のような空間「biblioteca d'Oro」を展示していました。
「biblioteca d'Oro」は荒川技研工業のワイヤー技術とSTUDIO BY COLORのデザイナー秋山かおり氏よるディレクション、浦田孝典氏、伊澤真紀氏による空間デザインによって創られました。
arakawagrip」というワンプッシュの簡単操作でワイヤー上を自由自在に動かせるグリップを活用し、垂れ下がるワイヤーグリップで幹のようなシルエットを作り、森のような空間を演出していました。

様々な形をしたarakawagripがワイヤーに付いていた
会場の様子
ワイヤーが天井から吊るされていた。

NEW NORMAL NEW STANDARD 4 -Japanese Maison-

「biblioteca d'Oro」と併開催されたのがデザインを通して「今の時代に求められる新しいスタンダードをつくる」をコンセプトに、2020年から活動をされているデザインプロジェクト「NEW NORMAL NEW STANDARD」です。
今年は、「家業」をテーマにしたNEW NORMAL NEW STANDARD 4 -Japanese Maison- (ジャパニーズ・メゾン)を開催。
こちらのプロジェクトに墨田区の企業が参加しました。以下から、展示のご紹介をします。

片岡屏風店-360 BYOUBU-

小さいものが昨年のもの

墨田区で1946年に創業、東京で唯一の屏風専門店「片岡屏風店」とデザイナーの秋山かおり氏による「360 BYOUBU
写真手前の小さい屏風は昨年のデザインウィークにて展示された「360 BYOUBU」です。ランプシェードとしても使えるそうです。今年の「360 BYOUBU」は昨年よりもさらに大きくなったもの。
片岡屏風店では伝統的な屏風だけでなくコラボ屏風からくり屏風づくり体験、寄席イベントなども開催しています。屏風というと虎などが描かれた屏風絵のようなものをイメージしていたのでこれって屏風なんだと思ったのが最初の感想です。日頃から屏風の新たな可能性を模索する片岡屏風店の姿勢が体現された斬新な屏風でした。

五十嵐製箱株式会社-Kasaneru-

重ねられることが特徴のひとつ

創業1926年、墨田区本所の段ボールケース製造会社「五十嵐製箱株式会社」とデザイナー土井智善氏による「Kasaneru
折り畳み可能で軽やかにスタッキングできる紙製スツール。スタッキング時の美しさを追求しています。
また、会場に設置した白い展示台も、五十嵐製箱の設計技術で作られた紙製(リボード)什器です。
段ボールは、軽くて丈夫で、コンパクトに畳めるという特徴から、梱包時に活用されていますが、最近では、災害時の緊急ベッドや椅子に使用するなど用途の幅が広がっているそうです。
「梱包する」以外にも、「座る・寝る」「展示する」「飾る」など、段ボールのいろんな可能性を感じるスツールでした。

二つのパーツから構成されている
奥の形状にして座ります

東商ゴム工業株式会社-Take 5 Rubber-

黒いイカ墨パスタのようなもの、右奥オレンジのもの、左側のカラフルなものが
Take 5 Rubberで作られたものです

創業1966年、墨田区の「東商ゴム工業株式会社」とデザイナー嶋野陽介氏による「Take 5 Rubber
東商ゴムはレシートを送る給紙機内のゴムローラーやプリンター内の樹脂ローラーなどのゴム製品を作ることが多いそうです。
Take 5 Rubber」は粘土のように成形でき、温めることで固まる素材で作られました。丈夫で水に強く、ゴム特有の匂いもなく、色も様々な色があります。
ゴムが苦手という方にもゴムを楽しんでもらえるような製品なのかなと感じました。

KIPS株式会社-ReVessel-

創業1916年のニット素材のカットソーを専門とした墨田区の「KIPS株式会社」とデザイナー伊澤真紀氏による「ReVessel
KIPSはアパレルクライアントのOEM事業やオーダーメイドウェアなどを作っているものづくり企業です。
ReVessel」は廃棄されたワインボトルに伸縮自在のニットを服のように着せることで可愛いフラワーベースにすることができます。
鮮やかな色をしたニットを着飾ったワインボトルが可愛かったのを覚えいています。

谷口化学工業所-Blight-

創業1910年、日本最古の墨田区の靴クリーム会社「谷口化学工業所」と浦田孝典氏によるデザイン「Blight
輝いているライトが「Blight」です。LEDライトにはマグネットがついており、靴クリーム蓋に反応してくっつくようになっています。
会場にいた時は、「磨いた靴の輝きが目立つな〜」というくらいしか感じていなかったのですが、帰国後、自宅で谷口化学工業所の「ライオン靴クリーム」で自分の革靴を磨いてみた時、玄関の電灯が白かったせいか全然靴が輝いていないことに気がつきました。
僕の靴磨きの腕も要因かもしれませんが、靴を輝かせることにこだわったライトだったんだなと帰ってきてから感じました。

右が磨いたもので、左は磨く前


靴クリーム瓶がライトの磁石に反応してくっつくようになっていた

大化産業-WOVE MELT-

創業1970年、兵庫県西脇市で播州織を得意とする「大化産業株式会社」とデザイナー江口海里氏による「WOVE MELT
高い播州織の技術を持つ大化産業株式会社。天然由来のプラ成分を生地に染み込ませることで、織物でありながら形を保った形状にしているそうです。また、コンポストで分解もできる素材らしいです。

江北ゴム株式会社-WEARR-

創業1962年足立区のゴム製造会社「江北ゴム株式会社」と「Kasaneru」をデザインした土井智善氏によるプランター「WEARR
小さいゴム製品から地下に埋められている水道管の中を覆うほどの大きいゴム製品も製造している江北ゴム株式会社。小さいものから大きいもの、そしてゴムを作る金型までも自社で作ることができるそうです。
プランターと手前のカラフルなシートは高い配合技術を活かし、天然ゴムに緑茶やほうじ茶のお茶っ葉、卵の殻、海苔など天然素材を混ぜて作成されました。シートに鼻を近づけてみると緑茶やほうじ茶の匂いなど素材の香りがします。そして、土に還せる素材となっています。
落としても割れない、痛くないというゴム本来の特徴だけでなく、土に還る、匂いがする、不思議なプランターでした。


振り返り

日本のものづくりを家業とする企業とデザイナーたちが新しいプロダクトの形や使い方を表現したイゾラの会場。
僕はデザインに関して素人だったので、デザインという視点から見て何がすごいのかよくわからないことが多かった。
設営会場の空間デザインもプロの空間デザイナーの方々が展示の配置、光の当たり方、音楽などにこだわる姿をただ横から見ることしかできなかった。
設営を少し手伝いもしたが、展示物を動かしたりすることは怖かったので、すぐ使いそうなハシゴを運んだり、展示をする上で必ず出るゴミを拾ったりすることに徹した。
雑用しかできなかったが、プロのデザイナーの方々の空間を作る姿勢から、良いものを作ろうとするこだわりを感じた。朝から夜まで設営作業をしたと思えば、次の日には展示物の配置が変わっていたり、設営が終わったと思えば都合で入国が遅れた別の空間デザイナーの方が光の当て方を変えようと言ってハシゴを出し、天井の吊りライトを動かしたりとギリギリまで変わる現場から良いものを作ることへのこだわりを感じた。
展示製品のデザインに関しても良い悪いはわからなかったが、きっと会場を作ったようにデザイナーとものづくり企業とでこだわって作り上げたのだと思う。
歴史ある企業が、デザイナーたちとコラボレーションし、歴史を大事にしながらも囚われずに新たな形、表現の可能性を探究していくことに今回の展示やプロジェクトの意義を感じた。
そして、イゾラ会場を通して、クリエイティヴな仕事をする人たちの仕事への姿勢を見れたことが一番印象的だった。
僕はクリエイティブな仕事をするにしても知識も技術もまだまだだが、この会場で見た仕事への姿勢は忘れないでいたい。
また、2024年9月に日本での凱旋イベントが東京で行われます。ぜひ、会場に直接行って家業やデザイナーとの共創の魅力を生で感じてみてほしいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?