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漫画万歳!(9)~岳~

マザーブレイン社の月報に投稿した記事を紹介しています。月報の空きスペースに挿入しているので、月によって長さがいろいろです。この連載は気ままな個人的な感想ですので、ご意見は大歓迎ですが、あまり真剣なご批判は、泣きたくなるのでご容赦願います。

MOTHER BRAIN MONTHLY REPORT


年末年始の休みに何か読みたい人におススメの漫画・・・と考えて、すでに読んだという方も多いと思うのですが、「岳 」を紹介します。なんか冬のイメージの漫画でもあるのです。ビッグコミックオリジナルに連載された石塚真一による山岳救助をテーマにした漫画で、小栗旬と長澤まさみで実写映画にもなりました。

舞台は主に北アルプスで、山岳救助の裏話が盛りだくさん、警察や救助に関わっている人たちの苦労や山に魅了される人たちの思いがよくわかります。山の厳しさと残酷さ、それを上回る素晴らしさと、人の弱さと強さに常にハラハラドキドキ、時に涙してしまいます。

主人公の島崎三歩が頼りなさそうなのにとにかくかっこよくて、山でコーヒーを飲むシーンなどとても印象的です。世界の名峰を登頂して、アメリカで山岳救助の経験も十分に積んだ彼は、どれほどの命を救い、山に関わる人たちにどれだけ勇気を与えてきたかを思うと拝みたくなるほどです。

山を愛するがゆえに人にも優しく、山への甘い考えや無責任な行動で遭難した人たちをも包みこみ、すみませんと謝る人には、謝る必要はないと言い、助かった、よかった、よく頑張った、感動した、また山においでと声をかけます。

この漫画を読むまで、冬山の遭難者とか、軽装で登山して遭難したとか、その度に救助隊が出てニュースになると、自業自得だと思ってました。救助されてインタビュー受けている方の姿を見ると、勝手なことをしてどれだけ迷惑かけているのか、ちゃんと謝れと怒ったこともありました。でも三歩に出会ってからは、助かった、生きている、それがすべて、それだけでいいんだと思うようになりました。もっとも遭難者や山で命を落とすことはない方がいいに決まっています。

なぜ山を登るのか、なぜ救助を続けるのか。その答えがありそうでよくわからないままモヤモヤしながら最終巻まで読みました。この漫画を読んでどう感じるかは、山好きかどうかにもよるでしょう。山好きの方は必読、そうでない人も命の重さを感じながら清々しく山を見上げたくなるとってもおススメの漫画です。

2019年12月号


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