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友クス#6 ホラー映画にハマったら、早速「奇妙な現象」が起こりました。


※友クス……友達をクスッとさせたいエッセイの略

~登場人物~
・ワシ……書いている人。社会不適合者。人の顔色を気にして下手に出るも心のなかでは「バカタレが」とキレている。
・大黒柱……彼女。偉い人。
・その他


突如壁から奇妙な音がする


ワシはホラー映画が苦手だった。

理由はシンプルに怖いからだ。見た後に何となく後ろを振り向きたくなってしまったり、視界の端っこで物が動いたような気がしたり。特にリアルなものを見ると夢にまで出るんじゃないかと思うほどだ。

しかし、映画を好きになってSNSが映画に染まっていくと必ずホラー映画の話題を目にする。『ミッドサマー』や『マリグナント』など、映画好きの人たちの中で話題になった作品は、何となく見ていないとナンセンスな気がして、わざわざレイトショーを1人で見に行ったり、ホラー映画が好きな友人を誘って見に行ったりしていた。

そのおかげかどんどんホラーへの耐性もついてきて、午前十時の映画祭で『シャイニング』を見たり、『呪詛』、『NOPE』、『ゲットアウト』などを鑑賞し、ようやくホラー映画の面白さに気がついてきたのである。

また、ワシの好きな仏教とその関連で少し学んだ脳科学のおかげで「感情・心は単なるシステムである」と理解&実感することができてきたので、見た後の怖さを感じる事もなくなった。

そして、先日マルチの勧誘を装ってサブカル話がしたいという友人の誘いがあり、おすすめ作品をいくつか教えてもらうなどして、完全にハマった。

先週末には、大黒柱(以下、コク)と旅行をしていたにも関わらず『テリファー』、『アス』、『ハッピー・デス・デイ』の3作品を見た。(もちろん夜中徹夜をして見たので旅行もしっかり楽しんだ)

そんな矢先、10月17日、たった数時間前に奇妙な出来事が起きたのである。


怖い話をしていると、霊がよってくるなんて単なる噂話だと思っていたのだがどうやらそうではないらしかった。

いつものように仕事から帰ってきて、遠距離恋愛中のコクとFaceTimeをカマしていた時に事件は起こった。

彼女が話すその奥に、テレビの音声が流れており、そのさらに奥に妙な「怪音」が聞こえてきたのである。

うるさいから、テレビ小さくして。と伝えるとコクはボリュームを落としたのだが、以前その音は鳴り止まない。何か変な音がするが、どうしたの?と尋ねると、コクは「テレビ」と腑抜けた声で返事をするのだ。

LINEかなにかと勘違いしているようだが、これはテレビ電話だ。単語で会話をするな。近頃のやつは主語も述語もすべてをふっとばして会話ができると思い上がっているのではないか。

コクはテレビの音だと言ったが、私のiPhoneからは一定のリズムで「ピヨピヨ」と怪音が流れ続けていた。ゴールデンのバラエティー番組のBGMが一生ピヨピヨなわけがない。

その指摘に彼女も流石に異変を感じたようで、テレビのスイッチを切った。怪音はやはり止まらない。

一定のリズムで、ピヨピヨ、ピヨピヨ、ピヨピヨとなり続けている。ベランダに出るように指示をすると、ピヨピヨの音が消え、秋の羽虫の声のみが響いていた。

ワシたちは、怪音が室内で鳴っている事に気づき、ようやく恐怖を感じはじめた。生き物とも機械音とも言えない「ピヨピヨ」という声。

リズムや、鳴り続けている時間を考えると機械なのだが、iPhone越しの音声ではいまいち判断がつかない。

大黒柱は怯えている様子で、どのような音がするのがあまり把握できていない様子だった。

ワシたちは怯えながら少しづつ、少しづつ音に近づいた。コクはiPhoneを金属探知機のように部屋中に這わせ、ワシが「ここが1番デカく聞こえる」と伝えたところで動きを止めた。

壁沿いに置かれた至って普通のカラーボックスの前である。

彼女は恐る恐る中に入っているものを取り出しては、音にもならないような声と、息づかいをワシのiPhoneへと伝える。

目覚まし時計、体温計など音を発しそうな電子機器を確認するも「ピヨピヨ」は聞こえない。

そしてカラーボックスの下段、参考書や雑誌(ゼクシィもあるよ(^o^))、などが散乱するカラーボックスの深淵へと近づく。

より大きくなる音。

彼女のiPhoneはなにかに立てかけられているらしく、ワシの画面には証明が当たらず影になったカラーボックスの内壁が映し出されている。

そして数冊の本を取り出した時、その音を発している"者"を彼女は見つけた。

「ねぇ……」

彼女の声とともにワシのiPhoneに"それ"が映し出されるーー







誕生日の、やつ。


いやこれかい!

大黒柱が去年の誕生日(クリスマス)に母親からもらった、猫ちゃんが歌ってくれるバースデーカードかい!

機械の猫かい!

察するにずっとスイッチがずっと押しつぶされていて、電池が最後の力を振り絞って「ニャンニャンニャ〜ン!(ジングルベ〜ル!)」のニャがバグって無限再生されていたようだった。

ワシらはこの幸せなカップル生活の中で1番と言っていいほど笑った。そして本当にこいつと付き合ってよかったなとワシは思った。

この体験はどのホラー映画よりもスリリングだった。

『アス』が公開した後のジョーダン・ピール監督のインタビューで「コメディとスリラーが好きだ。なぜなら、1番リアルと密接だから。両者ともにどんな展開でも設定でも許される、リアルとどれだけ距離をとっても観客に受け入れられるにも関わらず、現実に近い」と語っていた。

まさにそうだと思う。現実と近ければ近いほど、現実とズレが生じた際に笑いor恐怖が起る。ワシはコメディやお笑いが大好きだから、ホラーもきっと好きなのだ。

この一連の事件もホラーが詰まったものだった。外の世界に原因があるのでは?とベランダに出てみたり、ワシは離れているので「部屋 ピヨピヨ 音鳴る」などとググってインターネットの世界に足を運んだり(検索結果死ぬほど出てきてそれも怖かった、原因わからないものばかり)。

でも結局は密室の最も生活に近いところで解決するというこの流れ。小さな部屋から限りなく大きなWEBにまで飛んで、部屋に戻るという美しさ。

離れた2人の人間が同じものに恐怖していること。彼女は1人でリアルな音を聞いていて、自らの手で元凶を暴かなければけなくて、ワシは音も視界も制限されていて、なおかつ自分の手で物事を解決できない歯がゆさがあったり。

なんとも素晴らしい経験だろうか。現実は小説よりもよっぽどスリリングだと思った。





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