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「誰かにされたこと」と同じことを人はしたくなる。 ホームレスの方から教わったこと。

騒々しい毎日で、
自分が日常に明かりを灯せることは
何だろうと考えてたどり着くのは
いつだって「書く」ことにたどり着きます。

書いているときは、
自分の「できること」
誰かと半分こしているような気持ちです。

この「半分こ」の気持ちを
私は大事にしていたいとよく思います。

20代の時、
大阪で出会ったホームレスの方が
私に実践してくれたことなのです。

以前「こちらの記事」に書いたように
大阪で初めて路上に座って
言葉を書いていたことがありました。

今日のお話は、その続き。

お兄さんが去ったあとは
ほんの数人の方が足を止めて
話しかけてくれました。

お孫さんがフィギュアスケートを
しているという老夫婦の方、
電車が大好きで一人で九州にも行くというお兄さん
ガンで3回死にかけたんだというお兄さん…

朝から雪もちらほら降る中で
座り続けるというのは予想以上に大変でした。

風が強くて、紙も何度か飛ばされてしまい
一度休憩して場所を離れたら
「もう辞める」のが目に見えている。

「日が暮れるまでは頑張ってみる

 耐えられなかったらやめよう」

そして同じ歩道橋の端のほうには
段ボールで固められたスペースがあり
おじさんが寝ているのが見えて
「寒そうだな…」とぼんやり思いました。

それから人の往来も少なくなり…
すっかり冷え切った手で筆を握っても
正直震えてほとんど書けません。

もうやめようかと悩んでいるときでした。

横を見るとホームレスの男性の姿がなく、
どこかに行ったのかなと思っていたら
階段を上っているのが見えました。

ところが、階段を登り切ったにも関わらず
寝ていた場所には戻らず
どんどん私に近づいてくるのです。

「あれ?」と思いながら
距離が縮まってくると
私は不安でドキドキしました。
「もしかして怒られるかな、
 この場所邪魔だったのかも」と。

するとおじさんは私の顔の前に
ハッピーターンの大袋を差し出し
「好きなだけ取りなさい」と一言。

予想外のことに少しポカンとして
「…あ、いいんですか?」と言いながら
1つずつ個包装になっている
ハッピーターンを取り出しました。
確か3個くらいだったかな。

「ありがとうございます。」
とお礼を言うと
男性はそのままダンボールの場所に
戻っていきました。

「怒られなくてよかった‥‥!」
男性が戻ったのを確認したあと
もらったハッピーターンをひとかじり。

この時のことは今でも鮮明に覚えています。

なんてたって美味しい。
びっくりするほど美味しい。

自分がお腹を空いていたんだと
その時になって気づきました。

考えてみたら朝から座って
昼もとっくに過ぎていた。

緊張しながら往来する人を眺めて
声をかけてくれた人とやりとりをして、
誰かが去れば、またずっと一人の時間。

知らない場所に一人でいるのは寂しかった。

たまたまやってきた私のことなんて
何も知らないだろうに、
ハッピーターンを分けてくれたことが
たまらなく胸に刺さって、
なんだかポロポロ泣けてきた。

そういえばあの人はいつからいなかったんだろう。
わざわざ買いに行ったのかな?
戻ってきたときに私に気づいたのかな?

とにかく嬉しかった。

それから日が沈み始めたころ、
私はすぐに片づけをして、
歩道橋を後にしました。

帰る前にお礼をしよう。
私も同じように返したい。

私はコンビニやスーパーなど
いろんな場所をまわって
ホッカイロを探しました。

個包装の、10個入りのホッカイロ。
買ったら箱を開けて半分こ。

そのまま歩道橋のおじさんのところへ行きました。

「おじさん、ハッピーターンありがとう!
 これ、半分こしよう!」

ホッカイロを半分こして持ってきた私を見て、
とてもびっくりしていましたが、
笑いながら受け取ってくれました。

「あとね、これおじさんに書いたよ」

”ありがとう”と書いたはがきも渡したかった。
片づける直前、一枚書いておいたのです。

ところが…
なんと受け取るのを断られてしまいました。

その理由が優しくて
私はずっと覚えています。

「これは次にあなたがまた作品を書く時に
 出会った人に渡せる作品だ。
 そんな大事なもの受け取れない。
 次の人のために取っておきなさい。」

この言葉がまた予想外でびっくり。
それでも受け取ってほしかった私は
その場ではがきに「おじさんへ」と書き加えました。

「おじさんが要らないなら捨てないといけない」と。
(今振り返るととても強引ですね…)

それでもおじさんは笑って何度も
「ありがとう」と言ってくれました。

お礼にハッピーターンの大袋を全部あげると
言われて、私もつい笑ってしまいました。
「じゃ、ホッカイロと同じ数もらうね。
 5個取っていくね。」

おじさんにさよならをして、
車の旅の途中だった友人と合流し
その日の出来事を夜中まで話ました。

(ちなみに友人は一人で新喜劇を
 観に行ったそうです)

「誰かにされたこと」と
同じことを人はしたくなる。

意地悪も優しさも、
原理は似ているように感じます。

意地悪をされたら意地悪をしたくなる。

優しくされたら、優しくしたくなる。

人に優しくできる時は、
優しい人が周りに多いのかもしれません。

私は今日誰かと「半分こ」出来たかなぁ
振り返ってみよう。
あなたが「半分こ」したい人は
どんな人ですか?

今日できる半分こを探してみてはどうでしょう。

ほんの少しの優しさでも
一生忘れられなくなることもある。

書芸家のさゆりでした。

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