ECサイトの売上の上げ方を4つのタイプ別にまとめてみた
こんにちは、東京のIT企業でマーケティングのお仕事をしながら、兼業で手元供養品の製造・販売を手がける「未来創想」という地方の中小企業でネット通販(以下EC)運営に携わっている先山(@koou0506)と申します。
noteでは実践を元にした地方中小企業のEC運営ノウハウを中心にお伝えしております。
前職はZOZOグループの会社でECコンサルとして、様々なタイプの自社ECサイトの支援をさせていただき、今でもECサイトに関するご相談を度々いただいたり、自分自身もECサイトの運営に携わっていたりします。
よくECサイトを始めたい / 始めたんだけど、売上をあげていくために「何をすればいいのか分からない」というご相談をいただくので、今回はECサイトの戦い方をタイプ別にまとめてみました。
ECサイトの4つのタイプ
まず最初に、世の中には様々なECサイトがありますが、大きく分けると4タイプに分類できます。もちろん分類の仕方は他にも色々あるかと思いますが、様々なECサイトをお手伝いさせていただき、個人的にはこの分け方が一番しっくりきています。
ここで紹介する分け方では、横軸を「単品 ↔︎ 多品」、縦軸を「指名 ↔︎ 指名外」で分けています。それぞれの定義は下記の通りです。
■単品 ↔︎ 多品
単品
・販売している商品が1つ
(もしくは、複数商品を販売しているが、売上の8~9割は1つの看板商品で作っている)
多品
・複数の商品を販売
■指名 ↔︎ 指名外
指名
・企業名、ブランド名、サービス名など、固有で独自性のあるもの
例:トヨタ、iPhone、ZOZOなど
指名外
・どの企業でも当てはまる、特定の企業名、ブランド名、サービス名などを指し示さないもの
例:家具、Tシャツ、プレゼントなど
それではここからは4つのタイプ別に戦い方をご紹介します。
①単品×指名外タイプ(単品リピート型)
■商材
健康食品、サプリメント、化粧品など
■ユーザーの気持ち
痩せたいなど特定の悩みがある
■KPI
・新規顧客獲得CPA(新規顧客獲得のコスト)
・LTV(1人の顧客が取引を開始してから終了するまでの間に使う、お金の合計額)
■主要施策
・リスティング広告
・アフィリエイト広告
・SNS広告
・SEO(商材やターゲットキーワードに応じて)
・LPO(ランディングページ最適化)
・CRM
■対策の流れ
「単品×指名外タイプ(単品リピート型)」では、いかに新規ユーザーを獲得し、リピートさせるかがポイントになります。健康食品、サプリメント、化粧品など、お悩み系商材に多いモデルです。北の達人さんが有名どころ。
お悩み系商材は、人に相談しにくいタイプのものも多く、Google / Yahoo!での検索で情報収集をする方が多いです。そのため、リスティング広告 / アフィリエイト広告を活用し、検索結果からの集客に注力します(商材やターゲットキーワードによってはSEO対策にも注力)。また、さらに売上を拡大したい場合は、そこで集めたデータを活用し、FacebookなどのSNS広告を展開し集客の幅を広げます。
購入につなげるためには、集客した先であるランディングページのコンテンツが重要であるため、LPO(ランディングページ最適化)を行い、CVR(購入率)向上を図ります。
さらに、リピートしていただくことでLTVが向上し、利益が大きくなっていくので、リピート対策の実施。また、クロスセル・アップセルなどを行い、顧客一人が使う金額の最大化を図ります。
「新規顧客獲得CPA<LTV」の範囲で獲得件数を最大化していき、売上&利益の最大化を行なっていくのが勝ちパターンになります。
■参考ECサイト
北の達人
https://www.kaitekikobo.jp/origo/
話はそれますが、「北の達人」さんの決算説明会資料は勉強になる部分が非常に多く、ECに携わる方はぜひぜひ見てみると良いかと。
書籍も大変勉強になりました。
②多品×指名外タイプ(カテゴリーキラー型)
■商材
家具、Tシャツ、ワインなど
■ユーザーの気持ち
特定の企業・ブランドは決めていないが、欲しいジャンルが決まっている
■KPI
・訪問数
・CVR
・顧客単価(平均商品単価×併売率)
・指名検索数
■主要施策
・SEO
・コンテンツマーケティング
・リスティング広告
・SNS広告
・メルマガ
・各種SNSでの情報発信(LINE、Twitter、Instagram、Facebookなど)
・サイト改善
■対策の流れ
「多品×指名外タイプ(カテゴリーキラー型)」では、自社サイトの属するカテゴリーのキーワードで、いかに検索面から流入を獲得するかが非常に重要です。
ユーザーは購入する場所(サイト)を決めているわけではないので、Google / Yahoo!での検索では、指名系キーワード(企業名・ブランド名・サイト名)で検索するのではなく、家具、Tシャツ、ワイン、プレゼントといった、指名外のキーワードで検索を行います。
これら指名外のキーワードで検索した際に、自社のサイトが上位に表示されると、サイトへの訪問数が上がり、売上が上がっていきます。この時に、自然検索で検索結果の上位に上がってくるのが理想ですが、自然検索は順位が上がるまでに時間がかかることが多いです。
そこでまずは、リスティング広告を出稿し、広告により自社サイトへの集客を行います。リスティング広告の最大のメリットは、広告出稿をすればすぐにでも検索結果の上位表示も狙える点です。もちろん、キーワードによっては広告でも競争が激しかったり、コンテンツの質によっては思うように上位表示されなかったりすることもありますが、きちんと運用すれば自然検索よりは圧倒的に早く成果を狙えます。
また、リスティング広告を打つことで実際にどのようなキーワードでCV(購入)に繋がっているのか、広告の管理画面で確認することができるので、キーワードの良し悪しをすぐに検証できる点も大きなメリットです。まずは、リスティング広告を出稿、そして成果の良いキーワードから順にSEO対策を行なっていくと、SEO対策も効率的に行なっていけます。
サイトへの流入の基盤になるSEO対策は、カテゴリ構造の見直し、各種タグの設定(title、description、h1)、商品登録方法の見直し、カテゴリページのコンテンツの拡充などを行いECサイトで獲得できるキーワードはECサイトで対策。ECサイト内で対策が難しいキーワードは記事コンテンツを作成し、記事コンテンツ→ECサイトでの集客を目指します。
訪問数が増えても、購入していただけなければ売上にはつながらないため、サイトの改善、コンテンツの見直し、掲載商品の見直しなどによりCVR改善を行います。
また、将来的には「④多品×指名タイプ(ブランド指名型)」への移行、つまりは企業名・ブランド名・サイト名といった指名系での流入を増やしていきたいので、メルマガや各種SNSでユーザーとの繋がりを増やし、自社のファンへと育てていくことで、2回目以降は指名で集客できるように取り組んでいきます。
■参考サイト
Re:CENO
https://www.receno.com/
③単品×指名タイプ(型番指名型)
■商材
○○さんの作る特定のアクセサリー、○○店のチーズケーキなど
■ユーザーの気持ち
欲しいものが特定の商品までピンポイントに決まっている
■KPI
・SNSフォロワー数
・指名検索数
■主要施策
・商品自体の作り込み
・販売者(社)自身のインフルエンサー化
・SNS広告
・LPO(ランディングページ最適化)
・メルマガ
・各種SNS(LINE、Twitter、Instagram、Facebookなど)での情報発信
■対策の流れ
「単品×指名タイプ(型番指名型)」では、「いかに商品自体の魅力を磨き、指名での集客を獲得できるか」+「販売者(社)自身のファンを作り、自身のSNSから集客できるか」の2点にかかっています。
「個人で何かやっていて、ECを始めてみたい」という方の多くは、この③のタイプに分類されることが多いかなと思っています。また、最近流行りのDtoCのモデルの多くもこちらに分類されることが多いかと思います(商品点数が多い場合は、④に分類しても良いかもしれませんが)。
集客の方法としては、自身のSNSでの情報発信を主軸に置きます。利用するSNSは、「自身の得意不得意」「ターゲットと相性」などを考慮して決めれば良いので、絶対にこれじゃなければいけないというものはありません。
どの程度の売上規模を目指すかにもよりますが、まずはSNSで「数<質」、コアなファンを作ることが非常に重要です。ここができていない状況でECを立ち上げると、集客の手立てがなく、無人島にお店を構えるのと同じ状況になってしまいます。
売上規模が拡大してきたら、集客の幅を広げるために、購買等のデータを活用し、ファンの方々と同じような特性を持つ方々をターゲットに、SNS広告にチャレンジするのもありだと思います。
また、タイプ②同様、売上の規模拡大を目指すのであれば「④多品×指名タイプ(ブランド指名型)」へ移行したいので、商品のラインナップを増やしていくことも重要です。
■参考サイト
Herlipto(小嶋陽菜さんのアパレルブランド)
https://www.herlipto.jp/
Mr. CHEESECAKE
https://mr-cheesecake.com/
④多品×指名外タイプ(ブランド指名型)
■商材
○○ブランドの服、○○ブランドのアクセサリー、○○店のお酒など
■ユーザーの気持ち
特定のブランドの何かが欲しい
■KPI
・指名検索数
・新規顧客獲得CPA(新規顧客獲得のコスト)
・LTV(1人の顧客が取引を開始してから終了するまでの間に使う、お金の合計額)
■主要施策
・SNS広告
・インフルエンサーマーケティング
・マス広告(テレビ・新聞・雑誌)
・YouTube広告
・サイト改善
・メルマガ
・DM
・各種SNS(LINE、Twitter、Instagram、Facebookなど)での情報発信
・CRM
■対策の流れ
「多品×指名タイプ(ブランド指名型)」では、いかにブランド認知を拡大し、新規顧客を獲得し、リピーターを積み上げていくかが売上拡大のポイントになります。つまり、自社のファンをいかに積み上げていくかが重要です。
ここに分類されるサイトは、ある程度ブランドが確立されており、指名系での流入が多いのが特徴です。このタイプでは、いかにブランド認知を拡大していくかがポイントになっていくため、SNS広告やYouTube広告を駆使したり、大手企業ではCMなどのマスメディアを使ってのプロモーションを行うこともあるでしょう。
一方で、国内のマーケットは人口減少が続いており、基本的には新規の顧客獲得はどこかで頭打ちが来てしまうため、獲得した顧客とメルマガ・DM・各種SNSなどでコミュニケーションをとり、きちんと自社のファンにしていき、LTVを高めていくことも重要です。
■参考サイト
よなよなエール
https://yonasato.com/ec/product/yonayona_ale
井上誠耕園
https://www.inoueseikoen.co.jp/
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ECサイトのタイプによって戦い方は大きく変わります。ECサイトを始めたい / 始めたんだけど、売上をあげていくために「何をすればいいのか分からない」という方は、ぜひまず上記分類で自分のECサイトがどこに当てはまるのか確認していただき、戦略作りのヒントにしていただければ嬉しいです。
今回は文字数が多くなってしまうので、対策の流れをざっくりとしか書きませんでしたが、ニーズがあるようであればそれぞれのタイプの戦い方の詳細に関してもまとめていこうと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
Twitterもやっているので、もし良ければフォローをお願いします!
https://twitter.com/koou0506
こんな取り組みもしておりますのでもしよろしければご覧ください!
※本noteの内容に関して
なお、こちらでまとめさせていただいた内容に関しては、下記書籍の考え方をベースにしつつ、私個人のECサイト支援の経験を元に作成しております。2012年出版の書籍で当時とはECを取り巻く環境は大きく変化していますが、根幹にある考え方は今現在も非常に参考になると思います。現在はAmazonでは中古品しか手に入らないようですが、気になる方はぜひぜひメルカリ等で探すなどして手に取ってみてください!
その他のおすすめ本もこちらの記事で紹介しておりますので、良かったらご覧ください!
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